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『YOU ARE A BADASS』 ジェン・シンセロ

著者ではなく訳者でえらぶ

YOU ARE A BADASS  もっと「自分のため」に生きていい!
ジェン・シンセロ著 三笠書房 山川紘矢・山川亜希子訳

あまり無いことだけれど、この本は著者ではなく訳者を通じて出合った。
とある本を探していたら訳者がおなじで、学生時代にもこの訳者の本を読んでいたことを思い出したのだ。
お二人が精神世界の本を多く訳されており、気になって他の訳書を図書館で探したのが今回の本だった。

自己中になるのではなく、「決める」

「自分中心で生きていい」「もっとわがままになれ」といった内容をタイトルから予想していたが、そういう話ではまったくなかった。
自分が望むものにもっと意識を当てて、自分の使い方にもっと貪欲であれ
むしろ自分に集中せよ、そのために最初になにをするか。

必要なのは、人生を変えたいと”願う心”から、変えようと”決める心”に移ることだ。
「願う」なんていうことは、ソファに座ってなにも考えずに、雑誌を見ているあいだにだってできる。
しかし、「決める」ということは、自分の身を投じ、どんなことがあっても物事をやり遂げ、粘り強く夢を追いかける意志をもつことなのだ。

YOU ARE A BADASS  もっと「自分のため」に生きていい!』 3-4頁



「十人十色」の意味

誰もがみな、その人なりの才能や能力をもっているけれども、自分と同じ使い方をする人はいない。
自分が考えるように物事を考える人は自分だけ。

57頁

制服を着ていた10代のころを思い出す。
一学年300人くらいで皆おなじ服装なのに、遠目から見てもそのひとと分かった。背格好や髪型だけでなく、歩くときのシルエットの動きや隣のひとに話しかけるときの仕草でなんとなく見当がつくのだ。
あとは、制服が似合う同級生がいたこと。そのひと自身「『制服似合うね』ってよくいわれる」と言っており、制服にも「似合う」というカテゴリーがあるのが発見だった。

著者は才能や能力のはなしをしているけれど、肉体が個々で違うからこそ秀でている部分にも差がある。腕の長さでリーチが変わり、関節の柔らかさや筋肉のつき方で得意な動きも綺麗に見える角度も変わってくる。

追うべき道が1つとはかぎらない

何のためにこの世に生を享(う)けたのか、そのたった一つの完璧な使命がまだ見つかっていないからといって、自分を責めることはやめよう。人生のうちに複数の使命に出会うだろうという事実を「いいこと」と受け止めよう。

82頁

いわゆる天職があると20代の時分は思っていたし、次の一手は「それを一生つづけられるかどうか」が決め手だった。だからその一手を挫かれると、もうどうにも身動きがとれない。

いま思うと、あれほど落ち込まなくとも良かったのだ。
思い入れはとても強かったし向いていただろうとも思う。だが感傷的になったとしても「はい、次!」で立ち上がればいいのだ。自分を責めるとしたら自分しかいない。自分以外はだれも責めていない。

ちょっと見るだけ

私がしたことの中でもっともよかったことの一つが、「何ができるか見てみたいだけ」という、モットーをつくったことだ。
成功するビジネスが立ち上げられるかやってみたいだけ。借金を返済してこの一年でさらに1000万円稼げるかやってみたいだけ。2キロやせられるかやってみたいだけ。自分の絵が500万円で売れるかやってみたいだけ。運命のパートナーに出会えるかやってみたいだけ。
プレッシャーをとりのぞいて、冒険に出かけてみよう。

104頁

なにごとも「一生ものだ!」と息巻いて取り組むのがすばらしいとはかぎらない。

そのことに気がついたのは不惑をすぎてからかもしれない。10代のころよりも誕生と死が身近になり、始りと終りを見据える機会がわずかだが増えた。
山と谷は一度きりではなく繰りかえすのだと身をもって知った。想像していたよりもひとは岐路に多く遭遇している。

だから「ちょっと見てみよう」「行ってみるだけ」「顔を出すだけ」「あのひとに挨拶するだけ」。ときに不純な動機でもいい。全身全霊をかけなくともかまわない。遊びがいつしか本気になるかもしれないが、そのときはそのときだ。
ちょっとした寄り道を自分にゆるすのだ。
著者は最初の一歩は「決めること」と書いていたが、決めるまえに色んなことを自分に許すのが先ではないか。許していれば、決めたあとで岐路に立った時にイエスと言える。

身をゆだねる


最後に、エネルギーについて書いた部分を抜粋したい。

「疑うこと」は抵抗すること、「信じること」は身をゆだねること。
「心配すること」は抵抗すること、「喜ぶこと」は身をゆだねること。
「思いどおりにしようとすること」は抵抗すること、「受容すること」は身をゆだねること。
「軽蔑すること」は抵抗すること、「信念をもつこと」は身をゆだねること。
エネルギーは流れる必要がある。そうでなければ停滞する。身をゆだねると、流れに乗る。

身をゆだねると、望むことが実現するスペースが生まれるだけでなく、心が開かれるので、気持ちのいい出来事を体験できたり、思ってもいないようなこと(奇跡ともいわれる)が起こったりする。

225頁

疑い、心配、思いどおり、軽蔑。どれも覚えがある。毎秒をこれで埋め尽くしている日もあるくらいだ。書いていて我ながら驚く。

翻って、信じる、喜ぶ、受容、信念。
11月に入って早々に、サンタクロースに願いを放っていた子どもが思い浮かぶ。「これがほしい」と決めたら嬉々として手紙を書き、あとはひたすら日々に没頭している。こちらが尋ねなければ話題にもしない。「ほんとうに来るかな」と疑うこともない。次に遊ぶパズルをえらんだり、踊ったり歌ったりして一人コンサートに精を出している。

身をゆだねるとは具体的に何なのか長らく疑問だったが、やることをやった後に訪れる「あとはよろしく」という心持ちではないかという気がする。
サンタクロースへのお願いなら、手紙を書いて願いを放ったらあとは日々に戻る。それだけ。


*おまけ*

このお二人のお名前をはじめて見たのは、たぶんこの本ではなかったかしら。
このときは訳者のおふたりのことは知らず、俳優のシャーリー・マクレーンが好きで手にとった。

『アウト・オン・ア・リム』シャーリー・マクレーン著 角川文庫 
山川紘矢・山川亜希子訳


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