まりりん

文章に関する仕事もしていて、読んだり書いたりが好き。 日常の思いを綴ってみようと思いま…

まりりん

文章に関する仕事もしていて、読んだり書いたりが好き。 日常の思いを綴ってみようと思います。

最近の記事

おそるべし、メディアミックス――かくて私も『三体』にハマる  その2

…さて、10月初旬に『三体』ドラマ1話から10話までをWOWOWで見たあとにKindleで原作の日本語版を読み始めたことを、11月初旬に報告した(「その1」)。 その後11月初旬に11話から20話までが放送され、18話までは録画を視聴(今回はじっくり等倍速で再生しているので時間がかかっている)。そして11月20日現在、『三体』原作3部作のうち第1作を読了。つまり、ドラマ11話から18話までは、原作を読みながら並行して見ていたことになる。 原作の三分の一以上は読み込んだ後で

    • おそるべし、メディアミックス――かくて私も『三体』にハマる  その1

      【*下記は11月3日に書いたものです】 話題のSF超大作としてもう何年も気にはなっていて、でも三部作(しかも2作目と3作目は上下巻)と長いし、訳書が出てから4年経っても全然文庫版にならないし、中国小説は人名の漢字が馴染みが無くて難しそうという先入観もあって、なかなか手を出せずにいた『三体』。 でもWOWOWで中国で制作された連続ドラマが放送されると知り、せっかくなのでこの機会につまみ食いしてみよう、と録画してみた。どうせ本を読まないなら、せめて映像で知っておこう、と。ところ

      • 映画「長崎の郵便配達」の公開直前に『ナガサキの郵便配達』を読み終えた

        書籍『ナガサキの郵便配達』との出会い 数年前にある年上の友人から、「あなたに読んでほしい」と、1冊の素敵な装丁のハードカバーの本をいただいた。彼女の古い友人である編集者が、心を込めて作った本なのだという。『ナガサキの郵便配達』(2018)。どうやら原爆に関係する話らしい。 実はちょうどその頃、私の長崎への関心が急速に高まっていた。ただしそれは原爆に関してというわけではなく、宗教弾圧と潜伏キリシタン、「信徒発見」などのキリスト教に関する歴史と、当地出身の英国人ノーベル賞(2

        • 消しゴムをくれた女子に恋をする話が出てくる『女のいない男たち』(村上春樹)

          「僕に消しゴムを半分くれた女の子」というモチーフ 7月から始まるドラマの特集記事を見ていて、ジャニーズのだれそれくん主演で「消しゴムをくれた女子を好きになった。」というドラマが始まるらしい、ということを知った。どうやらその"女子"は、主人公の男子中学生に、半分に割った消しゴムをくれて、そこから恋が始まるという話らしい。原作はライトノベル、でも、もとはネット掲示板に綴られた実話だそうだ。 で、それを知って私が驚愕したのは、カンヌやオスカー受賞の話題映画「ドライブ・マイ・カー

        おそるべし、メディアミックス――かくて私も『三体』にハマる  その2

        • おそるべし、メディアミックス――かくて私も『三体』にハマる  その1

        • 映画「長崎の郵便配達」の公開直前に『ナガサキの郵便配達』を読み終えた

        • 消しゴムをくれた女子に恋をする話が出てくる『女のいない男たち』(村上春樹)

          イギリスの家には名前がついている~『Moonflower Murders(ヨルガオ殺人事件)』を読んで~

          アンソニー・ホロヴィッツのベストセラー『Magpie Murders(カササギ殺人事件)』に続いて、その続編である『Moonflower Murders(ヨルガオ殺人事件)』を、オーディブルとキンドルの合わせ技で読了。 ウォーキング中・料理中・草抜き中はオーディブル、就寝前や電車内ではキンドル、家でゆっくりできるときは両方使って聴きながら読むという、TPOに合わせたハイブリッド読書でスピードアップできました。(ただそのせいで他の本との並行読みは困難に…ww) さて内容は何

          イギリスの家には名前がついている~『Moonflower Murders(ヨルガオ殺人事件)』を読んで~

          『Magpie Murders (カササギ殺人事件)』の「magpieマグパイ」とは?

          手に取らないで耳に入れ、最後はデバイス2つ持ちで 本屋で平積みにされた、その赤と青の上下巻からなるベストセラーの文庫本を、ここ数年でいったい何度手に取ったことだろう。そして何度そのまま、そっと戻したことか。数々のミステリー文学賞、そして本屋大賞(翻訳書部門)で1位を総なめにした『カササギ殺人事件』。面白くないはずがないのに、なぜ今まで手に取らなかったのか。ひとつには、上下巻というその長さに若干恐れをなし、同時に家で積ん読状態にある本の山が脳裏をよぎったからだろう。 そうし

          『Magpie Murders (カササギ殺人事件)』の「magpieマグパイ」とは?

          『天上の葦』(太田愛)読み終えたのが、あまりにタイムリーだったので…

          今日このような日に…いや今日だからこそ、一昨日読み終えたこの本を、皆さんに紹介します。 ミステリーです。エンタメです。夜寝る前に読んじゃいけないやつです。(毎晩読んでたけど💦何度も夜更かしして寝不足になったけど😅) でもそれだけじゃない大きなものを、伝えてくれる本でした。何を書いてもネタバレになってしまうので、「騙されたと思って、読んでみて!」とだけ、言っておきます。 太田愛さんのこの本は、修司、相馬、鑓水、のでこぼこトリオが活躍する、三部作の最終話。長らく「相棒」や「

          『天上の葦』(太田愛)読み終えたのが、あまりにタイムリーだったので…

          "Where the Crawdads Sing"(『ザリガニの鳴くところ』)

          約2か月かけて、オーディブルで英語バージョンを聴き終えた。もともと12時間ぐらいの比較的長い作品を、さらに2割ぐらい速度を落として聴いたので、約15時間。1回のウォーキングで聴けるのはせいぜい30分で、このところ忙しさと体調不良もあり、2カ月かかってしまった。 ご存じ、2021年度「本屋大賞」翻訳小説部門で第1位に輝いたベストセラー本。湿地で孤独に育った少女をめぐるミステリーということだが、不審死事件の解明より、彼女がこの先どう育つのか、そもそも人間として生きていけるのか…

          "Where the Crawdads Sing"(『ザリガニの鳴くところ』)

          『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 ――こうしてわたしはオーディブルに負ける

          時空の覇権を争う二大勢力《エージェンシー》と《ガーデン》の工作員は、あらゆる時代と場所に介入し、自陣に有利な未来を作り出すべく永い暗闘を続けていた。ある平行世界で二つの巨大帝国を壊滅させるミッションを成功させた《エージェンシー》の工作員レッドは、作戦遂行中ずっと、本来ならそこにいるはずのない敵の存在を感じていた。そして、激闘を終えた静寂の中で、《ガーデン》の工作員ブルーからの手紙を発見する――思いがけず文通を始めた彼女たちは、やがてお互いを好敵手と認めあうようになるが……ヒュ

          『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 ――こうしてわたしはオーディブルに負ける

          イアン・マキューアン5作の初読と再読と積読と未読を巡るこの夏の記録

          1『Machines Like Me』(『恋するアダム』)2019年朝、ウォーキングのお供にアマゾンのオーディブルで小説を聴き始めて7カ月。ふと、昔数冊読んだことがあったイアン・マキューアン(Ian McEwan)の作品は無いかと探してみたら、2019年に出た新刊が目に留まった。『Machines Like Me』(邦題『恋するアダム』)だ。 カズオ・イシグロの『Klara and the Sun』(『クララとおひさま』)を読んだところだったから、同じくAI搭載の人型ロボッ

          イアン・マキューアン5作の初読と再読と積読と未読を巡るこの夏の記録

          20年目の今日だからこその、 『グラウンド・ゼロからの祈り』 (ジェームズ・R・マグロ―)

          『グラウンド・ゼロからの祈り』とはニューヨーク世界貿易センタービルの跡地、「グラウンド・ゼロ」と呼ばれるようになったあの場所からほんの数ブロック離れたところに、アメリカ最古のメソジスト教会「オールド・ジョン・ストリート・合同メソジスト教会」があります。ビルの狭間で守られ無傷だったその教会は、あの大惨事のあと、救出活動に携わる人々、来訪者、ウォール街関係者のための避難所、情報収集拠点、そして精神的なケアを提供する拠点となりました。 当時この教会の牧師だったジェームズ・R・マグ

          20年目の今日だからこその、 『グラウンド・ゼロからの祈り』 (ジェームズ・R・マグロ―)

          ポール・オースター「Man in the Dark」(2008)が、今日読み終えるのにあまりにタイムリーで、驚いた話

          Man in the Dark (闇の中の男)――。ちょっとミステリアスな題名だけれど、なんのことはない、一人の不眠症の老人が床の中で眠れぬ夜を過ごしている、ただそれだけの話である。彼の一人語りが延々と続く、地味と言えば地味な話だ。 でも、実はこの老人、自分に向かって物語を綴って聞かせている(頭の中で)。その話がスリルとサスペンスに満ちたSF的な世界の物語なのだ。 舞台は――イラク戦争が“起きなかった”、現代のアメリカ。俗に言う、パラレル・ワールドである。しかもイラク戦争

          ポール・オースター「Man in the Dark」(2008)が、今日読み終えるのにあまりにタイムリーで、驚いた話

          奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』を巡る一考察

          本作への敬意を体現すべく試みる吾輩の諸事情について「吾輩は猫である。名前はまだ無い。吾輩はいま上海に居る。」 明治の文豪夏目漱石代表作の冒頭を模して斯様な文章にて始まるのが、我らが平成の文豪奥泉光先生の初期の名作『「吾輩は猫である」殺人事件』である。初版単行本は平成八年、西暦で云えば一九九六年一月、つまり丁度四半世紀前に世に放たれた。四半世紀と云えば、赤子が成人し立派な社会人へと成長するに充分な時間である。何を隠そう斯く云う吾輩自身、亜米利加は西海岸に逗留して居った当時、彼の

          奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』を巡る一考察

          雑草を抜くという営みについて、五月の朝に僕が思うこと

           朝六時半、真新しい半透明のゴミ袋を手に、つっかけを履いて玄関から外へ出る。昨夜の雷雨が嘘のように晴れ上がり、澄んだ空気がひんやりと肌を刺して心地いい。  前日の続きで、家の周囲の雑草を抜く作業を始める。  最初は四日前、通りに面した生垣の下生えの草を抜き、落ち葉と共に掃き清めた後に、玄関へのアプローチを覆っていたドクダミを、跡形もなくきれいに引っこ抜いた。翌日は玄関から家の裏手にかけて砂利が敷き詰められた部分を制覇。雨の朝はパスして、昨日は生垣の内側の日陰で手ごわい奴ら(シ

          雑草を抜くという営みについて、五月の朝に僕が思うこと

          海外で高評価!日本人女性小説家の作品を“聴いて”みた~柳美里、川上未映子、小川洋子、多和田葉子、村田沙耶香~

          毎朝の新習慣、「聴く読書」最初の緊急事態宣言が出た昨年4月に、朝の30分ウォーキングを始めた。11月にはアマゾンの「オーディブル」を知り、以来、歩きながらの「聴く読書」が習慣になった。 ちょうどその頃に新聞で、日本人女性作家たちがここ数年、海外(主にアメリカ)で次々と受賞したり推薦図書に選ばれたりと評価されていることを知り、いったいどんな作品が海外でウケているのだろうと興味がわき、英語版を聴いてみることにした。 それから約4カ月で、読了ならぬ聴了(?)したのは、以下の6作

          海外で高評価!日本人女性小説家の作品を“聴いて”みた~柳美里、川上未映子、小川洋子、多和田葉子、村田沙耶香~

          アメリカで起きているアジア系への差別を見て感じたこと ~ウィルス・真珠湾・ミサイルと、罪なき人々への理不尽な仕打ち~

          アトランタとニューヨークの事件今月中旬、米国ジョージア州アトランタでマッサージ店3カ所が銃撃され8人が死亡、その多くがアジア人女性だったという事件があった。今朝もニューヨークでアジア系女性が激しく蹴られて重傷を負った。 アメリカでは今、アジア系アメリカ人へのヘイト(憎悪)行為が続いている。昨秋から娘がアメリカに留学している私も、他人事ではない。 アジア系の人たちはこれまでアメリカ社会の中でもひっそりと暮らしてきて、差別に耐えてきた。それが今、新型コロナウィルスは中国武漢か

          アメリカで起きているアジア系への差別を見て感じたこと ~ウィルス・真珠湾・ミサイルと、罪なき人々への理不尽な仕打ち~