現在の中国が抱える問題の一部をあぶりだした本です。
↑kindle版
著者の鈴木英司さんは日中関係を良好なものにするため、日中交流を盛んにしようと長年尽くしてきた人です。
本当に。中国はむしろ、この方を大事にすべきでした。
無実の罪で6年間も拘束された怒りもあり、繰り返しが多く、読みにくいところもあります。だからこそ、無念の思いが伝わります。
当局のつくったストーリーに沿って逮捕され、取り調べを受け、裁判に臨むのでは、有罪になるしかありません。
大変な思いをされた鈴木さんを責めるわけにはいきませんが、好奇心と向学心をもっていろいろな人にいろいろ訊いてしまうところが、「スパイ活動」を行っているとされてしまった一因かもしれません。ちなみにこの王さんは、上司の規律違反を告発しようとして、逆に捕まってしまいました。
服役中に、受刑者の待遇改善に取り組んだこともすごいです。自分の為だけではなく、人の為にもなることをしたわけです。やはり中国は、この人を大事にするべきでした。
それは何よりですが、ちょっと不思議にも感じます。
鈴木さんの解放に向けて、思うように動いてくれなかった大使館への苛立ちですが、ここでも自分のことだけではなく、日本の外交自体を憂える鈴木さんの視野の広さが見られます。
鈴木さんが拘束された理由の1つとして、ご本人は「日中友好関係者の交流による情報の流出にくさびを打ち込もうとしたこと」(p.177)を挙げています。
民間交流は、やはり大事にすべきではないでしょうか。
格差からくる不満は、抑えつけたところで、何らかの形でいずれ爆発するのではないでしょうか。
台湾問題についての鈴木さんの考えは、同感です。
日本の政府への注文にも。
大変な思いをしたのに、それでも「今後も中国問題に関わっていきたいと考えている」(p.211)と「エピローグ」で述べる鈴木さんを、やはり中国も日本も大事にすべきです。
見出し画像は大連の星海広場にある、大連市100年を記念した1000人の足跡です。これが作られた時の大連市長の薄熙来さんは、その後失脚しました。
↑単行本