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(ヘヴィ・メタルは) 負けヒーローが多すぎる!

"負けヒロインが多すぎる!"。いやー、おもしろかったねー!まず、なんといっても作画が素晴らしい!まさに8K。映画のような風景に溶け込むマケインたちの喜怒哀楽。

マケインなら僕はね、八奈見ちゃんが好きですね。やっぱり、いっぱい食べる女の子はいい。ちくわをかじる女の子はいい。だらしなボディで、倫理観もだらしなく、金銭的にだらしないところも素晴らしい。僕はね、ちょっとだらしない女の子が好きなんですね。そのくせ、一番仲間を思いやっていて、ラッコで、百面相で、本当に大事なことはわかっている。

マケインというのは、マーケティングやインフラや外資系は全然関係なくて、負けヒロインの略。つまりは負け組、3人のフラれた女の子たちのこと。おもしろいのは、3人が3人ともスペック (この言葉はあまり好きじゃないけど) が低いからフラれた、負けたわけじゃないところなんだ。

みんな、かわいくて、優しくて、きっと一緒にいても楽しいだろう。だけど、タイミングや、"泥棒猫" の存在や、ちょっとした駆け引きの妙で負けてしまった。もちろん、3人とも癖はツヨツヨのツヨなんだけども。

このアニメが素敵なのは、みんな負けちゃって、苦しんで、いっぱい傷つくんだけど、みんながしっかりと前を向いて自分の足で歩き出すところなんだ。これはね、回復力のお話しなんだよ。

実はね、ヘヴィ・メタルも負けヒーローが多すぎる!んだ。

最近、ローランド・グラポウにインタビューする機会があったんだけど、彼の負けヒーローぶりは素晴らしかった。

「彼ら (今の HELLOWEEN) のことを思えば満足だ。僕は招待されなかったから、再結成には参加していない。そう、最初は少し動揺したんだ。何しろ、僕はバンドの歴史の大きな部分を占めていたし、たくさんの曲を書いたからね。でも僕は運命論者で、この世で起こることはすべて最善のために起こると信じている」

これね、もう完全に八奈見ちゃんなんだよね。大好きな幼馴染とおっぱい泥棒猫がくっついて最初は大絶望していた八奈見ちゃんだけど、徐々に2人の幸せを受け入れられるようになっていく。中学の同窓会も仏のような心持ちで出席できた(ものの怒りながらクリームソーダを飲み散らかす)し、エチエチアイスペロペロを見せつけられても作画がアナログに戻るだけで決して意識を失うことはなかった。

普通に考えればおかしいんだよ。理不尽なんだよ。プロ幼馴染がおっぱい泥棒猫に負けるのも、長年バンドの顔のひとりだったローランドが HELLOWEEN の同窓会に誘われないのも。

だけど、どこかで僕らは不条理を受け入れなきゃいけない。そして、前へと歩きださなきゃいけない。だってこの世界では、いつも正しさが勝つわけじゃないから。いつも自分の理想が実現するわけじゃないから。いつも合理性やスペックの高さが重要なわけじゃないから。いつも優しさが伝わるわけじゃないから。だからこそ、僕らは寛容であるべきなんだ。

逆に泥棒猫だって、負けることはある。小鞠ちゃんは結局、幼馴染同士の絆、歴史に割って入ることができなかった。

ブレイズ・ベイリーとティム・"リッパー"・オーウェンズはまさに小鞠ちゃんだ。

2人ともちょっとクセは強いけど、実力もあり、努力家で、謙虚だった。だけど、IRON MAIDEN, JUDAS PRIEST の看板を背負うことはできなかった。ブルース・デッキンソン、ロブ・ハルフォードとバンドの絆、そして歴史はあまりにも深く強いものだったから。

でもね、2人がバンドに残した作品や諦めずにメタルを続けたこと、そして近作の充実ぶりに勇気づけられたファンは決して少なくないはずだよ。

過去の幻影に囚われ続けるマケインもいる。朝雲千早ちゃんはマケインじゃないけど、結構マケインだと思う。だって綾野くんは心のどこかで焼塩さんのことを忘れてはいないから。

PINK CREAM 69 のデイビッド・リードマンはまさに朝雲さんだ。もう30年、バンドの看板を背負っているのに、常にアンディ・デリスの亡霊にとりつかれている。

デイビッドはとにかく歌が上手い。声量もど迫力で、ピッチもはずさない。声に色気もあって、見た目もカッコいい。"Children of the Dawn" なんてメタル史に残る大名曲だし、大名演だ。グランジになったとかで批判された "Change" とかも、今聴くと普通にめちゃくちゃカッコいいし、聞き応えのある絶妙なロック作品だ。

それでも、みんなアンディ・デリスが忘れられなかった。そうなんだよね…人間は "スペック" だけで割り切れる生き物じゃないんだよね。

でもね、メタルの負けヒーローは誰ひとりとして腐らなかった。ローランドは MASTERPLAN に人生を捧げると意気込んでいるし、ブレイズの最新作は絶賛されている。リッパーは K.K.'s PRIEST で第二のプリースト人生を謳歌しているし、デイビッドはなんやかんやで実力派の評価を確立し、色んなところで活躍している。

何度も負けて、絶望して、傷ついて、もがき苦しんでも、その度にだれも諦めなかったし、その逆境をバネにしてみんな前に進んで行った。だから今があるんだ。そうなんだよ、メタルは負けてなんぼ、負けても大丈夫な "回復力" の音楽だから。

他にも負けヒーローはたくさんいる。ACCEPT のデビッド・リース、EUROPE のキー・マルセロ、BON JOVI のフィル・X、BLACK SABBATH のトニー・マーティン、SCORPIONS のマティアス・ヤプス、最近だとモトリーのミック・マーズもそうだよね。

僕はメタルのぬっくんになりたい。生まれつきの性分なんだろうけど、結局勝ちヒーローよりも負けヒーローが好きなんだよね。メタル世界から "Underrated" "過小評価" って言葉をひとつでも取り除いていきたいんだ。勝ち馬にのるだけのメディアなんて意味がないと思うから。

というか、僕だって負けヒーローだ。というか、ヒーローでさえないけれど。華やかな場所に出ていきたい、有名になりたいとか昔は思ったこともあったけど、もうホントどうでもいい。自分のやり方で伝えていくだけだ。

だってね、チケットも買って入ってないのに、「好きなアーティストのホームページは逐一チェックしてライブに行きましょう!客が入らないとしたらそれは君たちの責任です!僕らの仕事ではありません!」とか、「METALLICAが来るか来ないかは君らが客を呼べるかどうか次第だ!俺は知らん!See Ya!」なんて言う有識者にはなりたくないじゃない。一緒にされたくないじゃない。正直終わっとるわ。

八奈見ちゃんには「そういうとこだぞ、Marunouchi Muzik!」 って言われそうだけどね。

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