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【読書】あと何人殺されれば……~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.482 2024.7.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第85弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「”選挙”の季節に」です。

「大学時代に留学したデンマークで、若者たちが政治について当たり前に話す姿を目にした」(p.8)能條桃子さんですが、単にデンマークに代表される北欧を理想化するのではなく、日本の現状を変えていこうと奮闘する姿には敬意が持てます。

女性初の杉並区長(東京)になった岸本聡子さんが掲げる「政治のフェミナイゼーション」にも共感すると言う能條さん。「『政治のフェミナイゼーション』とは、競争的・権力的な政治のあり方、プロセスを変えていくこと。私たちの活動を通じて、これまで経済優先の社会では評価されてこなかったケアや環境など命や暮らしに直結するところに、きちんと予算をつけることができる政治にしていきたいと思います」

p.9

能條さんが代表を務める、20・30代の女性地方議員を増やし、政治のジェンダーギャップ解消を目指す「FIFTYS PROJECT」ですが、2023年の統一地方選挙では、応援した24人が当選したそうです。次は100人の当選を目指すとのことで、少しずつ日本の政治が変わると良いなと思います。

能條さんは、459号にも登場していました。


かたやボリビアでは、先住民の女性にとって、登山をすることが、社会のあり方を変えようとする行いです。ボリビアの「先住民族の1つアイマラは、アンデス地域に住む最も古い民族」で、「女性は伝統的な衣装を身にまとい、自らを『チョリータ』と呼ぶ」(p.14)そうです。

子どもを産み、家を切り盛りする彼女らの世界は、ご近所の通りまでだ。女性は男性によって厳しく監視され、型通りの人生を生きることを強いられる。

pp.14-15

記事はボリビアで14人しかいない先住民女性の登山家「チョリータ登山家」の1人であるエレナ・キスペさんについてです。南米で最も高いアコンカグア(6960m)にも4人のチョリータ登山家と共に登頂したとのこと。週末はガイドをしているそうです。

チョリータの伝統的な衣装には「ボリェラ」と呼ばれる長さ1mのオーバースカートがあり、その下に10枚近いペチコートを履いている。上はブラウスと肩に巻いたショール、そして山高帽をかぶる。

p.15

これに加え、ロープとヘルメット、ハイキングブーツを身に付け、登山をします。登山道具は学校にも持っていき、少女たちに「自分たちも何者かになれる」「医者や弁護士、あるいは登山家にだってなれる」ことを教えます。

エベレストに登るという、エレナの夢が叶いますように。


ブラジルで「先住民の暮らしや生態系が脅かされていることから、道路整備とそれに伴う車社会の導入を見直そうという機運が高まっている」(p.16)という記事も興味深かったです。

「わが町の自慢は住民の丈夫な脚力。それに加えて、一人あたり一台普及している自転車と従来の河川舟運を使えば、道路建設は不要だ」

p.16

これは2002年に約3万8000人の住民らと「一丸となって道路建設に反対し、車の乗り入れを禁止した」(p.16)ブラジル北部のアフア市の市長の言葉。かっこいいです。


我が家でも時々フェアトレードのケニア産紅茶を飲んでいるので、茶園の買い戻しに奔走するケニアの人たちのことは心に留めておきたいです。

茶園は元々100年ほど前に、英国の植民地政府が住民たちから強制的に接収した土地だ。
「植民地時代の借地権が切れれば、(茶園は地元住民の手に)戻るとみんな信じていた」「リプトン紅茶を飲んでいる人たちは、血の紅茶を飲んでいることを知るべきだ」とケニア紅茶生産者協会の元CEOニコラス・キルイ氏は語る。

p.16

「雨宮処凛の活動日誌」で紹介されたガザ出身の女性の言葉は悲痛です。

「あと何人も死体がないとあなたは納得できないでしょうか。あと何人殺されれば満足ですか?」

p.17

国連施設や病院、学校、配給に並ぶ人たちまで攻撃するイスラエル軍のことは、絶対に忘れません。


「食品や日用品、そして買い物をする喜びを”買い物困難者”へ届ける(p.18)「移動スーパー とくし丸」を47都道府県で走らせる住友達也さんの言葉にも、目を開かされました。

過疎が進む地域だけでなく、東京・新宿でもとくし丸が食品や日用品を届けている。「東京のど真ん中であっても、人の暮らしがあるところには必ず買い物に困っている人がいます。健常者の目からはすぐそこに見えるスーパーでも、さまざまな事情からそこへ買い物に行くのが困難な方がいる。どんな仕事であっても、そういう人の存在に気づくべきだと思うんです」

pp.18-19


岡山県吉備中央町で高濃度のPFOAが検出された件の続報には、驚かされるばかりです。

PFOAは、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれるほど分解されにくい物質だ。一度取り込んでしまうとなかなか排出されない。摂取をやめたとしても、体内からPFOAが半減するのに2~4年もかかる。

p.23

この件は、Tansaの公式サイトの連載をぜひご覧ください。


今号も、本当にいろいろ勉強になりました。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった方、いつもありがとうございます!



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