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それで、親って結局何すればいいんでしたっけ?東大卒現役ママ医師と語ってみた②

東大医学部を卒業し、現役医師でありながらママで著者でもある森田麻里子さんと、中国・マレーシア・オランダなど、海外を拠点にしながら活躍し続ける国際自由人の藤村が「学歴社会」や「バリキャリ女性」、「国際人の育て方」などについて語りました。シリーズ後編をお届けします。

前編はこちらから

森田麻里子:森田
藤村正憲:藤村

それって社会の損失では?男女平等って正しいのでしょうか

藤村:もりたまさんはキャリアもあり、ご結婚されてお子さんもいらっしゃるけど、社会の中での女性という立場に対して思うこととかありますか?

森田:あ~そうですね。出産した後に、医者として一番になるのはまぁ無理だなと思いました。子どもを育てるというタスクがあるから、長時間労働とか、勉強や訓練を時間的にたくさんするという努力はできない。

子どもを24時間他の人に預けるとか、別にやろうと思えばできるけど…それは私のやりたいことじゃないなって思った時に、違う道を探さなきゃいけないと思いましたね。

赤ちゃん

藤村:世の中のママさんて、学生時代の成績が良くても悪くても、キャリアがまず一瞬途絶えるんですよね。

森田:うん、そうですね。

藤村:100パーセント自分に対して努力できないっていうことが、子どもが巣立つまでずーっと続くわけじゃないですか。それはたぶんすごく大きなストレスですよね。

森田:ストレスですね。でも、それが違う行動をとろうと思うきっかけになる、というのはあるかな。

藤村:個人としてはそうか。ただ、ヨーロッパでは女性というだけで選択肢が少なかったり、キャリアが途絶えたりするのは社会にとって損失ではないか、という考えがおそらくあります。家族の中の役割だけでなく、もっと個人の特性や技能を考えてコミュニティの中で協力し合うというか。

森田:へー!そうなんですね?

藤村:そうですね、例えば男女差についても、現実として身体的なものや思考的な違いはあるんだということを受け入れて、差別ではなく区別して考えます。体格差、身長差なんて同性同士でもあるし、顔の造作、国籍、貧富…世の中にはいろんな違いがありますから。

森田:なるほど~!男女平等というよりは、性別どころかそもそもすべての人が違うという前提なんですね。

藤村:そうですね。子どもも、いろんな価値観の中で育つと、自分ではどうしようもないことが世の中にはあるということを認識できるので、相手と自分の違いを受け入れた上で自分の活かしどころを考えていきますね。

森田:あ~なるほど、そうかもしれないですね~。

藤村:でも日本の場合は、子どもの頃の評価基準が圧倒的に学業に振れているから、お互いの根本的な違いを意識することが少ないように思います。勉強すれば勉強できる、できないのは努力が足りない、という感覚がある。

森田:うーん、そうか。では親としてはダイバーシティ(多様性)を理解させておく、教えておきたいっていう考えが大きいですか?

藤村:教えるというか…子育てっていろんなスキル、例えば歯磨きとかを子どもに教えますけど、究極は一人で生きていく力を身につけて欲しい、というのがありますよね。

「一人で生きていく力」と考えた時に、世の中には色々な人がいて、自分のことを好きな人もいれば嫌いな人も絶対いるし、批判もされるし、やりたいことを100パーセントやれないこともある。

そういう、当たり前のことを知っておいてほしい。その中で、自分はどんな風に生きていきたいかを考える必要がある、ということを伝えたいと思ってますね。

子どもがゲームばかりでもいいの?そういう時は常に〇〇してます

森田:なんか今のお話を聞いて思ったのは、親としては結局、しつけと教育の境目をどこにするかというのが、悩みどころかなと思いました。基本的には本人にお任せする、したいという気持ちはあるけど、例えばじゃあ、ゲームをするとかだったらどうなのかな、とか。

藤村:お子さんがゲームばかりしていたらどう対応するか、ということですか?

ゲーム

森田:そうです。例えば小学1年生で「小学校行きたくない、ずっとゲームしていたい」って言われたらどうするか…いやぁ〜でも、それを認められる親になりたいと私は思ってるんですね(笑)

でも、頭というか思考では「これはOKなんだ」と思っても、ちょっと感情的には「ううっ。。」てなる気がします。

藤村:あっはっはっは(笑)

森田:うちの子供が最近iPadにハマってて、もう電車の動画ばっかり見ているんですよ。なんかそういうのを見ていると「ちょっとこっちの、もっと教育的な番組見たらどう?」ってすごい言いたくなる、っていうかまぁ言っちゃうんですけど。

いや〜でも彼が本当に見たいのは電車の動画なんだよな、っていうのはわかるので、すごく迷います(笑)

藤村:僕も子どもがいますけど、もう一緒に楽しみますよ?親が子どもの思考を否定する存在になりたくないし、逆に、なぜそれに興味を持ったのかとか、何が好きなのかとか、そういうのを全部説明させます。

森田:へぇ〜なるほど!!

藤村:人に聞かれると、漠然と何となく好きだったものを言語化するから、本人も好きな理由が明確になるし、本当に好きなものを自分で深掘りしていくようになりますね。だから今うちの息子、料理すごい得意ですよ。

森田:えぇ〜すごいですね!!え、小学校6年生ぐらいですよね?えぇ〜すごいですね〜!(驚)

藤村:パパそのやり方ダメって言われます(笑)

森田:例えば、何作ってくれるんですか?

藤村:YoutubeとかBuzzFeedとかで見た、食べたい料理を再現して作ってますよ。

森田:やっぱ動画なんだ(笑)読むレシピサイトじゃなくて、YouTubeとかを見るんですね?

藤村:そうそう。時代は動画(笑)

森田:すごいなー、現代っ子。感心しちゃいますね。じゃあ藤村さんは、未成年に対してもレールは敷かなくていいと思いますか?

藤村:そうですね〜。とは言いながら、なんだかんだ何が大切なのかっていうのは私たちも考えて、子どものために環境は作ってますよ。オランダに住んだりとかもそうですし。

森田:じゃあ、マレーシアとかオランダに行かれた際は、息子さんにお話されて、息子さんもそれを納得したということですか?

藤村:まず家族で視察に行きましたね。その時、アムステルダムの国立美術館で本物の芸術に触れたり、息子はサッカーが好きなので、彼にとって初めてのプロのサッカー試合を見に行ったりしたんですね。

そしたらやっぱり、もうすごいインスパイアされて。その時も、息子を観察しながらたくさん問いかけをしましたね。

森田:う〜ん、なるほど〜。

藤村:あと、子どもにとっては今の現状が楽しいから、変わりたくないってこともありますよね。そういう場合も、強制するのではなく問いかけをします。今だったらどういう生活?ここに移ったらこういう生活になりそうだけど、どう思う?って。

森田:親として選択肢を与えて、可能性を見せてあげる?

海外

藤村:そうですね。そういう実体験や自分で考える経験を通して、やっぱり本人が「オランダに行きたい」と思ったから同意してくれた。でもそうやって、子どものためにこちらが環境を用意したからといって「せっかくオランダに来たんだから〇〇しなさい」とかもないですよ。

森田:あくまで何をするかは息子さんご本人が決めるということですね。

藤村:そう、とにかく大切なのは本人に考えさせること。だからもう、常に問いかけしてますね。

日本の教育制度ってダメですよね?これからの子育てとは

森田:やっぱり子育ては海外の方がいいですか?

藤村:英語教育という話であれば、まぁこれは都市部限定かもしれないけど、日本にも外国人はたくさんいますよね。僕らの頃は考えられなかったけど、公立の小学校にも外国籍の人がいたりするし、英語教育をする機会は日本にいてもいくらでもあります。

森田:あ~~~~~~~そうですね~!

藤村:中には、日本の学校の制度が嫌だという人もいますけど、究極を言えばフリースクールっていう方法も、今はある。要は、親がどれだけ変化に対応できて柔軟性があるか?ですよね。

森田:んふふふ~そこですね~(笑)

藤村:僕がお会いする中には「日本の教育制度ってダメですよね?」っていう方結構いらっしゃるんだけど、僕は、今はそんなに悪くないと思ってますよ。

森田:あ~、まぁ質は高いっていうか、コストパフォーマンスは良い気がします。

藤村:た!だ!日本で国際感覚を身につけるには、色々条件はあると思います。親が外国語ができる、もしくは外国に対するリテラシーがあるっていうのはやっぱり必要。

外国人の友人を自宅に招いて、日本語以外の言語でやり取りしている姿を子どもに見せるとか。そういうことはやっぱり必要になると思います。だけど、決してもう海外に出ることがマストではない。

森田:あ~なるほど。

藤村:今だったら小学生から英語教育が始まっていますけど、子どもの頃から英語で情報を取れるようになっていれば、選択肢はだいぶ広がりますよね。まぁこれにはまず、日本語の言語能力を高めて、本やネットから日本語で情報を取れるようにしていきたいですけど。

今だったらカーンアカデミーなどの非営利団体が提供している教育系コンテンツや、海外の大学の講義を無料で聞けたりするので、英語で情報を取ることも親子で一緒にやっていけばいいですよね。

森田:うーん、そうですね。やっぱり英語が理解できるのは大きいですよね。

藤村:例えばマレーシアでは、IT企業がプログラミングの英才教育をして、いい人材を育成しようという目的でホームスクールを経営していたりします。

小・中学生にプログラミングを教えているんですけど、そこに行っている僕の知り合いの子は小学生だけど、彼らが使ってる教材ってMIT(マサチューセッツ工科大学)のものなんです。

森田:えぇ~すご~い!

ホームスクール

藤村:マサチューセッツの講義を、小学生とか中学生でもう理解してるんですよ。

森田:それは本当にすごいですね!びっくりです。

藤村:運営がIT企業だから、中学生くらいで会社のプロジェクトに参加している子もいるんですよ。こういう環境はやっぱり海外の方があるかもしれない。

森田:今のはマレーシアの話ですもんね、なるほど。でも時間の問題というか、誰かやる人がいれば日本でもできる話ですよね。

藤村:そうそう。昔は親が英語できなくても、とりあえず子どもを海外に連れて行って、なんとかいい教育、日本と違う教育を…っていう教育移住が主流だったと思いますけど。今は、親にそこらへんのリテラシーがあれば、日本国内でも全然同じような教育はできると思う。

森田:日本にいても選択肢は存在している、ということですよね。確かに親の力で日本でもどうにでもなる話ではあるかもしれない。

藤村:うん。と、思いますよ。あ!東大に行って、奨学金をもらって海外の大学院に行くのは良いかも。

子どもの反抗的な態度に辟易しません!親の在り方、関わり方

森田:キーワードは「ダイバーシティ」かな(笑)多様性のある環境を、いかに子どもに用意してあげられるか。

藤村:そうそう、そうですね。多様性のある環境を自分で用意する、もしくは親がもう、そういう社会で生きていくか。

例えば両親が医師の家庭でも、身の回りに違う分野の人がいたり、外国人の友達がいたりすれば、いずれ子どももいろんな選択肢を持っていろんな経験ができる。だから、親の意識ってすごく大切ですよね。

森田:いや~そうですね。本当にそうですね。選択肢を示してあげるとか、環境を作ってあげるっていうのが、親の大きな役割かもしれない。

藤村:あと、子供の意思をきちんと尊重してあげること。オランダとか、思春期の反抗期とかって本当に聞かないし…

森田:へぇ〜〜〜〜〜オランダでは反抗期ってないんですか?

藤村:思春期になると自分の部屋にこもって出てこない、みたいな話は聞かないですね。やっぱり受験勉強やスポーツだけやってる子どもが苦しくなったりするのは、きちんと自分で咀嚼して落とし込む前に、親から与えられて強制されるからだと思います。

森田:うーん、そっかぁ。。

藤村:うちの子は今11歳で小学校6年ですけど、子どももちゃんと考えていますよね。多分2、3歳ぐらいまでは言語的に正確に伝えるのは難しいかもしれないけど、十分意思はある。

大人が見切れてないだけで0歳でも、お腹すいたとか、寝たいとか、ぐずったりするのも意思表示だし。だから本当に、一人の人間として子どもをきちんと理解しようと接するのは大切だと思います。

森田:そうやって、一人の人間として接していると、反抗期がなくなるってことなんですかね?

藤村:自我が目覚める思春期に、承認欲求というか、自分が満たされていないという感覚が無意識にでもあると、周りに反発したくなるでしょうね。日々どれだけ親子がお互いを認めているか?っていうのはオランダではすごく大切にしてますね。

ティーン

森田:最初から一人の人間として認められてるから、自我が目覚める思春期に急に自立しようと反抗する必要はないってことですね。それは「海外」だからですか?個人主義が強い「オランダ」だから?

藤村:個人主義がしっかりしているオランダだからってのはあると思いますね。オランダの人は、小さい頃から親に認められて、自分は愛されていると感じているから、自己肯定感が高い人が多いですよ。

森田:そっかー!親に認めてもらっていることと、自己肯定感てやっぱりつながっているんですね〜。

藤村:小さい頃から自分がやりたいことに取り組んで、親もそれをやらせる環境を作って、放置するんじゃなくてきちんと問いかけをする、というのは大事ですね。ゲームだって、やりたいならずーっとやらせればいいと思う。その代わり、それで何を学んでるのか問いかける。

森田:そうですね!きちんとコミュニケーションをしていけば、親として「ずっとやらせてていいのかな?」という漠然とした不安も解消しそうです。

藤村:親子でも、一人の人間として認め合いながら、コミュニケーションしながら、いい関係を築いていきたいですね。東大卒じゃない人が東大に行きたいと言い、東大卒の人が海外の大学に行きたいと言い…今日は本当に面白かったです(笑)

森田:隣の芝生は青いっていう(笑)いやめっちゃおもしろかった、本当にありがとうございました!!

藤村:こちらこそ、ありがとうございました。

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もりたまさんプロフ

森田麻里子(もりたまりこ)
1987年生まれ。東京都出身。2012年東京大学医学部医学科を卒業後、医師になる。卒業後は亀田総合病院にて初期研修を修了し、その後、14年に仙台厚生病院、16年に南相馬市立総合病院の麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤医師として勤めている。赤ちゃんの夜泣きや寝ぐずりなどでお悩みのママ・パパをサポートするChild Health Laboratoryの代表でもあり、小児睡眠コンサルタントとしても活躍中。
著書に、「医者が教える赤ちゃん快眠メソッド」(ダイヤモンド社)、「東大医学部卒ママ医師が伝える 科学的に正しい子育て」(光文社新書)がある。


ふじむらさんプロフ

藤村正憲(ふじむらまさのり)
2002年より北京、香港・マカオ、マレーシア、オランダと移り住み、自身や家族に必要なものがある国に移動する「国境を意識しない生活」というライフスタイルを実践している。海外の経験を生かし、価値観が多様化する時代の生き方を講演や著作活動を通じて提案。主にビジネスや教育の分野で、日本と海外をつなぐ架け橋としてアドバイザー業務請負も行なっている。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選出。
著書に「国際自由人という生き方」(角川フォレスタ)「国際自由人」(IBCパブリッシング)「さあ、あなたも『世界一住みたい国』で幸せに暮らす計画を立てよう」(ゴマブックス)「生き残るためのコミュニケーション」(水王舎)

〈編集=ひろいうみ(@official_umi423)/ 画像はぱくたそ・Unsplushより〉

17年海外で経営をし、「AERAアジアで勝つ日本人100人に選出」2002年から北京→香港→マレーシア→オランダと拠点を移し、子どもと共に学びながら生きる。3/15に5冊目の著書 「世界で通用する最強の子育て」を出版