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読んだ本の感想です。基本、ネタバレはありません。
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記事一覧

【読書】声を上げる人を応援したい~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.486 2024.9.1)~

ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第89弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号の特集は、「冬、春、夏をこえた奥能登から」です。 元旦の地震から8ヶ月が経ったのに、大きく復旧が遅れていた奥能登が、更に今回の大雨で大変なことになっています。当然のことながら記事に書かれていることは大雨の前のことです。 珠洲市大谷地区 「完全に孤立してはいないものの、往来も物流もきわめて限定的で「半孤立集落とも言える状況」(p

【読書】出合ったものが1番やりたかったもの~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.485 2024.8.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第88弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号の特集は、「あした美術館へ」です。 東京都美術館のエントランスの”エスプラナード”という広場、恥ずかしながら通り道感覚で、広場として認識していませんでした。”エスプラナード”という名前が付いていることも知らなければ、置かれている野外彫刻をきちんと見たこともありませんでした。今度行く時は、きちんと見てみようと思います。 特集以

【読書】設定は面白い~『ひかり舞う』(中川なをみ著、スカイエマ絵)~

スカイエマさんの絵が目につき、手に取ってみました。 ↑何だかすさまじい値段になっていますが、中古でもっとずっと安く入手できるかと思います。 子ども向けの時代小説です。本能寺の変や秀吉の朝鮮出兵などが背景として描かれていますが、主人公は架空の人物なので、歴史小説ではありませんね。 子ども向けを意識しすぎたのか、文章の達者な子どもが書いたような文体が、ちょっと気になりました。しかし後半になると、自然な文体になっていきます。 武士の子でありながら、こんなことを考えてしまう平

【読書】日本人はまだ文化的国民の名に値しない~『食味歳時記』(獅子文六)~

水上勉の『土を喰らう日々』の近くにあった本です。 ↑kindle版 冒頭の文章ですが、読んでガクッときました。「い抜き言葉」だよ……。私は嫌いですが、1893年生まれの獅子文六が「ら抜き言葉」と共に多用しているところからすると、最近の言葉の乱れとは言えず、もはや許容しないといけないのかなぁ。 口取り:海、山、里のものを少量ずつ盛りつけたもの。 ↑口取りという言葉を知らなかったので、備忘録代わりに。 明治生まれの方の言葉遣いはきついですが、内容には同感です。 薩摩の酒

【読書】滋味豊かな本~『土を喰う日々――わが精進十二ヵ月――』(水上勉)~

映画『土を喰らう十二ヵ月』を観て、原作にあたるこの本も、ぜひ読もうと思っていました。 ↑kindle版 水上勉自身の手になるカバー装画とカットが、これ自体精進料理のような、素朴で地味ある味わいを出しています。 このような感じで、冒頭から含蓄ある、控えておきたい言葉がたくさんあります。 こういう心がけで禅僧は調理、いや日常生活全般に当たらねばならないのですね。わずかなりとも、そうしたいものです。 なるほど。 映画でも描かれたシーンですが、あのシーンが、より心に残るも

【読書】『神奈川ルール』で良かった気が~『横浜ルール』(都市生活研究プロジェクト[横浜チーム])~

たまたま目につき、手に取ってみました。 ↑kindle版 副題が「YOKOHAMAハイカラライフを楽しむための49のルール」となっているのですが、ルール13の「売上高全国ナンバー1! 川崎ショッピングモールバトル」をはじめ、ちょいちょい川崎をはじめ、横浜以外の神奈川県のルールが入っているのが、ちょっと不満。このシリーズには『東京ルール』とか『大阪ルール』などがあるのですが、横浜だけで1冊作れないなら、題名は『神奈川ルール』で良いのに。 とはいえ、基本的には楽しく読みまし

【読書】人はいくつになっても成長できる~『極楽征夷大将軍』(垣根涼介)~

室町幕府を興した足利尊氏の物語です。第169回直木賞受賞作です。 ↑kindle版 図書館でかなりの期間、予約待ちをした末に受け取ったのですが、本を開いた瞬間、ちょっと後悔しました。約550ページある上、2段組み? 読了に結構時間がかかりそう……。 でも読み始めたら、文章が読み易く、テンポも良いので、心配は薄らぎました。尊氏の弟の高国(後の直義)の視点と、高師直の視点が交互に出てくるのも、気分転換になるというか、長編独特の何となくダレた感じになるのを防いでくれます。

【読書】アメリカは1つになどなれない~『11の国のアメリカ史 分断と相克の400年 上』 (コリン・ウッダード著、肥後本芳男ほか訳)(その①)

「日本語版への序文」にある以下の言葉が、この著作のエッセンスを表わしています。 なお、この本を読み解いていく上で重要なのが、「凡例」にある以下の文章。 そしていよいよ本題に入っていきます。 このように、冒頭からほぼ毎ページごとに引用してしまうことが、私が受けた衝撃の大きさを物語っています。さすがにこの後は、しばし飛びます。 ちょっとこれ、面白いです。 これらも同じ西欧人でもフランス人とイギリス人の違いが感じられ、内容自体は興味深いのですが、ここに見られるように、この

【読書】恐れたのは<知識>そのもの~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.484 2024.8.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第87弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号の特集は、「日本の若者は人権マイノリティ」です。 日本の被選挙権年齢は、衆議院議員・都道府県議会議員・市区村長・市区町村議会議員が25歳以上、参議院議員・都道府県知事が30歳以上なので、理論上は20代、30代、40代の議員がもっといて良いわけです。なのに、そんなに少ないとは……。 被選挙権年齢は「OECD加盟国の約6割が18

【読書】少女小説だが、価値はある~『アンの娘リラ』(モンゴメリ作、松本侑子訳)(その②)~

『アンの娘リラ』の感想その②です。 ↑kindle版 読みながらメモを取り、同時中継的に(?)感想を書く方式の記事なので、読みにくい点は、ご容赦ください。 孤児のジムスを育て、青少年赤十字の活動に携わり、リラは急速に成長していきます。友だちだったアイリーンとは違って。 ちなみに育てるうち、ジムスへの愛情もどんどん出てくる描き方も見事です。 連合国が西部戦線で大勝利をおさめたというニュースを受けて喜ぶ家政婦のスーザンに、ミス・オリヴァーが言うセリフです。さすが先生、鋭

【読書】第一次大戦中のカナダの雰囲気~『アンの娘リラ』(モンゴメリ作、松本侑子訳)(その①)~

私は「赤毛のアン」シリーズは、第1巻の『赤毛のアン』を前田三恵子訳で読んだのみで、その後の展開については、ほぼ知りません(ギルバートと結婚したことは知っていますが)。 なのに仕事の都合で、『アンの娘リラ』を読むことになりました。本来、その間の6冊も読むべきなのでしょうが、そんな時間はないので、間を飛ばして読むことにしました。 で、誰の訳で読むべきか考えたのですが、今更村岡花子訳でもないだろうと、新訳の松本侑子訳を選択した次第です。 ↑kindle版 読み始めてすぐ、ち

【読書】民間交流の大切さ~『中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録』(鈴木英司)~

現在の中国が抱える問題の一部をあぶりだした本です。 ↑kindle版 著者の鈴木英司さんは日中関係を良好なものにするため、日中交流を盛んにしようと長年尽くしてきた人です。 本当に。中国はむしろ、この方を大事にすべきでした。 無実の罪で6年間も拘束された怒りもあり、繰り返しが多く、読みにくいところもあります。だからこそ、無念の思いが伝わります。 当局のつくったストーリーに沿って逮捕され、取り調べを受け、裁判に臨むのでは、有罪になるしかありません。 大変な思いをされた

【読書】この戦争の責任は~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.483 2024.7.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第86弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。 今号の特集は、「海洋生物国の小さな水族館」です。 深海生物の展示数世界一という、愛知県蒲郡市の竹島水族館副館長の戸舘正人さんの言葉です。そうか、驚かれるのか……。 上が戸舘さん、下が館長の小林龍二さんの言葉ですが、共に深海生物への愛に満ちています。 「毎朝漁港から譲り受ける地域の海の生き物だけを展示する」(p.12)むろと廃校

【読書】広い世代に役立つ~『この世でいちばん大事な「カネ」の話 新装版』(西原理恵子)~

西原さんが、自らの半生と共に「カネ」について語る本です。小中学生を主な読者に想定していると思われますが、もちろん大人が読んでもためになります。 ↑kindle版 西原さんが幼少期を過ごした高知の浦戸の話ですが、おいおいという感じですね。 ともあれ、実体験から出てきた西原さんの言葉は、どれも真実です。 かなり困った人だった西原さんの2番目のお父さんですが、この言葉が西原さんを救います。 金言です。最近は就職して1年以内に辞めてしまう若者が増えているそうですが、彼らに聞