Googleが直面するビジネスモデルの限界と広告業界への影響
Googleがデータの公開を制限するというニュースは業界にも大きな影響を与える発表になりました。
特にサードパーティと呼ばれるCookieを活用している企業にとっては、ビジネスモデルを考え直す必要が出てくる可能性もあります。
そんな中GoogleはCookieの公開に変わって、新しいソリューションを提供すると発表しています。
新しいソリューションは果たして広告関連の企業にとって吉と出るのか、それとも凶と出るのかを紹介します。
GoogleのCookie廃止問題とは
以前から噂はされていたCookieに関する問題は、今年に入って具体的に発表が行われました。
このように情報公開に制限をかける動きに関しては、Appleが2017年6月5日に開発者向けのカンファレンスで「Intelligent Tracking Prevention」と呼ばれる機能を発表するなど既に兆候は始まっていました。
Appleの「Intelligent Tracking Prevention」に関しては後程対比でも紹介しますが、リターゲティング広告などに大きな影響を与えることになります。
Googleが今年になってCookie廃止を発表したことによって、これまで積み重ねてきていた広告分野でのビジネスモデルに関しては新たな見直しが行われ始めています。
以前、記事を通じてGoogleがCookie廃止に至った理由を紹介しました。
Cookieの廃止に関しては業界的な流れとしてプライバシーを懸念する声が広がっていたことと、GDPRによる個人情報保護の影響、そしてカリフォルニアで今年始まったCCPAによる影響が最終的には決断に結びついたのではないかと考えられます。
GoogleサイドとしてはCookieを廃止すると発表は行いつつも、ビジネスモデル上新しいソリューションを提供する必要はあり、現在は実装に向けての開発が進んでいる状況です。
Googleが提案するCookieに変わるソリューション
昨年8月22日にGoogleはユーザーのプライバシー保護を前提とした、広告配信の新しい取り組み「Privacy Sandbox」を発表しています。
AppleやMozillaが率先して行なっていたプライバシー保護の取り組みによる影響が非常に大きく、パブリシャーサイドの収益減に影響しているためというのが大きな方向性です。
Googleとしては総収入の84%を占める広告ビジネスを縮小させたくない狙いもあり、プライバシー保護を前提とした新しい取り組みをスタートする理由もうなづけます。
Googleクロムブログでは「Privacy Sandbox」に関わる具体的な取り組み関して触れられています。
広告の選択
プライバシー保護の観点からユーザーの閲覧情報提供を最小限で適切な広告掲載ができるような仕組みを進めています。
・Differential Privacy
マイクロソフトが初期に進めた取り組みで、興味を元にグループ化することで個人を特定することが難しい状態にした上で、回答データの近似値を取ることができる仕組み。
・Federated Learning
これまでのデータをサーバーに集めてAIで処理する方法とは別にユーザーが利用するスマートフォンなどで計算処理を行い、その計算モデルを集めて新しいモデルを生成するというもの。
個人情報は共有されず、モデルのみ共有される。
コンバージョンの測定
これまで測定していた物を買う、広告をクリックする、サイトを閲覧するなどのコンバージョンはプライバシー保護の観点から見直しが必要になります。
コンバージョン結果としては、広告主が記録するメタデータで、広告掲載サイトURLやレポートURL、その他インプレションと呼ばれる特定のIDなどが上げられます。
広告のコンバージョンにおいてはユーザーの特定ではなく、コンバージョンが発生した事実を確認できれば良いため以下の手法での見直しが考えられています。
Privacy Preserving Ad Click Attribution
これまでは個人を識別してコンバージョンの計測を行っていましたが、新しいモデルでは個人を識別せず購入が起きた事実を共有する仕組みを進めています。
(出典:Privacy Preserving Ad Click Attribution For the Web)
1、広告掲載サイトから商品サイトへ広告をクリックして移動が行われた際に、掲載サイト情報、広告キャンペーン情報のみを識別して記録される
(出典:Privacy Preserving Ad Click Attribution For the Web)
2、発生したコンバージョンがどのようなアクションを最終的に要求していたのかをクリック側の広告と照らし合わせて検証します(カートに入れるなど設定したコンバージョンから計測)
(出典:Privacy Preserving Ad Click Attribution For the Web)
3、検証を通じてコンバージョンが発生したリンクと照合された場合、24 〜 48 時間内にランダムに広告でコンバージョンが発生したと通知を行います。
詐欺広告対策
詐欺広告や詐欺のトランザクションなどはプライバシーの観点からも非常に問題視されており、解決が急がれる分野です。
取り組みとしては以下の要素を開発することで解決策の検討を進めています。
Privacy Pass
ゼロ知識証明と呼ばれる要素を活用して、匿名のままで個人をトラッキングせずに情報を開示できる仕組みの開発を進めています。
個人を特定しない場合Botからの広告の処理を見分けることにコストがかかっていましたが、その課題に対して技術的解決を目指しています。
Googleが考える解決策は果たしてプライバシーを守ることができるのか?
ここまでGoogleが取り組む解決策に関していくつか紹介してきました。
GDPRやCCPAなどの個人情報に関連した法律に則した形で、広告モデルを拡大していくことがGoogleの狙いです。
注目すべきは、Googleの掲げる対策が果たしてユーザープライバシーに適切に対処しているのかが焦点になります。
ここからはElectric Frontier FoundationのBennett Cyphers氏の記事を参考にしてプライバシーの観点から懸念されるポイントを見ていきたいと思います。
コンバージョンの測定に関して
コンバージョン測定に関しては氏の記事でも取り組みとしては非常に評価できると発表されています。
ここではAppleが取り組んでいる「Intelligent Tracking Prevention」を引き合いに出してGoogleも同じような取り組みを進めようとしている点に関しては良いと見解を行なっています。
「Intelligent Tracking Prevention」に関して説明すると、サイトを横断したトラッキングを防ぐために提供されるトラッキング防止機能のことを言います。
これによってリターゲティング広告に非常に大きな影響を与えてきました。
重要な点としては、ユーザーがサイトを利用する頻度に応じてユーザーの閲覧記録に関しての情報取り扱いが大きく変化するという点です。
(出典:Intelligent Tracking Prevention 2.0)
現在は2019年に発表された2.3までアップデートが進んでおり、ユーザーが閲覧して実際にどのような経路をたどったのか(アトリビューション)に関すして徐々に体験ベースへと重要性が変化しつつあります。
本題に戻りますが、氏は指摘しているポイントとしてはImpressionデータに関して個人を識別できる可能性があるのではないかという点です。
Appleでは1から64字で6ビットの広告キャンペーンIDと制限しているのに対して、Googleの場合は64ビットで1から1京までと幅が広いため、広告キャンペーンIDの中に個人を特定する情報を組み込めるのではないかという懸念を示しています。
広告の選択に関して
問題として上げられているのはDifferential Privacyにおける興味別にグループを分ける作業で、グループ名の割り振りによっては個人のプライバシーに大きな影響を与える可能性があります。
分けられたグループの関心が非常にセンシティブな情報であった場合になど解決するべき課題は残されています。
さらにFederated Learningを通じてユーザーごとに分類を行なった場合に、少数グループであれば一定程度の特定が行われる可能性があります。
Googleが直面するビジネスモデルの限界と広告業界への影響
これまでの広告モデルはユーザープライバシー以上にパブリケーションに重きを置いた設計になっていました。
Gizmodeの記事ではGoogleのビジネスモデルに対しての限界を説明しており、広告モデル以外のビジネスを生み出していくことがGoogleだけでなく、Facebookなどの大手企業に求められる変化だと考えられます。
さらに、GAFAなどのテクノロジー大手のポリシー変更によりデジタル広告業界はさらに大きく引きづられることになると考えられます。
(出典:US Digital Ad Spending 2019)
さらに個人情報に関する規制の問題は各国で活発に議論が始まっており、アメリカ、欧州だけでなく各地域へと大きく飛び火しています。
今年は個人情報の変化に伴い新しいビジネスのタネが生まれてくる可能性があるので、引き続き動きは要チェックです。
※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。
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