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アメリカで起きているアジア系への差別を見て感じたこと ~ウィルス・真珠湾・ミサイルと、罪なき人々への理不尽な仕打ち~

アトランタとニューヨークの事件

今月中旬、米国ジョージア州アトランタでマッサージ店3カ所が銃撃され8人が死亡、その多くがアジア人女性だったという事件があった。今朝もニューヨークでアジア系女性が激しく蹴られて重傷を負った。

アメリカでは今、アジア系アメリカ人へのヘイト(憎悪)行為が続いている。昨秋から娘がアメリカに留学している私も、他人事ではない。

アジア系の人たちはこれまでアメリカ社会の中でもひっそりと暮らしてきて、差別に耐えてきた。それが今、新型コロナウィルスは中国武漢から来たという理由で、アジア系の人々がみなひっくるめてヘイトの対象になっている。

その現状は、BBCのこちらの動画(地下鉄でいきなり顔を切り付けられたという男性など、アジア系への嫌がらせが増えているという話=日本語字幕つき)でも語られている。

一方こちらの動画の男性は、アジア系アメリカ人の退役軍人。見た目から「お前はアメリカ人ではない」と言われ続け、差別され続けてきたという。けれども従軍中に受けた傷痕を議会で見せて、「これで十分『愛国的』と思ってもらえるか?」と問う。その生々しい傷痕は、見る側の心にも、ずきりと切り込んでくる。

愛国心と「アリージャンス(忠誠)」

「愛国心」はアメリカでは特に重要な概念なのだと思う。多様なルーツを持つ、肌の色も宗教も言語も多様な人々が、一つの国としてやっていかなくてはならないから、星条旗のもと「アメリカ合衆国」という国に対して「忠誠」を誓う。

私も数十年前に1年間だけアメリカの公立高校に通った際、毎朝クラスメートたちが左胸に右手を当てて唱える「Pledge of Allegiance(忠誠の誓い)」を聞きながら、自分はどうしたものかと迷いつつも、なんとなく真似をしていたのを覚えている。

そしてこの「忠誠」は、第二次世界大戦中、真珠湾攻撃の後に西海岸在住の日系アメリカ人たち約12万人が、一斉に中西部の荒野にある「強制収容所」に送られたという史実にも、大きな関係があることを最近知った。

今月、ひとつのミュージカルが東京で上演された。『アリージャンス~忠誠~』という、日系人俳優ジョージ・タケイ氏の実体験をもとに作り上げた作品(2015)の日本語上演版で、第二次大戦前後の日系人たちの苦悩の実話が綴られている。

(作品の詳しいストーリーはこちらを参照⇒
https://horipro-stage.jp/stage/allegiance2021/#story)

この舞台を見て衝撃だったことの一つは、日系人たちが収容所へと送られていくときに、一人一人につけられていた「名札」。それには、よく商品や荷物に結わえ付けられる「荷札」が使われていた。同じ人間としてではなく、「モノ」として、何をされてもいい存在として見られていたことが、象徴的に示されていると感じた。

そしてもう一つ。収容された日系アメリカ人たちの一部は、日本の天皇ではなくアメリカ合衆国に忠誠を誓っていることを示すために、自ら志願して米軍に加わる。それも日系人だけから成る部隊を編成させられ、ヨーロッパ戦線の最も危険な場所へと送り込まれるのだ。この日系人部隊は、大戦中最も死傷し最も勲章を得たという。

そこまでして、日系アメリカ人たちは、アメリカという国に忠誠を誓った。それほどまでに差別されていた。そして、そこまでしても、まだ差別は続いた。前述の、傷痕を見せたアジア系退役軍人の男性も、似たような状況だったのかもしれない。

どんな集団も、場所によってはマイノリティになる

日本人も、他国に行けばマイノリティとなり、差別される対象となる。理不尽な暴力を受け、罵声を浴びせられたりする。その辛さ苦しさを知ると、同じ民族として痛みを感じる。

その痛みを持ちつつ、今度は、日本で起きているマイノリティ差別を考えてみる。特に朝鮮半島系の在日コリアンの人々は、長年差別とヘイトに苦しんできた。北朝鮮がミサイルを発射するたびに、朝鮮学校の生徒や関係者にヘイトが向けられるという。つい先週のミサイル発射の直後も、そうだったと聞いた。

真珠湾攻撃が日系アメリカ人のせいではなく、コロナ禍がアジア系アメリカ人のせいではないのと同じで、北朝鮮のミサイル発射は朝鮮学校の生徒たちのせいではない。

日本人は常にマジョリティではない。日本人がマジョリティなのは、日本の国土の中だけだ。外国でマイノリティになった時、どんな差別を受けるのか。それがどんなに理不尽で辛いことなのか。その痛みを感じたら、同じように自国内で差別に遭っている人たちの痛みがわかると思う。

ヘイトに立ち向かうデモ行進

残念ながらアジア系へのヘイトが増加しているアメリカだけれど、この国のいいところは、こうした動きに対してすぐに市民が立ち上がって、当事者以外も一緒になって、デモ行進などで声を上げるところだ。Black Lives Matterと同様、「Stop Asian Hate」と多くの人が声を上げてくれている。

当事者が抗議するだけでなく、周囲の人々が声を合わせて共感と連帯を示すことが、社会を変える大きな力になる。私は、日本にいるマイノリティの人たちと共に声を上げることができるだろうか。デモに参加することは、ちょっと勇気が要る。でもSNSでシェアしたり、Change.orgで署名をしたりだったら、できるかもしれない。

ちなみに、あの世界のBTSも、アジア人ヘイトに対して声明を出したとのこと。こうして有名人が態度を示すことも大きな力になると思う。

自分もいつマイノリティになり、標的になるかわからない。今アメリカで起きていることは、それを教えてくれた。だから、日本にいるマイノリティの人々への差別とヘイトクライムも、見て見ぬふりをしていてはいけないなと思う。


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