NASAがGPS分野でブロックチェーンに関心を持つ理由とは?
テーマ毎に海外企業の事例シリーズの第五弾!
今月は、
「モビリティ関連企業が取り組むブロックチェーンビジネスに関して」
をテーマに事例を紹介します。
今回はNASAの衛星通信の取り組みをユースケースにモビリティとセキュリティに対する考え方を整理したいと思います。
NASAとは
読者の皆さんもNASA(National Aeronautics and Space Administration)通称、アメリカ航空宇宙局に関してはニュースや新聞などで耳にした事がある方が多いのではないかと思います。
1958年に国家航空宇宙法に基づき設立され、アメリカ合衆国内の宇宙開発に関わる研究を担当する機関です。
現在はワシントンDCに本部を置き、各種プロジェクトを行う局と、管理を行う局が合わせて20存在しています。
1957年にソ連のスプートニク1号の打ち上げに遅れを取り戻すため、それまで陸、海、空軍がそれぞれバラバラに行なっていた宇宙開発研究を一つにまとめるために前身の国家航空諮問委員会(NACA)を母体に設立されます。
1961年から1972年まで実施されたアポロ計画は人類初の有人宇宙飛行計画で、全6回の有人月面着陸に成功しています。
1969年7月20日にはアポロ11号が史上初の月面着陸に成功し、月面を歩行して調査を実施することに成功しました。
(出典:Apollo 11 moon mission animated)
アポロ計画が終了、冷戦後ソ連が消滅して以降は宇宙開発予算が減少していく中で、2004年には新たに有人宇宙飛行に関連する計画(「コンステレーション計画」)を発表し火星を目指す新たな計画を打ち出します。
計画に関しては2010年に予算と計画の遅れから凍結を発表をする事になりますが、予算に関しては2011年度から2015年度までの5年間で60億ドルを増額する事になります。
以下の内容が今後注力していく分野の一部です。
国際宇宙ステーション(ISS)の運用期間の延長
予算の削減と雇用創出を目指した民間との技術開発協力
学生を対象にした科学・技術・工学・数学分野の教育プログラムの実施
将来の有人探査を見据えた太陽系の探査
今後は長期的な展望を見据えて宇宙科学分野の発展や、ビジネス展開など持続可能性のある仕組みへと展開を広げています。
衛星測位システムのビジネス機会と課題
全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)の活用マーケットに関しては全世界で2013年から19年の間で年率8.3%成長し、2023年までは年率4.6%成長が期待されています。
多くは私たちのロケーションサービス、交通や調査など幅広く活用が進んでいます。
(出典:GSA’s 2015 Report Dives Deep into Global GNSS Market)
航空や海運なども衛星通信が注目されている分野でさらにデータ量が拡大して行くだろうと考えられます。
一方でGPSの活用が進むにつれてスプーフィングと呼ばれるようなネットワーク・セキュリティの問題も今後注目されていくだろうと考えられます。
不正なデータを用いることにより本来の目的とは別の目的地へのデータの書き換えが勝手に行われるなどGPSデータをハッキングした事例も出てきており航空業界としては非常に懸念しているポイントです。
(出典:Demonstration of a Remote Unmanned Aerial Vehicle Hijacking via GPS Spoofing)
上の実験はアメリカのテキサス大学オースティン校で行なったものです。
変化する航空管理システム
2020年にアメリカの連邦航空局の指令によりADS-Bと呼ばれる現在の航空機監視レーダーとは別にGPSを利用したより正確な航空機の位置情報を管制室で管理する仕組みの導入が決定しています。
これにより航空管制と監視、パイロット状況認識を高めることができ、従来のレーダーより低い費用で、高い品質のトラッキングに期待が集まっています。
(出典:Demonstration of a Remote Unmanned Aerial Vehicle Hijacking via GPS Spoofing)
従来型のレーダーとの違いはこちらの動画を参考にしてみてください。
(出典:Safer skies with ADS-B)
NASAでのブロックチェーンの取り組み
ブロックチェーンを採用する理由としては主にスプーフィング攻撃のリスクと飛行機データのプライバシー保護の観点からという意図で考えられています。
(出典:ASA Eyes Blockchain Tech to Secure Aircraft Flight Data)
民間機や軍事用の航空機は飛行情報自体のプライバシーを保護することは非常に重要となるため新たなシステムを導入する際に対策が必要になります。
これまでのレーダーでの全体最適から航空機に照準を合わせた個別最適に移行する上で新たなデータ基盤を導入する必要があります。
更にGPSの情報を分散して比較的安全な環境で管理することが必要と考えられており、Hyperledger Fabricブロックチェーンを活用したインフラの導入が進んでいます。
ブロックチェーンを活用する理由
特にシステムの前提が大きく変化していく際には、データをより安全に管理するための基盤が必要になります。
NASAの取り組みでは大きくシステム変更によってデータの主体が変化した事が活用の検討に至った一つの背景になります。
飛行情報自体のプライバシーを保護する環境の設計
分散型で比較的安全な状況でのデータ管理
GPSなどの測位システムを活用する領域では、今後セキュリティとデータプライバシーの観点から検討してみるのも一つの考え方になります。
新規事業で参考にしてほしいポイント
今回のケースでは以下のような事業を展開している企業の方にも応用ができると考えています。
GPS情報を活用した個人の行動データを活用するビジネス
位置情報を活用したリッチ情報をプライバシーを担保した上で活用したい
この他にも様々な分野で応用できる分野はあると思うので、是非事業を考える上で参考にして頂けると幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございます!次回をお楽しみに!
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