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豊かなこと

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#身体

腕に火傷。されど行く

ここ数日、真っ白な腕が頭の片隅に居続けています。
それを見たのは電車の中。斜め向かいに座っていた若い人の腕でした。指はせわしなくスマホを操り、半袖から飛び出た両腕はスマホと指を接続しています。そのほとんど動かない、ただ身体をつなぎとめている腕のまぶしさが離れないのです。その腕は白いだけではありません。キメも滑らかさも、この腕に水をたらしたら水滴のままコロコロとつたっていくに違いないのです。結局、自

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微熱の狭間にて

微熱の狭間にて

喉に違和感を覚えたのは昨日の仕事中。あと2日で研修先の部署が終わるなぁなどと考えていたときでした。

飲み物を飲み込むのがちょっと、しんどい。電話の第一声を出すのがちょっと、億劫。喉に手をやると心なしかいつもより熱を持っている気がします。

コロナか?
そう思った瞬間、病の恐怖よりも他者にそうと知られることの恐怖が襲います。心臓は途端に存在感を増し、嫌な汗をかいていることがわかりました。

早退し

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手のひらのにおい

手のひらのにおい

DVDデッキの青い光が昼よりもずっと眩しかったことは覚えています。ふすま1枚を隔てたところにいる兄はまだ起きていたんでしょうか。今となってはわかりません。

顔を手で覆うと、安心します。
視界が遮られて、指と指の間から見える洗濯物は、別の何かに見えて、自分の家じゃないみたいです。世界の誰も知らない、わたしだけの穴ぐらで、ただただそこに在ると、手のひらの匂いや温度に気がつきます。温度はともかく、手の

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竹ぼうきの音

竹ぼうきの音

竹ぼうきがコンクリートをこする音
ザッザッザザッ
「掃き清める」古臭い言葉が浮かんだ

イチョウがそこかしこにちらばっている場所でした。
あたり一帯にまだ鮮やかな黄色のイチョウがある地面は、それはそれで綺麗だとわたしは思いましたが、まぁ上からの司令ですから。たかが学生アルバイトの身分では従うほかありません。

152cmのわたしとしては、握り手が太い竹ぼうきを使い続けるのは中々な労働でして。
とり

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ポッポッポッ

ポッポッポッ

消費カロリーより摂取カロリーが上回りすぎた今日。

バイトだった昨日は寝坊したのに、なんにも予定がない今日は朝7時に起きてみました。
昨日の残りのカレーを勝手に温めていると、母が起きて、雪降ってる?降らないんじゃない、降ったとしても夜だよ、なんて話をしながら
朝ごはんを食べます。
ご飯を食べると早速やることがなくなってしまったわたしは、散歩に出ることにしました。

外に出ると、容赦のない冬の空気が

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