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THE BLACK DAHLIA MURDER の真実

THE BLACK DAHLIA MURDER の Trevor Strnad が旅立ってしまいました…41歳。あまりにも早すぎる、あまりにも突然の別れでした。

「俺たちのメタル文化は社会の大部分から過小評価されているけど、計り知れない強さを持ち、宗教の束縛なしで自由に生きることができるコミュニティーなんだ」

「権力や主流派にとって、俺たちメタル・ヘッズは知識という強力な疫病を運び、病気のように蔓延する、ネズミやゴキブリのような望ましくない生き物だ。その知識とは、隠されているアンダーグラウンドなデスメタル世界に関するものなんだ」

「俺たちはアンダーグラウンド・ミュージックを愛しているからね。俺たちの音楽はアンダーグラウンド・ミュージックへのトリビュートさ。俺たちが達成した成功は、自分たち自身の条件に妥協することなく基づいているからね」

私は Trevor に、ちょうど2年前の今ごろインタビューを行いました。それまで私は、バンドの前任ギタリスト Ryan Knight の大ファンだったのですが、今では Trevor がインタビューを受けてくれてよかったと心から思っています。話題も豊富で、日本のゲームにも造詣が深く、何よりメタル文化やメタルの未来について真剣に向き合っている。インタビューを Twitter か何かでシェアしてくれたし、非常に優しく、神対応だったことを覚えています。

実際、Trevor は様々なバンドの作品にもゲスト参加し、積極的にツアーを行い、時には執筆し、メタル世界の兄貴分として愛され、慕われ、尊敬される存在でした。ゲーム実況など、新たな分野にも臆せず挑戦を続けていました。

インタビューはちょうどパンデミックの初期のころでしたが、実は彼が様々な悩みを抱え込んでいて、パンデミックの悪化と共にその闇が深まっていったことを改めて知りました。自身の心境を昨年の Metal Injection ビデオ・インタビューで吐露しています。

もしかしたら、Trevor にとってこの世界は、あまりに息苦しく、生きづらい場所だったのかもしれません。もしかしたら、道半ばで自ら列車を降りるのもまた、私たちに与えられた権利なのかもしれません。ただ、後に残された私たちは、Trevor の痛みや苦しみ、絶望をくみ取って、世界を少しずつでもより良いものに変えていく、そんな生き方だって選択できるはず。きっと、列車を降りる決断を覆させるよりも、世界を変える方がよっぽど人間らしくて理にかなっているから…誰も途中下車を望まない社会に必要とされているのは、優しさと寛容さなのかもしれませんね。ビデオ・インタビューの要約です。彼らの音楽に救われた人たちは、ぜひ立ち止まって少し、ほんの少しでも考えてみてください。

昨年11月、Trevor Strnad は、数週間前に "突然" 亡くなった母親の死への対応に苦慮していることをソーシャルメディアに公開しました。そこで、"40歳になっても、まだつらい" と彼は書いています。「俺と母は仲が良かった。俺は親を失った小さな子供のような気分だよ。親の死に対処し、打ち勝った多くの人たちに賛辞を送るよ」

2021年4月のMetal Injectionとのインタビューで、Strnad はうつ病とアルコール依存症との戦いについて語っていました。その際、彼はこう語っています。

「今のようにツアー中にガバガバ飲んでいたら、年をとったら続けられないよ。40歳を過ぎて、自分の仕事をうまくこなし、馬鹿にされないためには、自分自身に対してもっと厳しくならなければいけないんだ。それが、禁酒のきっかけ。それが肝心なこと。別に......飲んでるときは楽しくないんだけどね」

「前に8ヶ月禁酒をした。でも、その時は、人間関係を守るためだったんだ。自分が本当に酒を断ちたかった、自分自身のための投資というわけではなかったんだよな。しばらくすると、禁酒をしなければならないことに憤りを感じ、パートナーに恨みを抱くようにもなっていった。でも、今回は完全に自分の意思。酒を飲む前のような興奮を味わいたいんだ。このバンドを始めた頃、俺はクソ変わったストレートエッジな子供だった。でも今となっては...酒はステージに立って、面白く、気ままに、ファンが期待するワイルドな男になるための潤滑油みたいなものさ。シラフでいつもあんなに暴れているバンドを期待されても、それは無理な話なんだ。ステージに立つために1日に10杯は飲む。2週間後には、毎日二日酔いになっているよ。二日酔いになると、さらに酒を飲んで、ツアーが終わるまで、基本的に摂取量を2倍にしてしのいでいく。楽しくもないし、嫌になるし、最悪だ。最初は楽しいんだけどね。このバンドで酒を飲む3人は、"ああ、兄弟。一気飲みタイムだ!" ってなる。で、楽しいんだけど、持続しないんだよね。自分の写真やビデオを見て、"ああ、ひどい顔してるな" と思ったことも度々。そんな顔にはなりたくない。これから先、老いて肉体的に人々の基準を満たすことはどんどん難しくなっていくだろうからね」

「デスメタル・バンドであるにもかかわらず、人々から多くの視線とジャッジがある。正気の沙汰ではないよ。俺たちはボーイズ・バンドじゃないんだ。ハンサムである必要はない。誰がそんなこと気にするんだ?しかし、人々は俺たちを非難する。インターネット上でデブと呼ばれることが何度もあったなんて言えないよ。正気の沙汰じゃない。俺のような仕事をするには、面の皮が厚くなければならないんだ。でも、どんなに面の皮が厚くても、時間が経つにつれて、必ず疲弊していく。全てのソーシャル・メディアを自分でやっているから、匿名の罵詈雑言の矢面に立つし、自信喪失が蓄積されていく。バンドがどんどん大きくなって、より多くの目とプレッシャーがある中で、より多くの不安が蓄積されていったんだ」

さらに Strnad は、40歳の誕生日が自分にとってターニングポイントになったと語りました。彼はこう説明します。

「40代を素晴らしいものにしたかったんだ。見栄えを良くし、より良いフロントマンになり、より健康的になり、叫びながら40歳を迎えたいんだ。誰にも笑われたくない。このバンドがものすごいスピードで進み続け、優雅な年老いたメタルヘッドに変身したいんだ。幸運なことに、メタルは年を取っても続けられるし、年配のメタルヘッドになることもできる。ポップ・ミュージックのように、ただ捨てられてしまうようなことはない。ありがたいことに、この音楽は現在や未来と同じくらい、過去についても語られるものなんだ。人々は常にクラシック・メタルのレコードを愛してやまない。それが、俺がメタルで楽しいと思うことのひとつ。1週間だけ聴いて終わりというような、使い捨ての音楽ではないからね」

「このバンドはあと20年は続けられると思う。でも、物理的にこのレベルでやって、まったくトップアウトしないようにするには、健康と寿命と正気にも焦点を当てる必要があるんだ (笑)」

さらに、「(パンデミックの間)ずっと一人で考え込んでいたことは、俺にとってとても危険なことだった」とも語っています。

また、Strnad は、うつ病の治療法としてケタミン療法を受けようとしていることを明かしました。"静脈注射だ "と彼は言います。

「週に3日、2週間にわたってケタミンを投与されるんだ。そして、数時間、多幸感に包まれる。そうすると、脳が新しい通路やシナプスを作って、自滅的な思考をしなくなるんだ。今はだいぶ良くなってきたけど、この2年間はかなり暗い気持ちになった時期もあったんだよね」

「本当に、世界のあり方について、棺桶に釘を刺すような思いで見ていたよ。政府をはじめ、あらゆるものがそうであるように、俺たちにはハッピーエンドはない。これから先、どんどん暗くなっていくような気がするんだ。それは、人間にとって常に考えなければならないことだ。俺が持っていたわずかな無邪気さも、クソみたいなやり方に対するわずかな目隠しも、基本的に奪われてしまったんだ。重かったぜ。これは俺にとってクソ重いことなんだ...俺は今この全てに、そして自分自身の感情に逮捕されているようなものだ。俺の不安は頂点に達したんだ。何かをしなければならないところまで来ているんだ…」

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