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読んだ本

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読んだ本の感想です。基本、ネタバレはありません。
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#お勧めの本

嵐のただなかにおける心の安定~『人生の短さについて 他2篇』(セネカ著、中澤務訳)~

アマゾンのプライム・リーディングを利用して読んだ9冊目にあたります。8冊目のレビューより前に、こちらをアップしてしまいます。 ↑kindle版 世界史の教員として、もちろんセネカの名前は知っていましたが、マンガ『プリニウス』にも登場したことで、その著作を読んでみたいと思った次第です。 以下、備忘録代わりに心に残った箇所をまとめておきます。 訳者の中澤務さんによる、「人生の短さについて」の前書きです。セネカの言いたいことはすでにここに集約されていますが、実際のセネカの言

ガザのことがよく分かる~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.477 2024.4.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第79弾です。4月1日号より先にこちらを読んだため、先に投稿します。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号のスペシャル企画は「ガザ76年」です。 この特集、本当によくまとまっているので、ぜひ読んでいただきたいです。『ガザとは何か――パレスチナを知るための緊急講義』の岡真理さんへのインタビューをメインに、パレスチナ問題の期限や関連年表、現在何が起きているかについて書かれています。

循環型経済に向けて~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.475 2024.3.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第78弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号のスペシャル企画は「生きのびるデザイン」です。 そこからの転換を模索するのが「生きのびるデザイン」なわけです。 これは良いことですが、取り組みの開始のことは知らなかったので、まだ目に見える形になっていないということでしょうか。まぁ、私が知らないだけという面もあるようですが。 日本中が、そして世界中が、こうなるべきですよね。

読んで良かったが……~『椿ノ恋文』(小川糸)~

「ツバキ文具店」シリーズの第3作です。 読み始めてすぐ、「あぁ、こういう世界だったなぁ」と懐かしくなりました。鳩子はすっかりお母さんになっています。 本当に、その通りですよね。 懐かしくなったと言いつつ、どうも最初は波に乗れませんでした。結婚したら案外ミツローさんがふわふわした性格だったことが分かったこととか、QPちゃんが反抗期に突入、お隣さんは騒音に敏感、といった、鳩子を取り巻く様々な問題に、中途半端な現実味を感じたからです。そのくせ、下の子どもたちの「年子だけど同学

読ませる力はある~『Blue』(川野芽生)~

第170回(2024上半期)芥川賞候補作の1つのです。 ↑kindle版 文化祭でオリジナル脚本の「人魚姫」を演じようとする高校生の演劇部員4人と、脚本を書いた友人の話です。主人公の真砂の生き方と人魚姫のあり方とがリンクし、物語が展開されていきます。冒頭でまず、内容が頭に入って来ず、混乱しました。3度くらい読み返した末、諦めて読み進めたら、「どこまでト書き?」という水無瀬のツッコミがあり、安心しました。わざと、あまりうまくない書き出しにしていたのね。 自分の性に違和感を

お仕事百景~『おつとめ<仕事>時代小説傑作選』(細谷正充編)~

「仕事」をキーワードにした時代小説のアンソロジーです。 ・「ひのえうまの女」(永井紗耶子) 主人公の利久(りく)は丙午の日の生まれなため(ということにされている)、気が強く、それが災いして縁談が破談になり、大奥に行くことになります。まぁ破談になって良かったような縁談ですが。 大奥を描いた時代劇や時代小説にあまり触れてこなかったので、これらのことは初耳でした。ちなみに「汚れた方」というのは、御手付き中臈のこと。 これも初耳でしたが、祐筆は代書の仕事もしていたということで

宇江佐真理の「紫陽花」が良い~『吉原花魁』(縄田一男・編)~

*この記事は2019年6月のブログの記事を再掲したものです。 以前ご紹介した吉原遊郭跡の街歩きツアーでは、案内人の方が経営されているカストリ書房さんで使える、500円分のチケットを頂けます。 何にしようか迷ったものの、時代小説のアンソロジー集である『吉原花魁』にしました。街歩きをしたので、背景とかが理解しやすいかと思ったのですが、まさにその通りでした。隆慶一郎の「張りの吉原」という作品から始まるのですが、これを筆頭にどの作品でも、吉原とその周辺に生きる男女の張りが描かれて

導入としては悪くない~『15歳の少女が見た紛争地「パレスチナ」の未来』(Connection of the Children)~

2024年1月23日付の『東京新聞』朝刊の横浜神奈川欄で紹介されていて興味を持ち、読んでみました。 中学を卒業したばかりの女の子のパレスチナ訪問記ということで、かなり期待していたのですが、残念ながら、期待したレベルには達していませんでした。もちろん、「15歳の少女」こと浅沼貴子さんは悪くありません。彼女は5日間の滞在から多くのものを吸収し、いろいろ考えたことを自分の言葉で率直に記しています。 まず良くないのは、地図です。使っている地図がほぼすべて転載された英語のもので、せ

自分を理解するのに役立った~『【HSPチェックリスト付き】鈍感な世界に生きる 敏感な人たち(心理療法士イルセ・サンのセラピー・シリーズ)』(イルセ・サン著、枇谷玲子訳)~

アマゾンのPrime Readingを利用して読んだ7冊目にあたります。生徒をはじめ、周囲にHSP的な人が増えているなーと思い、読んでみました。なおこの記事は、読み終わってから数ヶ月経ってから書いております(^-^; ↑kindle版 冒頭の「HSPチェックリスト」をやって、驚きました。60以上でHSPである可能性があるのですが、私は88点でした。「数字が大きければ大きいほど、敏感」(p.7)ということでなので、私自身がHSPの可能性ありですね。まぁ最大の数字は140とい

この世に自分に関係のないことはない~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.474 2024.3.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第77弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号のスペシャル企画は「ふくしまの13年」です。 福島の人たちのメンタルダメージは、想像以上なのだと、改めて認識しました。能登半島地震でも、1.5次避難や2次避難が話題となっていますが、それ自体はもちろん必要なものではあるものの、避難者の方々の受けるダメージが心配です。 なお「蟻塚さん」とは、相馬市の精神科医の蟻塚亮二さんのことで

「知らなかった」では許されない~『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(岡真理)~

同僚に紹介されて読んだ本です。 ↑kindle版 2023年10月20日の京都大学での講演と、10月23日の早稲田大学での講演を収録したもので、当然ながら内容に重複があります。でも2度語られるからこそ、事態の深刻さが心に染みてきます。 「はじめに」にあった、現在のガザについての報道は「出来事を報道しながら、その報道によってむしろ真実を歪曲、隠蔽するという、エドワード・サイードが『カヴァリング・イスラーム』と呼んで批判した『イスラーム報道』の典型」(p.4)という指摘に、

歴史家は警告者~『遺跡発掘師は笑わない キリストの土偶』(桑原水菜)~

「遺跡発掘師は笑わない」シリーズの第18弾です。今回の舞台は青森です。 ↑kindle版 読み始めてじきに「おお」と思わされたのが、無量の言葉。 あのやさぐれていた無量が、こんなことを言うようになるとは、と感慨にふけらされると共に、同感だなぁと思わされました。 これ、認識していませんでした。福島県や愛知県など、他の県でもこういう構造って、見られますよね。現在の自治体の区分なんて、しょせんお役所の都合ということです。 さすがに発掘を宝探しだとは思っていませんが、データ

仏教が目指すのは~『梅原猛の授業 仏になろう』(梅原猛)~

図書館の返却された本のコーナーでたまたま目につき、読んでみました。 朝日カルチャーセンター京都での講義をまとめたもので、「仏教徒は結局、『仏になる』ことだ」(p.11、以下ページ数は単行本のもの)という観点に最初は驚いたものの、読みすすめる内に納得がいきました。 以下、印象に残った箇所を備忘録代わりにまとめます。 なお二種廻向の注釈も引用しておきます。 これらはいずれも初耳でした。特に乙訓寺の像は、ぜひ見てみたいです。 ひどいことをやりますね。 なるほど。 これ

部屋の中も自然の一部~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.473 2024.2.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第76弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号のスペシャル企画は「生きもの道、生きものの巣」です。 プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんが紹介する、人と共に生きる動物たちの姿に、まずびっくり。 記事の最後の佐々木さんの言葉にも、考えさせられました。 鈴木まもるさんの記事に出てきた、南アフリカやナミビアで、「シェアハウスのような巨大な巣で数百羽が暮らす」(p.12)シャカ