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月収17万円の夫と私が、娘が2歳になる前に大学費用120万円を貯めた結果。。

5年前、私たちの暮らしは、アイルランドで生活保護を受けている人たちよりも、さらに貧しいものでした。

毎月カフェで、1杯のコーヒーを飲むお金もなかった。服はいつもママ友からのお下がり。食費も、ぎりぎりまで節約して、どこに行くにも歩いて移動していました。

しかし、私たち夫婦は、娘の食費や生活費は絶対に削らなかった。

”どんなに私たち夫婦の服がボロボロで、貧しい食事でも、娘が将来「4年制の大学に行きたい」言い出したときは、なんとか学費を工面してあげたい。”

そんな思いが強かったのは、娘がこの国で生き抜いていくには、高学歴が必須であることを、私たちが身に沁みて知っていたから。

この国では、どんなに才能があっても、コネも何もないところから這い上がるのは、普通ではあり得ない。それは、断言できます。

結果、私たちは、1円たりとも無駄にすることなく、娘が2歳になる時までに、娘がアイルランドで4年制の大学に行けるだけのお金を貯金できました。それには、複雑な背景があったのです。

どうして、私たちがそのような決断をしたのか、そして、低所得でどのように実現できたのかをご紹介します。(※あやしい副業ビジネスの話ではありません)

ケンブリッジ大学からのオファー

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夫は、高校卒業時に、イギリスの名門ケンブリッジ大学の史学科に特別に入学を許可された逸材でした。

普通、学校の成績が悪い生徒はケンブリッジ大学に見向きもされません。それもそのはず、ケンブリッジの史学科は、世界一のレベル。

彼は自分で密かに進めていた研究の成果を提出し、それが認められ、入学を許可されたのです

しかし、夫の母親が高額のスピリチュアルにはまってしまい、息子の学費として貯めていたお金を使い込んでいたのです。おかげで彼は、ケンブリッジに入学できず・・・。

そのお金があれば、1~2年の授業料は支払えて、あとは休学したり、バイト代などでなんとかなったかも知れない。

IQ168の天才肌なので、希望すれば大学院にだって行けたはずです。

夫は、中学の頃から父親の仕事を支えていたので、学校を休む日も少なくありませんでした。

そのため、飛び級するほどテストの成績は良かったにも関わらず、成績を落とされ奨学金制度を利用できませんでした。

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それからというものの、彼の人生は下り坂でした。

その頃は、ちょうど、リーマンショックの後で、国の財政が破綻していた時。失業率も半端ないほど高かったのです。

FireShot Capture 123 - アイルランド基礎データ | 外務省 - www.mofa.go.jp

(参考:『アイルランド(Ireland)基礎データ』|外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ireland/data.html)

彼がどんなに努力しても、学歴がなくては定職には就けず。。

短期の仕事を転々とし、人助けなどをした際に怪我をして、あちこちに障害を抱える身となりました。


子供を作れない体になってしまった。。

その頃夫は、ある病気が原因で医師からの「子供を作れない」と宣告されました。。

可能性は1%以下だったそうです。

夫の夢は、子供を育てることだったので、もう人生には何の未練もなく、

「アフリカに行って人助けでもして野垂れ死にしよう」

そんなことを考えていたそうです。


私たちの出会いについて

彼が、アフリカに立つ前の最後の夏に、私たちは出会いました。

私と出会った瞬間、「不思議と心が弾んで、嬉しくなった」と夫は言いました。

私たちは、しばらくしてから、アイルランドの知り合いの家を借りて住み始めました。

貧しくてつつましい生活ではあったけれど、幸せな毎日でした。私たちの出会いについては、ブログでも詳しく紹介しています。

https://www.maroon-golden.com/entry/2017/08/15/180302


夫がみた不思議な夢

そんなある日突然、夫が心配そうに近づいて来て言いました。

「昨日、君が苦しんで死ぬ夢を見たよ。」

「最近、体調はどう?」

「大丈夫、至って健康!」

「ならよかった。。。」

私は、夢のことはあまり気にせずに、展示会用の作品を仕上げることに没頭していました。

その頃は、怖いもの知らずで、全てが面白おかしかったので、彼の夢も冗談のように聞こえていたのかもしれません。

しかし翌日、私は早朝にトイレに起きると、激しい腹痛に襲われ救急車で病院に運ばれました。

それは、今まで経験したことのないような、腹部をナイフで刺されているような痛みでした。

薄れていく意識のなかで「もう、死にそう。」と言ったのを覚えています。


病院での出来事

救急車で運ばれる途中で、血圧を計ったときは、下の値が30にも下がりました。痛み止めも全く効かなかった。

病院に着いて、やっと痛みが和らいだのはモルヒネを投与したあとでした。

その直後に、私たちは、お腹に赤ちゃんがいることと、直径7cmもある巨大な嚢胞(のうほう)が、子宮にできていることを知らされました。

嚢胞は、赤ちゃんを守るためにできたようです。

医師によると、それは、私の体のなかにある不健康な物質でできており、赤ちゃんがそれを吸収しないように、できたのだそう。

妊娠中にはよくある症状だそうですが、7cmは異常だそうです。

痛みの原因は、その嚢胞と、腎臓結石によるものでした。


誤診と奇跡

最初に、医師が

「赤ん坊が間違った場所にできてしまっている」

と言った時は、夫は落胆して泣き崩れてしまいました。

しかし、それが別な医師により誤診だと分かった時には、嬉し泣きに変わりました。

それは、神様が、不運つづきの彼に与えてくれた奇跡のような出来事でした。

医師から、

「子供を作れる可能性は1%以下」

と言われ、あきらめていたので、本当に嬉しかったのだと思います。


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それからというもの、夫は、妊娠中の家事は全てやってくれて、産後も積極的に子育てに参加してくれました。

片目しか見えないので、神経が疲れやすく、重度の腰痛持ちにも関わらず、娘の世話をしてくれました。彼には、本当に感謝の心でいっぱいです。

私たちは、夫が副業で稼いだ少しの収入と、生活費を節約して貯めたお金とあわせて、2年間で120万円を貯めました。

2年間で120万円というと、簡単に実現できそうですが、底辺の生活をしている私たちにとっては、非常に厳しかったです。


貯金するために心がけたこと

年間60万円を貯めるために、具体的に私たちが行ったことは、以下のようなことです。

【子供編】
・地域のコミュニティセンターで育児サークルに参加

・サークルを運営する看護婦さんから、ベビーカーを無料でお借りした

・子供の服やおもちゃは、ほとんどママ友から頂いた

・子供の服は、夫の母が作ったり編んだりしてくれた

・絵本やベビーベッドなどは、ほとんどがチャリティーショップから安く購入(中古品を扱っていえるお店です。)

・実家の母から日本の絵本を船便でまとめて郵送してもらった

・所有する絵本が100冊を超えてからは、本棚に入りきらなくなったので、
図書館から毎週10冊ほど借りるようにしました。

【家賃】
・当時は、アイルランドで一番家賃が安くて、比較的便利な場所に引越すことで、月6万円以下に抑えられました。

・私がアメリカに留学経験があり、アメリカに所有不動産がないことを証明できなかったという理由で、公営住宅や住居補助制度などは一切受けることができませんでした。

もし、この制度を利用できていれば、月3万円、年間で36万円以上は、貯蓄にまわせたとことでしょう。

【食費】
・娘の食費は一切節約できないので、私たち夫婦の食事メニューを定番化させることで、節約しました。

→定食屋さんのランチメニューが3つのところありますよね。あんな感じにすると、コスパが高くなります。

ディナーメニューも、同じ手法で定番化させました。(夫婦の食費は1週間で40ユーロ、日本円にすると約4800円です。アイルランドの食材は日本より割高です。)

・コイン貯金を1年続けて、そのお金で大きめの冷凍庫を購入→アイルランドでは冷凍食品が安いので、食費がだいぶ節約できました。

・外食は、1年に1回あるかないかぐらい

・外出時は、常にマイボトル持参で、カフェ代節約

【嗜好品代】
・妊娠してからお酒タバコは止めたので、嗜好品代は週に1枚買うチョコレート代ぐらいでした

・夫は、自分の副収入で、エナジードリンクを毎日1本~2本飲んでいました。

【交際費】
・育児サークルは、コミュニティセンターで、1回2時間2ユーロ(240円程度)ほどだったので、毎週通っても、それほど負担にはなりませんでした。

・ママ友とは、基本的にはお互いの自宅に行ったり来たりして交流していたので、0円です。

・夫も同じような感じです。

【交通費】
・食品は週に一度、必要な食品のみをまとめて注文→配達料400円。

・足りない食品は、徒歩30分で行けるスーパーまで、ベビーカーを押して購入
・休日はどこにも行かないか、徒歩10分で行ける公園やビーチで過ごしました。
・全てのサービスが徒歩圏内の場所に引っ越して住んでいたので、交通費はほとんどかかりませんでした。

かかるといえば、たまにある大学病院での定期健診や雨の日のタクシー代など

【通信費】
・月10ユーロ(約1200円)でデータと通話を十分に使えるプリペイドプランに夫婦それぞれ加入していました。

・インターネット代は、高くても他になかったので節約できませんでした。(月額6000円程度)

【娯楽費】
・海の景色が絶景の場所に住んでいたので、散歩するだけでも結構楽しめました。
・Wiiは、中古を8000円ほどで購入(人気のゲームソフトも何枚か含まれていた)
・YouTubeなど→無料
・ブログ(私)→無料
・オンラインゲーム(夫)→無料

【エクササイズ】
・自宅でヨガや筋トレ→無料
・急勾配の丘の上に住んでいたので、散歩したり、ショッピングに行くだけでも、いい運動になりました。
・ビーチをジョギング→無料

【水道料金】
一時期、国で水道料金を徴収しはじめましたが、国民の反対運動が激しすぎて暴動が起きたため、無料に戻りました。

【光熱費】
工夫していろいろやってみましたが、赤ちゃんがいる環境だったので、こればかりは節約できませんでした。オール電化の家だったので、冬は月額で2万円、夏は1万円ほどでした。

【税金】
低所得者は、所得税がほとんどかからなかったので、助かりました。アイルランドには、住民税はありません。

【健康保険】
これも、一定の基準を満たした低所得者は、無料です。また、医者や歯医者にかかるのも無料で、私の甲状腺癌の手術や入院費もすべて無料でした。もちろん、お薬代も無料です。


私達が120万円をどこに貯めていたのか?

実は、私たちは、120万円をずっと銀行に預金していたわけではありません。

2000ユーロ(約25万円)ほど貯まった時点で、当時、利率12%だった「国の子供用債権」(Child Bond)の口座を開設しました。

この債権は、子供の学資を国が保護する名目でできた、非常にリスクの低い債権で、娘が18歳になったときに、本人しか解約できません。(夫は娘が0歳の時に、AIB銀行のファイナンシャルプランナーに相談して、口座を開設しました。)

一度購入してからも、毎月積み上げていくことが可能です。

当時2015年は、アイルランドがリーマンショックの破綻状態から少しづつ回復しはじめている時でした。

そのため、銀行預金の利回りも3.5%という時代でした。あれから5年経った今では、なんと同じ銀行で0.01%まで下がってしまいました。

FireShot Capture 124 - AIB interest rate - Google 検索 - www.google.co.jp

(参考:Deposit Rates |AIB https://aib.ie/our-products/savings-and-deposits/Deposit-Rates)

たったの5年でこれほど変わってくるなら、誰でも不況のときに口座を開設しますよね。

固定金利なので、一度開設した口座は、金利が下がることはないのです。

※ちなみにアイルランドでは、固定金利であっても安定して毎月一定の金額が振り込まれないと、利率は少し下がります。3.5%の場合は2%程度に下がることも。そのため高収入のサラリーマンほど、高い利率を維持できるシステムなのです。

夫は、こうなることを大体予測しており、しかも子供が大きくなればなるほど出費が増えることを知っていたため、娘が2歳になるまでに、大学費用を貯めるプランを立てたのです。

見事、その予測はあたり、プランは成功しました。

とはいえ将来何が起こるか分からない時代、100%確かなことはありません。

つねに、プランB、プランCをリスクヘッジとして用意することが、大切なのです。

現在、アイルランドで利回りが高い国の保証付き債権はどれ?


ちなみに、私が知る限りでは、2020年現在アイルランドで一番利率が高いのが、アイルランドのゆうちょ銀行で購入できる「National Solidarity Bond 10年」で、利回り1.5%です。

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(参考:Ireland State Savings | https://www.statesavings.ie/)

リスクが非常に低く、所得税がかかりません。実は、この債権、100%国によって守られている債権なのです。

その上、1.5%は魅力的なので、近々、購入しようかなと思っています。最低、2000ユーロ~購入できるようです。(銀行のまわし者ではありません)

購入場所は、アイルランド在住の人は、郵便局です。アイルランドにも、日本でいうところの「ゆうちょ銀行」があり、そこに口座を開設すれば誰でも購入できるようです。

アイルランドに住んでいない日本人が購入することはできるのか、気になるところですが、そもそもアイルランドに住んでいる証拠がないと、口座を開設できないので、無理だと思います。

駐在員の方や学生などで、ビザがある人は問題なく購入できる可能性が高いです。

アイルランド国債の方は、2019年11月にA+からAA-にひとつ格上げされました。

景気も右肩あがりで伸びているので、イギリスのEU離脱の危機という不安材料があっても、購入者が増えて続けているようです。

しかし、あまり利率が高くないので、利益は少ないですね。


アイルランドの大学の授業料はいくら?

アイルランドの大学の授業料は、日本に比べると非常に安く、120万円あれば4年間分を十分に支払えます。しかも、教育のレベルが非常に高い。

安いので、アイルランドの大学でMBAを取得する日本人留学生もいるほどです。

賢いですよね。私もニューヨークではなく、コスパの高いアイルランドの大学に行けば良かったと、今では後悔しています。

今後、授業料が上がったらどうするの?

と心配される方もおられるかと思います。

大丈夫。そこは、年利12%の16年間分と、現在も私たちがコツコツと積み上げている分で、十分に補充できる予定です。

それでも、念のため、何かあった場合を想定して、備えておく予定です。

これが、まさに、私たちが、最初の2年間で娘の学費を貯金した理由と背景です。


実績を積むなら、結婚前がおすすめな理由


娘のために、私たちは2つのことをあきらめました。

夫は、歴史家になる夢を、そして私は画家の道を。

それは、容易い決断ではありませんでした。

今でも、美術館に足を運ぶと古巣に戻ったような気分になります。そして、悔しい気分にもなります。

それでも、私たちは幸せに暮らしています。

画家の道は、いつか娘が大きくなった頃に、また歩もうかと気長に構えています。

自分の目標達成だけを考えて生きてきた私が、このように考えれるようになったこと事態が、正に「幸せ(仕合わせ)」なのかも知れません。


古巣にいたら分からなかったこと

こちらには、こんな言葉があります。

"Get out of your comfort zone."

これは、直訳すれば、心地の良い場所から出なさい、という意味です。

自分が心地良いと感じる場所から出てはじめて、分かることもあるということ、そしてそれがその人の成長に繋がる、ということを示唆してくれる言葉です。

闘病生活と、その先に待っていた新たな展開

私は、2017年6月に、甲状腺癌を患い全摘出する手術を行いました。

幸い、早期発見だったのですが、発見のきっかけを作ってくれたのは、娘でした。

娘が暴れて私の首に頭をぶつけなければ、今でも甲状腺の異常に気づかず過ごしていたかもしれません。

その後も、度重なる治療の甲斐もあり、今では健康に過ごしています。

病気をしてから、ほんの少しですが穏やかに過ごせるようになりました。

手取り17万円だった夫がついに起業

2017年、私が手術をして数ヶ月後に、夫がホテル・コンサルやビジネス・コンサルとして起業しました。

ママ友の旦那さんに出会ったことがきっかけです。

ママ友の旦那さんと二人で起業したものの、最初は全く収益がでず営業にかけまわっていました。 

しかし、夫は、普通の人生を歩んでこなかったせいか、クリエイティブに物事を考える習慣を身につけていました。

それに、行動しなければ、ホームレスになるかも知れない、という緊張感。だから、ビジネスのアイデアも次々と浮かぶし、努力もできる。

持ち前のプレゼン力もあってか、今では、アイルランドだけでなく、英国の某老舗ホテルからも問い合わせが来るほどに成長しました。

まるで、夢のような展開ですが、彼の能力とこれまでの努力を思えば、当たり前の展開なのかもしれません。

私たちの生活はどれくらい変わったのか?

私たちの生活は、いまだに貧しいままです。

今まで住んでいたところが人気になって、不動産バブルになったため、家賃節約のために、今アイルランドで一番家賃が安い地域に引っ越しました。

それでも、なんとか「底辺」の生活からは、抜け出すことができました。

週に1回ぐらいなら、カフェでコーヒーが飲めるし、ジムにも行ける。38歳にして免許をとって、中古だけど、車も購入しました。

私も、フリーライターへ転身し、実績を積み上げ、その資金をもとにネイル講師を始め、自宅ネイルサロンを開業することができました。


貧困から抜け出して子供の未来を作るのは不可能ではない

最下層から抜け出すことは、想像絶するほど大変な事ではあるけれど、情報を取り入れ、先見の目を持って行動すれば、なんとかなります。

そして、できれば、自分自身とパートナーを信じて、支えあう関係を作る。

その積み上げが、自分たちの子供の未来を作っていく。

この記事を読んだ人が、そんな希望を抱いてくれたら、嬉しいです。


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