実践でたどり着いた「本質」という言葉の意味(1/2)
【ポイント】
私たちはよく「本質」という言葉をよく使うが意味を説明できない。本質を語る前に、これ自体が問題。
「本質」は「特徴」の部分集合である。本質を言葉にすると「それは特徴では?」となる。
「特徴」が目的や価値と結び付いたとき、はじめてそれは「本質」となる。目的意識のないところに「本質」はない。
私たちはよく「本質」という言葉を使います。
議論の最中に「結局、本質は○○だね」と言われると、その内容を吟味する以前に、反射的に「おお、切れ者ここにあり」と感じてしまうのは私だけではないはずです。
では、そもそも「本質」とは何でしょうか。
実は、それを言葉で説明するのは、極めて難易度が高い作業です。
あるとき、概念化力強化トレーニングの講師を仰せつかった私は、「本質」を言葉で説明する必要に迫られました。そこで何かのきっかけになればと思い、自動車という存在を「抽象化(特徴を際立たせる)」し、さらに「洞察(本質を考える)」してみることにしました。
まず、自動車という存在を抽象化してみると以下のようになりました。
動力源が付いている
タイヤが4つ付いている
曲がることができる
人が車内から操縦できる
・・・・
次に、自動車という存在を洞察すると以下のようになります。
利用者が自ら運転できる
閉鎖空間である
動力源が付いている
目的地や経路を自由に決められる
・・・・
私はこの結果に驚きました。抽象化で特徴を際立たせても、洞察で本質を考えても、出てきた答えはほぼ同じだったからです。この経験から、私は、「本質」というものがわかった気がしました。すなわち、
「特徴に目的や価値と結び付いたときにはじめて、それは本質と呼ばれる」
例えば、自動車を移動の手段と考えれば、自動車に求める「価値」は以下の通りです。
目的地を自由に決められる
高速で移動できる
数名が一緒に移動できる
子供が騒いでも迷惑をかけない
事故の危険性や影響が少ない
これらの価値に結び付いた自動車の「本質」は、
「利用者が自ら運転し、自分が選んだ経路で、目的地のすぐ近くまで行けること」
になります。
目的しだいでは、これに、高速移動、個室空間などが本質に加わります。
このように、目的や価値を明らかにすることが「本質」を見つけ出す上での第一歩なのです。
例を挙げて、理解を深めていただくことにしましょう。
懇意にしていただいているクライアントとの会話のシーンです。A氏は事業責任者です。
A氏 「最近は安くていいものが出てきて、お客様はそれで十分満足されています」
B氏 「うちは消えゆく運命なのだと思います」
私 「デフレ時代の今、安くてよいものは世の中に溢れています。でも、お客様が求めて いるのは『安い』『十分な性能がある』、これだけでしょうか?」
A氏「それはそうなのですが… 実際にうちの顧客は低価格品に流れるのですよ」
私 「お客様は何に価値を見出すのでしょうか?」
B氏「私がお客様なら、価格と性能だけではないです」
A氏「私なら、安心感が大事です。故障したときにすぐに対応してくれないと困ってしまい ますから」
私 「もし皆さんが低価格品を購入していたとしたら、どんなことになりますか?」
A氏「故障したら買い替えるしかないでしょうが、買い替えには時間がかかるので… その 間は、我慢するしかないですね、相当なストレスですが…」
私 「お客様の本質的な欲求は、価格や性能ではなくて安心感ではないですか?」
B氏「確かにその通りです」
A氏「新規参入企業は、価格や性能といった『わかりやすさ』で攻めてきます。確かに、 それで割り切れるものではないですね」
B氏「私たちにはサポート体制にお金をかけてきました」
私 「そこにさらにメスを入れて、お客様の期待に沿ったサービスにできないですか?」
商品の使われ方に目を向けることで、お客様の本質に迫ることができた端的な例です。
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