見出し画像

【読書】恐れたのは<知識>そのもの~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.484 2024.8.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第87弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「日本の若者は人権マイノリティ」です。


「日本は20代の国会議員がゼロ。40歳未満で見ても、欧州の国々では30%前後はいるのに、日本には6%しかいません」

p.11

日本の被選挙権年齢は、衆議院議員・都道府県議会議員・市区村長・市区町村議会議員が25歳以上、参議院議員・都道府県知事が30歳以上なので、理論上は20代、30代、40代の議員がもっといて良いわけです。なのに、そんなに少ないとは……。

被選挙権年齢は「OECD加盟国の約6割が18歳以上」(p.11)だそうです。能條桃子さんなどが、被選挙権年齢の引き下げを求めて訴訟を起こしていることは知っていますが、個人的にはその必要はなく、今の制度のままで20代、30代、40代の議員を増やす努力をした方が良いと思っています。

でもそれは、記事中の以下の言葉が関係するのかもしれません。

「親世代も学校教育の中で子どもの権利を教えられたことがなく、実践もしていないので、子どもたちに子どもの権利を教えられる人がほとんどいないのが日本の実情」
「先生たちは、自分の声も大事にされないのに、子どもたちの声を大事にしようとはなかなか思えないのではないでしょうか」

p.9

能條桃子さんについては、482号でも取り上げられています。


特集の最後の言葉は印象的でした。

「欧州では、本人だけでなく周りの環境を変えるために声を上げる人はリスペクトされ、感謝されます。もしかしたら、自分の声を聞いてもらえず、ケアされてこなかったために何も変わらないと思っている人がバッシングするのかもしれません」

p.12


特集以外では、まず「世界短信」のメキシコのニュースが心に残りました。ベネズエラ難民の支援のため、

ルイス・アントニオ・ロペスさんとその家族は、安くておいしい食事の提供を試みた。ところが、香辛料の効いたメキシコ料理は過酷な旅をしてきた難民たちの身体には合わず、胃腸炎にかかり体調を崩す人が続出。そこでロペスは「我々が食材を提供するので、自分たちで故郷の料理を作らないか」と彼らに提案した。
これがきっかけで、両国名にちなんだ食堂「MexVen」が22年にオープン。(中略)「MexVen」の厨房はベネズエラ難民が担当することとなり、彼らは数週間働いて資金を貯めると、再び米国を目指し旅立っていく。そしてまた次の料理人がやってくる。

p.13

良かれと思って提供した料理で体調を崩され、がっかりしたと思います。でもベネズエラ難民自身に調理をしてもらうという、誰にとってもハッピーな方法を思いついたロペスさんに敬意を表します。


「浜矩子のストリートエコノミクス」の以下の言葉には、同感です。

我が身の安全を保障するための最も上手なやり方は、誰とでも仲良くすることだ。防備を固め、門戸を閉ざし、相手を拒絶するような構えを取ることが、どうして、安全の保障につながるのか。(中略)食糧安全保障のためだと言って、食糧自給率の引き上げに必死になる。人々から、多様性豊かな食生活を奪う。

p.13

「雨宮処凛の活動日誌」の以下の部分にも繋がってきます。

この約15年で日本で難民申請をしたトルコ国籍の人は9700人。その多くがクルド人とみられているが、認定されたのはたった1人。しかし、トルコ国籍を持つクルド人の難民認定率は18年には世界で約46%(全国難民弁護団連絡会議の統計より)。日本では「難民ではない」と言いがかりをつけられることが少なくないクルド人だが、世界ではそれだけ認定されているのである。「改正」すべきは入管法ではなく、このような杜撰な難民審査のあり方ではないのだろうか。

p.18

この記事では他にも、この6月に施行された改正入管法の問題点を指摘しています。


映画『流麻溝十五号』の周美玲(ゼロ・チョウ)監督へのインタビュー記事も、印象的でした。

蒋介石による強権政治下では、政府批判や共産主義的発言は告発・拘束・逮捕の対象となった。(中略)
そして1949年には台湾全土に戒厳令が布かれ、その状態はなんと38年間続くことになる。東西冷戦下での反共産体制は「白色テロ時代」と呼ばれている。
(中略)
「もはや当局が恐れたのは共産党というより、<知識>そのものでした。情報を集め、自らの頭で『自由とは何か』『正義とは何か』を考える力、そして<この国の行く末>を人々が議論することを恐れたんです」
(中略)
「政治にはかかわらないほうが無難。正義を求めるのは危険。こうした空気が社会にまん延すれば、その社会は脆弱なものになります」

p.23

共産主義陣営に属するカンボジアのポル=ポト政権も「知識」を恐れましたが、反共産主義時代の台湾でも「知識」を恐れたのですね。


「マイ・オピニオン」の土佐義士さんの、以下の意見にも同感です。

「電気料金」と「電力(生産)コスト」の峻別がなされないまま、「原子力発電による電力料金が一番安い」という、タメにする政府説明がまかり通ってきたことに疑問を感じています。
電力コスト計算にあたって、発電所建設費(地元工作バラマキも含む)を毎年減価償却する費用、使用済み核燃料処理費用、将来の廃炉費用(準備金積み立て経費を毎年計上するべき)など、膨大な金額を算入しているでしょうか?

p.26

30年以上前の話ですが、某電力会社の社長が、「国民の多くが脱原発の意思を見せてくれれば、原子力発電はやめたい」と言ったという話を聞いたことがあります。もはや電力会社の意思でやめられないのです。3.11の時に当然脱原発の方向に行かねばならなかったのに、そうはなりませんでした。
南海トラフ地震臨時情報が出た今こそ、もはや原発なんて稼働させている場合ではないですよね。この猛暑でも、電力需給がひっ迫しているという話は聞かないのですから、原子力発電はやめられるはずです。


今号も、学びたっぷりでした。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。ただし今号は、2024年8月15日に次の号が発売されるまでは、街角の販売者さんからのみ購入できます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった方、いつもありがとうございます!



この記事が参加している募集

記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。