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「白い春~君に贈る歌~」から学ぶ、死の先にある希望 【創作大賞感想】
長らく愛読していた【白い春~君に贈る歌~】が完結を迎えました。
生と死、愛について扱う、唯一無二の作品。
最終話を迎えた今、いつか感想を書いてみたいと思っていた自分がいたので、遅ればせながら筆をとることにしました。
まず、届いたばかりの最終話の感想を、ほんの少しだけ書かせてください。(ネタばれなし✨)
光とは。
愛する心に灯るものなのだ。
光とは、外に探すものではなく、愛する心に灯るもの。
この部分を読めただけでも、この小説を読んで本当に良かった、と心から思える一言でした。
おそらく、敢えて選ばれたであろうラストに、三鶴さんの作品へのこだわり、文学作品としての完成度の高さを感じました。
長期間の連載、本当に本当にお疲れ様でございました!
さて、ここからは、「白い春」全体の感想を書かせていただきますね。
はじめに驚いたのは、選ばれたテーマの重さです。
創作大賞2024の応募作品ですが、死にゆくヒロインをテーマにした作品というのは、簡単な気持ちで書けるものではなく、とても深い洞察力が必要だったのではないかと思います。
作者の一人である三鶴さんが実際にホスピスに勤務され、終末医療の最先端にいらっしゃるからこそ、書けた作品なのだと思います。
センシティブな内容でもある「死」を取り扱う覚悟をされた三鶴さんに、深い敬意を表すとともに、日々、ご職業で「死」と向き合われていることには、尊敬の念が尽きません。
そして、死に向かうヒロイン像を追求した仲川光さん。
末期がん患者の気持ちを考え、その心境に入り込むことは容易ではないと思います。
何としてもやり遂げて見せるぞ!という、プロライターとしての覚悟と意地と感じました!
本当にお疲れ様でした。
二人の共作者が、男女それぞれの視点から物語を綴っていくという形。
また、エッセイや詩など、お互いがこれまでに発表していた作品を小説内に入れ込む形。
色んな事が、独創的で斬新だったと思います。
そして、何よりも興味深かったのは、死に対する考え方が、作品の折々で、登場人物によって語られるところです。
特に印象的だったと思われるのは、ホスピス患者の一人、神崎シスターから語られる死生観です。
「人は何歳だろうと、死ぬときは死ぬの。
それはあなたも私も同じ。
ジタバタしたって仕方がないでしょう。
すべては神の御心のままに、って思えば楽になれるものよ」
実に達観した物の見方だ。さすがは筋金入りのシスター。
死に対する心構えが、やはり普通の人とは違う。
死を恐れずに、残された日々も心穏やかに過ごす聖職者の姿が描かれています。
僭越ながら、私のnoteでご紹介していた記事にも、同じような一節のご紹介があります。
この世で真理を掴んだ人、悟った人にとっては、「死」さえも、死ぬということさえも、実は怖くはない
心のコントロールをマスターし、死後の世界を知っている者にとっては、「死」とは決して恐れるものではなく、新たな世界への旅立ちなのですよね。
その達観した境地を、神崎シスターもよくご存知だったのだと思います。
そして、この神崎シスターから得た学びを、紗良さんがさらに深めていたことが、彼女の最後の手紙で明らかになっています。
シスターの神崎さんから、とても印象的な言葉を伺ったんだ。
「信仰を持つ私たちが穏やかに『死』を捉えることができるのは、死の先に『希望』があるからです」
って。
だったら私自身が、死の先の「希望」になりたい、って強く思った。
たとえ死の先の世界に行ったとしても、いつだって、誰かにとっての希望でありたい。
できれば、これからの私は、1番はあなたにとっての希望でありたいな。
この手紙を書いている紗良さんにとって、死後の世界は、もはや目と鼻の先。
信仰を持つ者は、神を信じ、死後の世界を信じているため、死の先に希望を見いだしていきます。
その中から、紗良さんが導き出したのは、「死の先においても、さらに誰かにとっての希望でありたい」、との強い決意。
死を恐れ、悲しむのではなく、死の後であっても、大切な人の光でありたい、という愛の言葉だったと思います。
そして、その紗良さんの言葉は、三浦さんの心に届き、前述した最終話に繋がります。
(※最後のネタバレをされたくない方は、この先はぜひ本編の方をお読みになってから、ご覧になることをおすすめします。)
かつて、自分が考えていた光とは、生きていること、愛されていることだった。
でも、もしそうだとしたら、上野さんのように、もうこの世にはいない人たちは、光ではないのか。あるいは、誰からも愛されずに孤独に生きる人間には、光がないのか。
そうは思いたくない。
今まで、光に対して受け身な捉え方をしていた。自分の外側にあるものだと思い込んでいたのだろう。
光って、なんだろう。
デッサンスケール越しに覗いた桜の花と、ステージから見た彼女の涙が、鮮やかに思い出される。
……このとき、ようやく気がついた。
光とは。
愛する心に灯るものなのだ。
紗良さんが灯した光が、確かに三浦さんに伝わっている。
そして、三浦さんは、愛する心を持つことで、自ら光を灯していく。
僕ももう帰ろうかと思い、演奏を辞めようとした、そのとき。
視界の隅に、こちらに身体を向けながら俯いている人がいることに気がついた。
あれ?
君は……
僕の心に光が灯る。
大丈夫。
君は、光だよ。
君に贈る歌、聴いてくれるかな?
僕はギターを構えた。
これは君の、白い春にまつわる物語なのだから。
紗良さんから受け継ぎ、三浦さんが心に灯した温かな光が、誰かの心に伝わっていく、その瞬間。
切なくも余韻を感じさせる、美しい終わり方でした。
人は必ず、死を迎えます。
私自身も、明日の命はないかもしれない、と思いながら、日々noteを綴っています。
でも、紗良さんと同じように、たとえ、この世から自分が消えたとしても、誰かを愛するために放った光は永遠に残り、この世界を循環していくと信じています。
今日も、愛する心から自ら光を灯し、その光を誰かに灯していく存在になっていきたいです。
この度は、「白い春~君に贈る歌~」という作品に出会わせていただき、また、このような感想を書く機会をいただき、本当にありがとうございました。
この作品を通して、一人でも多くの方の心に光が灯りますように。
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🌸この記事は仲川光さんの企画参加記事です🌸
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