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具体と概念の両面から考えることが成果につながる(2/2)

【ポイント】

  • 多くの人たちは、具体的に考えるのは得意だが、概念的に全体像を描いたり、全体像から本質を見極めたりするのは苦手である。

  • たまに、物事を概念的に捉えることに人並外れて得意な人がいる。いわゆる、カリスマ的なリーダーの多くはこれにあたる。しかし、現場は彼の描く世界観を理解できない。

  • 結果を出せるリーダーは物事を概念的に捉えることができるので、カリスマの考えを理解できる。その一方、具体的に考えることもできるので、カリスマが描くイメージを現場にわかり易く伝え、イメージをカタチにすることができる。

  • 結果を出せるリーダーが議論に参加するだけで、議論の方向性や議論から生み出される価値はまったく違うものになる。



前回はまず「具体 vs 概念」という対抗軸で物事を捉えることの大切さについて書きました。そして、この延長上で「結果を出せるリーダー」について説明しました。
世の中にはカリスマと呼ばれる人がいますが、選ばれた人たちです。

カリスマではない私たちが社会や組織で認められるには、結果を出せるリーダーを目指すべきです。

結果を出せるリーダーは、組織力を引き上げ、事業を成功に導くことができます。概念化の大切さに気付いた私たちが結果を出せるリーダーを目指すこと、それは世のため人のため、皆さんの会社や組織のためなのです。

結果を出せるリーダーとは、具体と概念の両面から考えることができる人のことです。

結果を出せるリーダーは、カリスマの閃きを待つことなく、自ら方針や戦略といった概念を作り出せるうえに、その概念を目の前の具体的な事象と結び付けて説明できます。現場が置かれている状況と問題解決の方針を現場のメンバーたちにわかりやすく話すので、彼らはリーダーの話を身近な出来事に結び付けて考えることができます。これが現場に納得感を生み出し、チームワークを育てます。

今回は、例を挙げて、理解を深めていただくことにしましょう。

このとき、私たちは改善活動の最中でした。業績は急激に悪化しており、抜本的な改革が求められていました。

A氏 「大型プロジェクトの指標悪化にはお客様が関係しています」
B氏 「お客様の度重なる仕様変更で、工数の悪化が止まりません」
私 「どのプロジェクトも…ですか?」
A氏 「大型プロジェクトです。大切なお客様ばかりで、無碍に突き放すわけにもいきません」
B氏 「プロジェクトマネージャには改善するように指示を出していますが、改善が見られ ません」
C氏 「仕様管理を厳しくするしかないです。契約書にも、仕様変更は両者の協議で決めると 謳っているわけですし。追加費用の見積りのことも書いてあります」
A氏 「仕様情報をエクセルで共有し、仕様変更を受け入れるには役員の承認が必要なルール にしましょう。仕様変更の影響度合いも明記させます」

私は首をひねりました。仕様変更は、大小合わせれば、お客様との打ち合わせの度に発生しているはず、はたしてそんな運用が可能なのかと疑問を感じたのです。しかも、変更要求を却下するとなると、お客様に納得していただかなくてはなりません。「大切」なお客様にどうやって平和的に納得いただけるというのか、想像できませんでした。

 「暫定的に蛇口を閉めるのはいいと思いますが、恒久的にはどうされるおつもりです か?」
A氏 「…」
 「プロジェクトマネージャは、なぜ仕様変更を受け入れざるを得ないのでしょうか?」
B氏 「お客様とのこれまでの付き合い方を変えないと、仕様変更は減少しないですね」
A氏 「拒否し続けると、そのうちにあきらめるようになるのではないですか?」
B氏 「そのときは、うちには仕事がこなくなっています」
C氏 「プロジェクトの立ち上げ時点で『握り』が足りないと思います。提案の際の要求を鵜 呑みにしていて、具体化に向けた議論をあまり行っていません。だから断り切れないと いうのもあるはずです」
A氏 「以前は、仕様変更を受け入れるかわりに、ほかで便宜を図ってくれていたのですが、 今はお客様の状況も厳しいようで…」

こんな議論が暫く続いたわけですが、結論は理想的な方向に向かいました。

  • 当面の対策としては、仕様変更の蛇口を閉める。

  • それと同時に、お客様の言いなりではなく、常日頃からの提案型アプローチでお客様のビジネスパートナーとしての立ち位置を目指す。

  • プロジェクト立ち上げ前のフィジビリティスタディフェーズを提案内容に盛り込み、そこで仕様の曖昧さを解消する。

具体的な実施計画はこれからでしたが、当初の議論からは見違えるほどよくなったと思いませんか?

この時の私の立ち位置こそが、まさに「結果を出せるリーダー」でした。

私の中には全体像があり、向かうべき方向は察しがついていました。しかし、会議の雰囲気を察して、強引に結論に導くことはしませんでした。
私は多くを語らず、参加者の想像力を刺激するに留めました。
なぜなら、改革は他人に教わるものではなく、当事者たちで切り開くものだからです。
現場を理解しているリーダーだからこそ、現場から強引に舵を奪うことなく、彼らのツボを突いて、あるべき方向に導くことができたのです。


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