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【9】清酒のコンテストについて

※2023年1月より、受賞の記述に関する規則が変わっています
※各鑑評会の細かい内容は2022年7月時点のものです
※世界酒蔵ランキングについては2023の変更点等、若干加筆修正しました
いずれも執筆当時の古いままですがご容赦ください。

「○○賞受賞」や「金賞受賞」といったPOPの付いた商品が特に春から夏にかけて多く並びます。というのもそれら清酒のコンテストがだいたい春に集中し、初夏にかけて結果発表が行われるためです。何かよくわからないけど、賞を取った酒や賞を取った蔵なら間違いないだろうと手に取る人も多いと思います。
それらの賞について一部ではありますが紹介していきたいと思います。


国・公共機関のコンテスト

受賞の記述については、【4】清酒の表示(2) で触れていますが、「公的機関(品質審査の実施方法が公開され、当該品質審査を毎年又は一定期間毎に継続して実施することとしている機関に限る。)から付与された賞である場合に、当該受賞した清酒と同一の貯蔵容器に収容されていた清酒について表示できる」とされていますが、対象となるコンテスト自体が非常に限られており、全国規模となると以下の一つしかありません。→規制緩和されました

全国新酒鑑評会

独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催となる、もっとも歴史の長い(1911年(明治44年)に第1回開催、途中数回の休止はあるものの現在も継続中)、また国による唯一の全国規模の清酒コンテストです。

新酒を全国的に調査研究することにより、製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、もって清酒の品質向上に資することを目的に、全国新酒鑑評会を行っています。

独立行政法人酒類総合研究所 「鑑評会」 より

その酒造年度(7月〜翌年6月)の新酒で、酸度0.8以上の吟醸酒(大吟醸酒)の原酒が出品対象ですが、純米吟醸酒(純米大吟醸酒)も可です。出品点数は一蔵(製造場)につき一点。したがってどの酒を最終的に出すのか、厳選する必要があります。
そのため、出品前の3月には各地で前哨戦的な鑑評会(国税局や県、地域単位)やセミナー(日本醸造協会の「杜氏セミナー」など)が開催されています。
出品酒の送付が4月初旬なのですが、予審は4月下旬、決審は5月中旬と間が空き、その間は冷蔵とはいかず、15℃前後の環境下で保管管理されるため、送付時からの時間経過による酒質の変化予測まで考えておかないといけません。今がベストでも審査時に劣化が始まっていては勝ち残れないという、厳しい世界です。

予審を通過した酒は余程のことがなければ「入賞酒」として認められ(決審で「これは入賞酒に値しない」とされる可能性はゼロではありません)、決審で成績優秀なものが「金賞酒」として認められます。
受賞率自体は入賞で約50%、金賞はその中の上位半分なので全体の約25%となり(毎年数字は公開されています)、けして低い数字ではありません。しかし金賞を何年も連続して取り続けられるかというとなかなか難しいとされています。
酒類総合研究所のサイトに平成14酒造年度以後の入賞酒目録が公開されていますが、金賞の連続受賞や受賞回数について、コレをちまちまと集計中です。結構後になるかと思いますが、まとまり次第こちらに掲載したいと思います。
昔はフルネットという会社が「金賞受賞蔵ガイド」という書籍でまとめていたのですが、2019年に破産してしまい、2018酒造年度版を最後に出版されなくなりまして…。過去の出版分が多少は中古市場に残っているようですが、どちらにしてもここ数年のデータはありません

SAKE Streetさんが私のやろうと思っていたことよりはるかに上のレベルのものを作成し、β版とはいえ公開されましたので紹介しておきますね。まだブラッシュアップされていくとのことなので楽しみです。

金賞受賞蔵数や金賞受賞蔵率をもって日本一だと主張する県がありますが、この鑑評会は都道府県単位で競うものではなく(そのため酒類総合研究所では以前は公開していた都道府県単位の出品数・入賞数・金賞数を公開しなくなりました)、そもそも前提として出品数が都道府県により異なるので、数にせよ率にせよ、単なる数字遊びに過ぎません。
金賞受賞率が25%なので、50蔵出品した県が12蔵金賞を取ったとします。それと別の15蔵出品した県が11蔵金賞を取ったとします。じゃあどちらが優れているのか?という議論は無意味なんですよ。受賞数で前者だ、というなら後者は仮に全部通っても15までしか受賞数は伸ばせません。では受賞率で後者が、という話になるかもしれませんが、出品が1蔵の県なら成績は0%か100%です。受賞率を無理矢理にでも順位にしたら、1位か最下位しかないのですよ。それ意味あります?
技術指導の結果、同じようなタイプの清酒が並ぶ県も実際にありまして、それはそれで「マニュアル通りに造ることが出来る」という技術の一つではあるのでしょうが、その蔵の酒造りと言えるのか?というのも個人的に疑問を感じています。

全国新酒鑑評会自体が「型に嵌った吟醸酒造り」に特化した鑑評会になっていて、近年は甘くて香りのプンプンする酒ばかりだという批判も少なからずありますが、各蔵が各々の特徴を出して、特異性を含めて評価しようとしたら、それはそれで評価方法で揉めるのが目に見えています。
(食中酒として)飲んで美味い酒と金賞受賞酒が乖離している、というのは飲み手の主観も入ってくるでしょうし、簡単に解決は出来ない難しい問題ではないでしょうか。

その他のコンテスト

上記説明文にも記載していますが、国税局や県単位での鑑評会等も表示には利用可能ですし、清酒の情報配信サイトで「○○局の鑑評会で●●が優秀賞を受賞した」とかいうニュースも見ることがあります。ただ全国規模ではないので、あまり目立ったコンテストはありません。

国内の民間のコンテスト

次に日本国内の民間団体の主催する清酒のコンテストについて紹介します。

SAKE COMPETITION

2012年に第1回が開催され、以後「出品数世界最多、世界一美味しい日本酒が決まる」と謳う、市販酒で最も美味しい清酒を決めようというコンテストです(但しコロナ禍で2020年より開催が見送られています)。その出品数は2019年で1,919点になったそうで、審査員も予審・決審に各50名を集めるなど、かなりの規模で開催されています。
主催は「SAKE COMPETITION実行委員会」となっていますが、運営は「株式会社サニーサイドアップ」と「株式会社はせがわ酒店」が行っています。

評価基準は、①お米でできたお酒らしい香りや味わいから逸脱していないかを問う「清酒としての品格」、②飲んで楽しむお酒として優れているかを問う「飲用酒としての適性」の2点を基準として総合的に評価を行い、各部門の上位10点はGOLDとその順位を、GOLD以下の部門上位10%にはSILVERが授与されます(出品数の少ない部門については多少異なります)。
品格や適性とありますが、結局のところ、市販酒と対極にある全国新酒鑑評会への反論なのかなと思っています(純米酒で香気成分が高いものは減点対象になるなど他所と異なるレギュレーションもあります)。酒販店が運営・主催するコンテストですし、売れてナンボというのもあるのでしょう。

部門は年々若干の変動はありますが、基本的にはあまり変わっていません。開催予定であった2020年については以下の通りでした。

SAKE COMPETITION 2020 の 各部門出品条件 より

”価格の高い商品”という縛りの「Super Premium部門」が特徴的ですが、後は特定名称等による分類です。
変わったところでは、「ラベルデザイン部門」というのも過去にありまして、デザインが優れている清酒にも賞を与えましょうというのが他にはなかった取組です。これも酒販店ならではの観点でしょうか。

ワイングラスでおいしい日本酒アワード

その名の通り、ワイングラスで飲んだときに美味しい清酒を競うコンテストで、2011年より開催されています。酒器の形状で風味が変わるというところに着目し、海外での清酒の利用場面も想定して、全ての審査をワイングラス(リーデル社製日本酒用2種)で行います。唎猪口やアンバーグラスなどを用いる通常の唎酒とは特に香りの感じ方が変わることから、そこに特徴のあるお酒が評価されるコンテストです。

「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」は、単に品質の良し悪しを競うことを目的に開催するものではありません。日本酒の需要を掘り起こし、日本酒の文化継承・発展を祈念して行う取組みとして、ワイングラスの力を認識し、新たに見出された日本酒の魅力を広く伝えていこうという趣旨に賛同した専門家達により、ブラインドで評価したコンテストです。

ワイングラスでおいしい日本酒アワード公式サイト 「コンセプト」より

主催は「ワイングラスでおいしい日本酒アワード実行委員会」、実行委員は「コンタツ株式会社」「株式会社佐浦」「株式会社酒文化研究所」「辰馬本家酒造株式会社」「人気酒造株式会社」「株式会社流通情報企画」となっています。後述の「全国燗酒コンテスト」とともに、1部門1点までの出品料は無料となっていますが、受賞時に認定料が発生するシステムで、受賞認定料をコンテストの運用に充てています。

2022年に開催された際の各部門の要件と受賞結果は以下の通りです。最高金賞と金賞が合わせて上位30%、うち上位5%が最高金賞となっています。
価格帯によりメイン部門とプレミアム部門を分けており、スパークリングはさらに分けて取り扱っています。

ワイングラスでおいしい日本酒アワード公式サイト 「審査結果」 より

全国燗酒コンテスト

「世界で唯一、温めておいしい日本酒を選ぶコンテスト」を掲げ、燗酒にして飲んだときに美味しい清酒を競うコンテストです。

冷やしておいしい吟醸酒や生酒が普及しはじめたのは1980年ごろのこと。今からおよそ30年前でした。フレッシュで華やか、繊細な味わいは人々を魅了しましたが、「上質な酒は燗をしない」と誤解も広がります。そして、こうした誤解を解こうとするかのように、一部の専門機関が燗酒での酒質審査に着手しました。
全国燗酒コンテストはこれを引き継ぐ、専門家による厳正な審査会です。「温めておいしい酒」を周知することによって、「燗」という日本酒ならではの魅力をアピールすることを目的としています。上質な酒にも燗映えするものがたくさんあります。ぜひ、さまざまな温度で日本酒を味わい、ワインとはひと味違った料理とのペアリングをお楽しみください。

全国燗酒コンテスト公式サイト 「コンセプト」より

主催は「全国燗酒コンテスト実行委員会」、実行委員会は「株式会社佐浦」「人気酒造株式会社」「株式会社升喜」「株式会社酒文化研究所」となっており、先の「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」とある程度同じ組織が運営しています。
燗酒の魅力を伝えようとするコンテストですが、秋冬の販促に役立てるために開催時期は真夏です。「審査会の様子」ではクールビズや夏服で燗酒を唎いている姿が収められています。

2009年から開催されており、近年は受賞酒出品蔵を募って「熱燗ステーション」なるイベントも行うなど、燗酒の魅力の発信にも注力しています。

2021年の結果はこちらの通り。ワイングラスでおいしい日本酒アワードと同じく、最高金賞と金賞が合わせて上位30%、うち上位5%が最高金賞となっています。
「特殊ぬる燗部門」を除き酒質は問わず、価格帯と審査の際の温度帯で区分されるので、温度帯による向き不向きを考慮しての応募が可能です。
2022年7月現在、2022年度の募集要項も発表されていますが、部門および規定は昨年同様となっています。

全国燗酒コンテスト公式サイト 「審査結果」より

日本酒チャンピオンズ・カップ

2005年から2008年まで4回開催されていましたカップ酒限定のコンテストですが、カップ酒ブームが落ち着くとともに開催されなくなりました。
こちらも「酒文化研究所」が主催していたコンテストでした。

余談ですが、カップ酒のことを「ワンカップ」と言う方が多いのですが、「ワンカップ」は大関株式会社の登録商標です。それだけ一般に普及したという名誉なことかも知れませんが、他社カップ商品を「ワンカップ」と呼ばないようご注意ください。

商標活用ガイド - 特許庁
(PDFファイル:40-41ページに大関「ワンカップ」の記事)

国外のコンテスト

和食ブームに伴う日本酒の進出もあって、近年では海外において清酒を取り扱うコンテストも増えてきました。それらを紹介したいと思います。

International Wine Challenge SAKE部門

イギリス・ロンドンで開催される、ワインの世界的なコンクールの一つである「International Wine Challenge」(以後IWC)に、2007年からSAKE(清酒)部門が出来まして、もう15年になります。
国際的な清酒のコンクールとしての歴史は後述の「全米日本酒歓評会」の方が古いのですが、開催規模は今のところ一番大きいのではないでしょうか。海外で自然と沸き上がったものではなく、2007年の部門創設時より日本酒造青年協議会が公式コーディネーターとして全面的に協力していまして、日本では「酒サムライ」事務局(≒日本酒造青年協議会と思ってもらって問題ありません)が窓口になっています。受賞結果等も下記の酒サムライ公式webサイトより確認することが出来ます(IWC公式サイトからもSAKE部門の結果を見ることは出来ますが、英語ですし正直わかりにくいです)。

今春に行われましたIWC2022 SAKE部門では9つの部門にて審査が行われ、結果は以下の通りです。受賞率をみると、部門で若干のブレはありますが、平均するとゴールドが上位5%未満、シルバーが続く5~21%、ブロンズが21~42%、”大会推奨酒”が42~85%のゾーンに入ります。

酒サムライwebサイト「IWC2022 SAKE部門 メダル受賞酒発表」より

各カテゴリーにおいてゴールドメダルを獲得した出品酒のうち、さらにそれ以上のレベルに達していると認められたものに、「トロフィー」が与えられます(部門トロフィーが最優秀で、地域トロフィーは次点以下です)。その「トロフィー」受賞出品酒の中から最も優れていると評価された出品酒に与えられる最高賞「チャンピオン・サケ」全銘柄の中から1銘柄が選出されます。
また、2014年より「グレートバリュー・サケ」が設定されました。この賞はゴールド、シルバーメダル受賞酒の中から受賞条件(720ml瓶換算年間販売本数10万本以上、市場価格1,000円以下)に該当し、優れたコストパフォーマンスを発揮していると思われた酒に対し部門を超えて選ばれています。この「グレートバリュー・サケ」の最優秀賞として「グレートバリュー・チャンピオン・サケ」が選ばれます。1アイテムで四合瓶換算10万本以上、ということは72,000L=400石なんですが、ちょっとした小さい蔵の年間製造量くらい行くんじゃないかという量なので、少しハードル高くないですかね。
さらに「IWC SAKE部門」に出品された蔵元の中で、1社から複数エントリーされたお酒の全てにわたって高評価を得た蔵元が「Sake Brewer of the Year」として表彰されます。

コロナ前は日本でも審査が行われた年があり(2016年兵庫、2018年山形)、隔年でロンドン⇔日本となる予定でしたが、コロナ禍の現在はロンドンで続けて審査が行われています。
審査方法については、審査員がいくつかのグループに分かれてあーだこーだと議論しながら「この酒はどのメダルに値するか」を決めていくそうで、他所の鑑評会のような得点集計方式とは若干異なる模様です。やり方が洗練されてきたのか、昔ほど同じ蔵の酒がずらずら上位に並ぶ光景は少なくなった気はします。何となく。

Kura Master

2017年から開催されている、フランスの地で行う、フランス人のための日本酒コンクールです(第5回の開催となる2021年度から本格焼酎・泡盛コンクールを新設し、審査対象を拡大しました。)。

審査員はフランス人を中心とした欧州人で、フランス国家が最高職人の資格を証明するMOF(Meilleurs Ouvriers de France)の保有者をはじめ、フランスの一流ホテルのトップソムリエなど飲食業界のプロフェッショナルで構成されています。また、公平且つ公正な審査を行うため、ソムリエたち審査員が日本酒を深く学び、自ら日本酒を正しく伝える知識を得ることを目的として、酒文化研修旅行を2017年から毎年実施しています(今後は本格焼酎・泡盛の審査員が日本の蒸留酒等を学ぶための研修旅行も予定されているそうです)。

Kura Masterではフランスの歴史的食文化でもある「食と飲み物の相性」に重点を置いており、コンクールを通して食と飲み物のマリアージュを体験する機会を創り、フランスをはじめとした欧州市場へ日本酒、本格焼酎・泡盛などをアピールする場を提供している、と謳っておりまして、先述の研修旅行では受賞蔵を訪問し、酒造りの体験等を通して日本各地の歴史や食文化に造詣を深めるほか、飲食関係者、各県や団体関係者、一般消費者との交流会やセミナーも開催するとのこと。
この辺はイギリスのIWC vs フランスのKura Masterという対立というか何というか…。後発だけにしっかりしたコンセプトの鑑評会です。

評価方法は100点満点の加点方式。フランス人およびフランスのマーケットに向けた審査基準となり、審査委員会によりフランスで開催されるワインのコンクールを参考に審査基準を策定し、評価方法を決定しているそうです。

2022年の各賞の受賞数は以下の通り。

Kura Master公式サイト 「受賞酒検索」より

各カテゴリーの出品数等は見当たらなかったのですが、「5つのカテゴリー(純米大吟醸酒部門、純米酒部門、サケスパークリング部門、生酛部門、古酒部門)に対し、過去最多の1110点が出品され、各カテゴリーの成績により、プラチナ賞121点、金賞245点が決まりました」という記載はありましたので、上位の約10%がプラチナ賞、続く10~30%のゾーンが金賞という感じでしょうか。

カテゴリーは年々変わっていまして、開始当初の2017年は「純米酒」と「純米吟醸酒・純米大吟醸酒」の2部門、2018年は「純米酒」「純米大吟醸酒」に「にごり酒」が加わり3部門、2019年には「にごり酒」の代わりに「スパークリングsoft」「スパークリングstandard」の計4部門、2020年および2021年は「純米酒」「純米大吟醸酒」「サケ スパークリング」に加えて原料米の異なる部門(2020年は「山田錦」「雄町」「出羽燦々」の3部門、2021年は「五百万石」「美山錦」の2部門)がありましたが、2022年は先述3部門に加えて「生酛」および「古酒」の計5部門となっています。その辺りはまだ試行錯誤している感じでしょう。

プラチナ賞121点のうち32点が「決勝」に進出、そこでさらに上位16銘柄、と絞られていきます。そして5つの各カテゴリのトップが「審査員賞」で、そのうち最も評価が高かったものが「プレジデント賞」になります。「審査員賞」と聞くとオマケ的な雰囲気ですが、IWCの「トロフィー」相当です。
「アリアンスガストロノミー賞」は、2次予選に残ったベスト古酒10銘柄と、Bernard Mure-Ravaudベルナール・ミュールラヴォー氏(MOF 2007)が選んだフロマージュとのペアリングにおいて、フロマージュの味わいを最も引き出す古酒に対して授与される特別賞です。

全米日本酒歓評会

アメリカ・ホノルルで開催される、海外で行われる清酒のコンテストでは最も歴史が長く、2001年から開催されています。審査員にも日本から酒類総合研究所の職員を招聘するなど、日本の伝統的な審査方法を用いておよそ500品の出品酒を審査しています。優秀な評価を得た出品酒に金賞と銀賞が授与され、その中でも特に高得点を獲得した出品酒にグランプリ、準グランプリが贈られます。

関連イベントとして、一般公開利き酒会、ジョイ・オブ・サケが世界各都市で開催され、歓評会の全出品酒がすべての会場で利き酒用に展示されます。この一般公開イベントと併せて開催されることにより、全米日本酒歓評会は、米国において日本酒人気の向上と活発で持続的な日本酒市場の開拓に大きく寄与しました。
「鑑」評会が「歓」評会なのは「Joy」だからです。

2022年の結果は9月発表なので、7月現在は2021年の結果が最新となります。
部門としては「大吟醸A(精米歩合40%以下)」「大吟醸B(同50%以下)」「吟醸」「純米」の4部門で、大吟醸・吟醸には純米大吟醸・純米吟醸も含まれます。
公式サイトには出品酒と結果が一覧で表示されていますが、部門ごとの数字は出ていないので、こちらでまとめたものが下表です。金賞、銀賞ともに22~29%の受賞率ですね。

各部門の1位に「グランプリ」、次点2点に「準グランプリ」が授与されています。また、第1回から今回までの審査における受賞結果について、金賞と銀賞の受賞結果を数値化して合計点を算出し、累計得点が最も高くなった蔵元に贈られる「エメラルド賞」(過去に同賞の受賞歴のない蔵元が対象)があります。

International Sake Challenge

パッと見て「IWC SAKE部門」と混同されやすいのですが違います。日本で開催されますが、海外からワインエキスパートも招聘して審査を行い、「国際市場における日本酒に対する理解および認識を向上させ、流通と販売を促進する」ことを目的とするコンクールで、2007年より開催されています。IWC SAKE部門と同時期のはずですが、規模の大きさは圧倒的に差がついています。

部門は2021年では以下の7部門があり、2022年も同様です。
・大吟醸/吟醸
・純米大吟醸
・純米吟醸
・純米
・熟成
・発泡(スパークリング)
・プレミアム
出品数について明記がされていないようですが、2022年のエントリーキットには約150種の応募があり、それに対して金賞21、銀賞55、銅賞56となったことが記載されていました。30点満点の評価で金賞は28.5点以上、銀賞は27.0~28.4点、銅賞は25.5~26.9点を取る必要があるとのこと。約85%程度が入賞していることになりますが、絶対評価なのか相対評価なのかは不明です。金賞21点の中から各部門の最優秀賞「トロフィー」が決まり、2021年は11点がトロフィーに認定されました。

SAKE selection

「SAKE selection」は、ベルギーを拠点とし25年の歴史を誇る、国際的なワインコンクール「ブリュッセル国際コンクール(CMB)」の日本酒部門として、2018年に新設された日本酒コンクールです。2018年に三重県で第1回が開催され、2020年に兵庫県で第2回が開催される予定でしたが、コロナ禍で順延となったまま開催が見送られています。

欧州・北米を中心に世界各国から招聘する日本酒輸入業者、酒類専門誌の編集者・ライター、ソムリエなど酒類実務に従事する審査員が、厳正な審査を実施。審査員の中から最大5名を「酒大使」に任命し、本コンクールの結果や受賞酒を継続的にPR。酒大使は、良質な日本酒の多様な魅力と日本酒を楽しむ生活習慣を伝えるべく、ヨーロッパを中心とする世界各地でプロモーション活動を展開します。
…とあるのですが、このままだと1回限りで終わってしまい、プロモーションも何も無いのでは?と思います。

モンド・セレクション

名称は広く知られていますが、コンテストではなく、「消費者製品のグローバルな評価を提供する唯一の品質保証機関のひとつ」というのがモンド・セレクションであり、絶対評価で品質基準を満たすかどうかだけなので、他と性質を競うものではありません。
独自の品質基準で採点し、100点満点で90点以上なら最高金賞、金賞は80~89点、銀賞は70~79点、銅賞は60~69点となっていて、9割ほどが何らかの賞に認定されるとか…。審査費用さえ出せば賞が取れる、というのも頷けてしまう話ですね。
ベルギー・ブリュッセルに設立された団体ですが、国際的な知名度は高くなく、例外的に知名度の高い日本の製品が多くエントリーしているそうです。

その他の清酒コンテスト

こちらで紹介した以外にも、世界各地で開催されている清酒コンテストがあるようですが、規模が小さい、歴史が浅い、などで知名度は上記のモノに比べると劣るものになります。
ざっと以下のようなものがあるようです(公式サイトがあるものはリンクしておきますね)。
ロンドン酒チャレンジ
ボルドー酒チャレンジ
ミラノ酒チャレンジ
・5STAR SAKE
SAKE-China 日本酒品評会

世界酒蔵ランキング

最後に、2019年より始まった、これらの受賞結果をポイント化して、酒蔵のランク付けをしようという「世界酒蔵ランキング」について紹介します
(情報を2023発表時のものに更新しました)。

世界酒蔵ランキングは、国内外で開催されている日本酒コンテストの入賞実績をポイント化し、それに応じて酒蔵を格付けするものです。現在、酒蔵は国内外に1500以上ありますが、格付けされるのは獲得ポイントの上位50位の酒蔵です。酒蔵を発展させる意欲、設備、技術、原材料、そして人材のすべてが高いレベルになければランクインは難しいと考え、ランキングを発表することにしました。
なお、コンテストの入賞実績をポイント化するため、コンテストに出品しない酒蔵は含まれないことをご理解ください。
対象としたコンテストは、いずれも人気投票の要素を排してプロフェッショナルな審査員がブラインドで厳正な審査をおこなっています。出品数、受賞数、審査員、審査方法を開示しており、選考結果は信頼性が極めて高いものです。近年、日本だけでなく海外でも続々と日本酒のコンテストが開催され始めています。これらは現地の好みを知る絶好の機会であり、日本酒を広めるアンバサダーを育成する場ともなり、日本酒のファンづくりに直結します。私たちは審査会が十分なクオリティをもって運営されるようサポートいたします。

世界酒蔵ランキング公式サイトより

対象となるコンテストは以下の通り。
・全国新酒鑑評会
・各国税庁局の清酒鑑評会「吟醸の部」
(2023より集計対象)
・全国燗酒コンテスト
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード
・Kura Master
・IWC SAKE部門
・SAKE COMPETITION
・全米日本酒歓評会
(2020より集計対象)
・ミラノ酒チャレンジ(2023より集計対象)
今回紹介したものの中でも集計対象に含まれていないものもありまして、そのコンテストで賞を取っていても集計外となります。

この評価方法の特性上、出品数が多い蔵ほど得点チャンスが増える仕組みです。また引用文中、太字で示しましたが、そもそも出品していない酒蔵はランキングに載りません。2023年の対象は701蔵となっており、国内外の酒造場が約1,500とのことなので、そのうちの4割超くらいです。

出品するのもタダではないので、コンテストに対する意欲だけでなく、十分な予算が無いとまず土俵に立てないことは理解しておく必要があります。海外コンテストだと一点あたり数万円、それを5つも6つも出す、さらに複数のコンテストに…となると、相当なお金が必要になることはお察しください。
それと各コンテストの受賞レベルによってポイントに傾斜がありますが、受賞率と傾斜が一致しないので、最高賞を取るよりもそこそこの賞をそこそこ受賞する方がポイント累計が高くなってしまうケースも起こり得ます。
例えばIWC SAKE部門の配点だと、最高賞の「チャンピオン・サケ」だと「ゴールド」と「トロフィー」の点もありますので50+10+20=80ポイントになりますが、「シルバー」1つと「ブロンズ」2つを取ると合計は40+30×2=100ポイント。受賞率についてはチャンピオン・サケになれるのは全出品数のうち1つ、即ち0.06%なのに対して、シルバーは上位のおよそ20%、ブロンズは上位のおよそ40%ですから、単純に掛け算したとして20%×40%×40%≒3.2%となりますので、どちらが容易かは明瞭ですよね。
上記について、2023より「1コンクールにつきポイント加算は各部門上位3商品まで」となりましたし、獲得ポイントも状況を鑑みて変化していますので、一旦忘れてください。

このランキングの上位にある蔵は、国内外のコンテストに多く出品しその評価も高い蔵、です。したがって商品選びの際にハズレを引くことはまずありませんよ、ということは言えます。しかし清酒の美味しさを順位付けしたものではありません。それを踏まえて活用できると良いですね。

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