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夫婦揃って海外ノマド・リモートワーカーとして過ごした3年間の振り返りと8つのチップス。

完全リモートワークが日常となりつつあるコロナ禍の現在。夫婦・カップル揃って家で仕事をしている人も多いと思う。

東京でフルタイムで働いていた私たち夫婦は、2018年に同じタイミングで会社を辞めて独立し、そこから今まで、北米・中南米・日本・台湾・ヨーロッパなどを転々としながら、リモートワーカーとして生業をたててきた(現在はオランダ・アムステルダム)。「どうしているの?」と最近よく聞かれることが多いので、興味がある方へのティップスを備忘録も兼ねてご紹介したい。

筆者:都市・建築・まちづくり専門編集者、リサーチャー、キュレーター杉田真理子(Instagram / Twitter

そもそもの前提

私:日本人 / 30代 / 編集・リサーチ系の仕事 / 日本とヨーロッパのクライアント中心
夫:アメリカ人 / 20代 / デザイナー・ディベロッパー / アメリカと日本のクライアントが中心

前提として、我々夫婦は子なしのため、子連れ家族のケースとは大きく異なること、また、コロナウイルスによる渡航制限の影響で、今現在可能なケースとは異なる部分も多いことはご了承頂きたい。

フリーランスとして独立したと同時にリモートでの仕事をはじめて、2人とも4年目に突入したばかりだ。場所によってオンサイトでの仕事も柔軟に受けつつ、アムステルダムに住む現在は2人とも完全リモートで生計を立てている。

フリーランスの定めで、仕事量は時期により大きく異なる。一方がほぼフリーな月もあれば、2人揃ってフルタイム時代以上の仕事量を睡眠時間を削ってあくせくこなす時期もある。

年収は、独立2年目あたりでどちらも東京でのフルタイム時代を上回った。どちらもそれなりの貯金があるので、依頼が少ない月も特に焦らないことが多い。

私たちの今までの軌跡

東京でのフルタイムの仕事を辞めたときは、数ヶ月は収入なしで生計を立てられるくらいの貯金だけは確保していたが、フリーランスとしてきちんと生計をたてられるほどの計画はたてていたかというと、それは嘘になる。

修士をとったベルギーの大学の案件で、北米で都市・まちづくり関係の団体やトレンドを取材調査・レポーティングする仕事を受けたのをきっかけに独立を決意したのは良いものの、他のクライアントの確保やワークスタイルの確立は、やりながら手探りで確立した。

独立と同時にカナダのワーキングホリデー ビザを取得し、今の夫と2人でまずはアメリカへ。テキサス州で車を購入し、西海岸の主要都市を数週間単位で移動をしながら仕事をする生活が始まった。この時の出会いがその後のフリーランスの仕事に繋がっていることが多く、途中滞在したサンフランシスコでのカジュアルな打ち合わせが、その後夫の長期の契約に繋がったりということもあった。

1年ほど中南米を含むアメリカ大陸で過ごしたのち、日本に帰国して今後は東京ではなく京都に住むことにした。

辿り着いたのは、根無草の「完全ノマド」よりも、メインの「ホームベース」を基点とした多拠点生活

たった1年とはいえ移動の多い生活にすっかり疲弊してしまった私たちは、「ホーム」をつくりたいという願望を持って京都にやってきた。2019年から、町家を自分たちで改修して暮らしながらコミュニティスペースとしても開放する「Bridge To」をオープン。1年の半分ほどは海外のどこかに出向いて仕事をしつつ、この家に必ず帰ってくるという多拠点居住の核となる「ホームベース」をつくった。日本にいない間は誰か他の人に住んでもらいながら、活動の拠点を広げることで自分たちの視野を常にフレッシュに保っておくこと、プロジェクトの新しい種を沢山巻くことを目的に多拠点でのリモートワークをこれからも続けていきたいと思っている(もちろんコロナ禍の現在はしばらく移動休止)。

海外リモートに興味がある人へのティップス

以下、夫婦揃っての海外リモート生活で学んだことをまとめてみた。

1. クレジットカードや保険はノマドに嬉しいサービスが増えてきた

私は日本円とユーロ、夫は日本円とアメリカドルで稼いでいるので、夫婦で3通貨を普段から扱う。

海外送金には「TransferWise」、口座とクレジットカードは「revolut」と「N26」のダブル使い。複数通貨を一つの口座で管理できたり、バーチャルカードを発行できたりと、いちいちサービスが複雑な日本の銀行よりも使い勝手が良い。日本の銀行は海外在住でも使用できる三菱東京UFJ。そもそも日本の住民票を抜くと自動的に使えなくなる日本の銀行は多いので、日本のカードと口座だけに頼らない方が良い。

保険は、ノマドワーカーのためにデザインされた「Safetywing」が圧倒的におすすめ。ノルウェーのスタートアップが提供する海外旅行保険で、健康保険のみのベーシック保険であれば月5000円程度で加入できる(コロナも保険適用内となっているのでさらにおすすめ)。サービスのUIもしっかりしていて説明規約もクリアなので、ベーシックの英語力さえあれば問題なく使える。数十万円する日本の海外旅行保険を選ぶ理由は、正直もうない。

2. 税金やビザの手続きは思っている以上に大変なので常に勉強しておく

日本と海外を行ったり来たりする場合、国際結婚の場合などは特に、ビザはもちろん納税や年金システムについてかなり詳しくなっておかないと損をすることを学んだ。

例えば住民税。4月頃に東京の仕事を辞めて引っ越した後、翌年カナダに住んでいた時に、結構な金額の住民税の請求書が実家に届いて、「住んで無いのに払うんか!」と衝撃を受けたとことがあった。調べると、住民税は前年度の売り上げに対して翌年払うものなのでしょうがないとのこと、ただ、1月1日までに住民票を抜いて海外に渡航していたら、払う必要はなかったことを知った。こういう例は沢山ある。一方で、脱税だけは絶対にすべきでは無いから(未納のものが少しでもあると夫の日本滞在ビザに影響する)、滞在期間や納税義務のある場所の制度をよくよく調べたうえで、払う必要の無い無駄な出費はスマートに削りつつ、納税に対しては絶対にルーズにならないようにしている。

ビザに関しては、私たちが使用したものは以下↓

・カナダ:ワーキングホリデー ビザ
・アメリカ&中南米:観光ビザ(3ヶ月以内)
・台湾:観光ビザ(3ヶ月以内)
・ヨーロッパ:観光ビザ&フリーランスビザ (オランダ)

3. 現地での友達は前のめりにつくるべき

せっかく知らない土地で仕事をするのだから、一日家に籠もって日本でも出来る仕事だけをしていても正直意味がない。私は職種柄、インタビューを依頼して話を聞くことで友達になり、一緒に食事をしたり、そこから他のプロジェクトに発展することが多い。

Googleで都市系の記事や団体などをチェックし、いちいちコンタクトフォームなどで律儀に連絡をとる。LinkedInやInstagramで声をかけることも多い。また、コロナが始まる前はfacebookやmeetupなどのイベントにかなり頻繁に顔を出して、人脈づくりの鬼と化す。こうやって作った人脈が、その後の仕事に財産になることも多いし、そもそも滞在経験や文化理解に圧倒的にプラスになる。特にクリエイティブ業界で働く人にとっては、この海外での人脈というのがかなりの武器になると思うので、このために来たんだというくらいのガツガツさで人に会うのが良いと思った。

4. オンオフの切り替えスキルを磨く

1日のスケジュールも、私がどちらかというと朝に仕事を済ませて午後はゆっくりしたいタイプな一方で、夫はゆっくり起きて就寝直前までコーディングしているなど、リズムは異なる。

オンオフのタイミングや切り替えの巧さも、夫婦で違う。どちらもクリエイティブ系の仕事なので、ゾーンに入っている時に声をかけられると気が散ってイライラすることも多い。同じ空間で仕事をすることが多いので、お互いのスケジュールについて、朝ごはんでも食べながら毎日ざくっと把握しておく。お互いのミーティングの量やプロジェクトの山場、締め切りなどをなんとなくでも把握することで、無駄なコンフリクトを避けることができるし、空気を読んだなんとなくの家事分担もできる。

そして、相手がPCに向かっている時に話しかけるときは「今良い?」と確認する。ゾーンに入っている時は、正直にそれを伝えて後で話してもらうようにする。

5. 「豊かに暮らすための」の自分的必須アイテムを把握しておく

ノマドワーカーというと必要最小限の荷物で禁欲的に暮らすバックパッカーのようなライフスタイルをイメージする人は多いかもしれない。実際にそんなノマドワーカーもいる。

私たちの場合、独立1年目はそれで疲れてしまった。買いたいものがあっても定住していないからと我慢せざる得ないものは多い。キッチン用具や服、本など、どんな状況でもこれさえあれば自分の生活が完結する、充実する、というアイテムは誰にでもあると思う。それが多すぎると身が重くなるのだが、「これだけは」という研ぎ澄まされたアイテムをコンパクトにまとめられるのは、経験で培うべき必須スキルだ。

・持ち運びできる高音質スピーカー
・切れ味の良い包丁(AirbnbはIKEAの安い包丁が多い)
・ピクニックマット &  持ち運び用ヨガマット
・持ち運びできるコンパクトなプロジェクター

いくら移動が多いとはいえ、絶対に妥協はしないアイテムを把握しておくことの大切さを、最近特に感じる。

6. 「この場所だからこそ」のメリットや理由づけは必要

現地企業に努めるのではなく、リモートワークだからこそ、 「なぜこの場所にいたいのか」が明確にしておく必要性を私たちは意識している。例えば、日本の企業で完全フルリモートで働きながらヨーロッパに住んでいる場合、それ以外で現地と何かしらの繋がりがある活動をしていないと、正直意味が内容な気もする(ケースバイケースだけれど)。「現地の言葉に興味がある」「この都市のクリエイティブ業界と繋がりたい」など、何かしらのテーマを持ってみると、海外リモートワークが断然楽しくなるし、自己ブランディングやスキルアップに繋がるはずだ。

7. 新規案件はやはり長期で滞在した場所の方が取りやすい(短期 / 長期のバランスをとる)

正直2週間だけの滞在だと、観光客程度の体験しかできない。最低でも1ヶ月は同じ場所に滞在することで、その国や都市のリズムや感覚が掴めてくる。現地での人脈づくりも含めたら、3ヶ月〜が理想だと思う。6ヶ月以上滞在できると、現地の企業とのコネクションもでき、徐々にその場所での新規案件も安定してくる。

私たちとしては今後は、1年の半分は日本、それ以外は、1ヶ月〜半年単位で興味のある国・都市で働きたいなと思っている。

8. 時差はかなり大変。慎重に計画を

「海外」と一言で話してきたとはいえ、実際かなりの地理的選択肢がある。リモートでの仕事だからこそ、時差をまずは現実的に計算することをおすすめしたい。

現在ヨーロッパに暮らしながらアメリカやメキシコの案件をこなしている私たち夫婦は、夜中の2時に打ち合わせが入ることもたまにある。一方で、朝起きたら大量のメッセージが届いているけれど、日中は仕事相手にとっては夜中なので返信が来ず、気が散ることなく作業できるというメリットもある。

デジタルツールの発展で仕事に地理的距離はなくなったとはいえ、時差だけは消えない。自分のワークスタイルに合わせて、慎重に計画することが大切だ。

都市・建築分野専門編集者・リサーチャー / 杉田真理子
デンマークオーフス大学で都市社会学専攻、その後ブリュッセル自由大学大学院にて、Urban Studies修士号取得。ブリュッセル、ウィーン、コペンハーゲン、マドリードの4拠点を移動しながら、エリアブランディング、都市人口学、まちづくりの計画理論などを学ぶ。欧州を中心に、現在まで多くの都市・街づくり関連団体を訪れ、参加型調査やワークショップを重ねてきた経験から、参加型街づくりの仕組みづくりやその情報発信を得意とする。株式会社ロフトワークで空間デザイン・まちづくり系プロジェクトのプロデュースとマーケティングを務めたのち、2018年5月から北米へ拠点を移動し、フリーへ。都市に関する取材執筆、調査、翻訳、調査成果物やアーカイブシステムの構築など、編集を軸にした活動を行う。都市に関する世界の事例をキュレーション ・アーカイブするバイリンガルWebメディア「Traveling Circus of Urbanism」、アーバニスト・イン・レジデンスの拠点「Bridge To」を運営。一般社団法人「for Cities」共同代表・理事。


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