見出し画像

【読書】今、言っておかなければ~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.481 2024.6.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第84弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「まちに座る」です。

日本各地の、まちの中に座って休める場所としての椅子やベンチを置く取り組みをしている人たちの記事で、興味深く読みました。418号では、「自分で椅子を運んで好きな場所に座って時を過ごす」(p.12)チェアリングが紹介されていましたが、今号で紹介されているのは、「ご自由にお座りください」と、時には私有地を提供してまで、座る場所を用意してくれる試みです。


「意地悪ベンチ」への笹尾和弘さんの考察には、考えさせられました。

公共ベンチといえば、座面が丸くデザインされたり肘掛けが付けられたりして寝ころべないようになっている「意地悪ベンチ(排除ベンチ)」を巡ってウェブやSNS、新聞報道を通じてたくさんの議論が起こっている。
(中略)管理している自治体やベンチのメーカーが悪者扱いされがちだが、彼らだけが自ら意地悪をしているわけではなく、たぶん、彼らを突き動かしているのは他でもない私たちの潜在意識でもあるのではないだろうか。私たちは片方では意地悪ベンチは良くないと言いつつ、もう片方では意地悪にすべきだと考えている。

pp.12-13

解決の糸口はというと。

私たち自身がより気軽に座ろうと思うようになることが大切だと思う。自分がまちに座る、座らせてもらうことで、誰かが座ることに対しても大らかになれる。
許すことはもともと、強い立場のひとから弱い立場のひとへの行為ではなく、お互いの目線を揃えることではないだろうか。

p.13


特集以外では、まず「私の分岐点」の山口香さんの言葉が印象的でした。ご自身がトップアスリートであったにもかかわらず、「以前からトップスポーツ・トップアスリートだけは特別という価値観が根強く、そのことに疑問もあった」(p.3)と率直に語る山口さんの言葉は新鮮でした。

今年はパリ五輪・パラリンピックが開催されますが、スポーツは平和な日常があってこそのものです。選手の活躍に一喜一憂するだけでなく、紛争や貧困などによってスポーツどころではない人たちに思いを寄せ、人類の幸せな未来を考える機会になればと願っています。

p.3

山口さんは、非常にまっとうな感覚を持っておいでだと思います。日本の選手の活躍だけを、絶叫調で紹介するアナウンサーや解説者、芸能人ゲスト、誰よりもそのような番組を観る視聴者に届けたい言葉です。


有機フッ素化合物PFOAの工場のない岡山県吉備中央町の水道水から、高濃度のPFOAが検出されたという記事は、衝撃的でした。

PFOAの残留性は極めて高い。「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれるほど分解されにくい物質だ。完全に分解させるには1100度以上の超高温で燃やさなければならない。だが、対応できる施設は国内で数えるほどしかない。
分解処理をした上で廃棄していなければ、今でも多くのPFOAが国内のどこかに存在することになる。

p.18

なぜ吉備中央町の水道水から検出されたのか、とても気になります。


ALPS処理汚染水の海洋放出差し止め訴訟の原告である、相馬の漁民の小野春雄さんの言葉も心に残りました。

「おれは、悪いことをしているわけじゃない。先祖が守った海を我々が今守らなければ。言わなければ、おれが亡くなった後で、子孫たちに『なんであの当時、いろいろなことをやらなかったんだ』と言われる。だから今、言っておかなければならないんだ」

p.21

ちなみに小野さんが生まれ育った釣師浜(つるしはま)地区では、「子どもが生まれた翌朝、父親は『水垢離』といって、海に入って身体を清め、子どもが健康に育つよう祈る」( p.20)風習があるそうです。


今号も、学びが多かったです。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった方、いつもありがとうございます! しかし『ビッグイシュー日本版』の累計販売冊数が2024年5月に1000万冊を超えたとは。その分、路上生活者の方々の生活再建に役立ったのだなと思うと共に、まだまだ路上で暮らす方々がいる現状に思いを馳せます。



この記事が参加している募集

#読書感想文

192,370件

#最近の学び

182,321件

記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。