万行寺

長野県佐久市にある浄土真宗本願寺派(西本願寺)の寺院です。寺報の住職法話を載せています…

万行寺

長野県佐久市にある浄土真宗本願寺派(西本願寺)の寺院です。寺報の住職法話を載せています。 https://www.mangyoji.jp

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  • 住職法話

    万行寺寺報の「住職つぶやき」のコーナーから始まった「住職法話」のバックナンバーを順次載せていきます。 当時の内容をそのまま載せますので、文面の誤りや不適切な表現もあると思われます。ご了承下さい。

最近の記事

2017/07 第103号「ありのままに、ひたむきに」

 歌舞伎の市川海老蔵さんの妻、麻央さんの死は、全国民が悲しみにつつまれました。三十四歳、幼い子を遺して往かれたことは、何とも言いようがありません。話題になったブログ(日記)に、闘病中のありのままの姿を見せることによって、多くの方が力をもらい勇気づけられました。  ところで、「人生は一度きり」という言葉があります。年を重ね、度々自分のこととしてズシンと重く感じることが多くなってきました。若い頃、突き進んでいた時代を思い起こしながら、前よりも身近に感じられます。特に、僧侶として人

    • 2017/04 第102号「結ぶ絆から、広がるご縁へ」

       三月九日付、信濃毎日新聞一面の『斜面』全文です。 「絆」は元々馬や犬をつなぎとめる綱のこと。夫婦などの断ち難いつながりを意味するようになった。東日本大震災発生の2011年、世相を表す漢字に選ばれている。声高な「絆」キャンペーンが響き渡った◆被災した宮城県東松島市の大学生片平侑佳さん(22)は翌年、思いを詩につづっている。高校3年の夏だった。〈潮の匂いは友の死を連れてきた(中略)もう一度だけ、君に会いたい。くだらない話をして、もう一度だけ、笑いあって、サヨナラを、言いたい〉◆

      • 2017/01 第101号「如来さまの御恩をいただく」

         我が家の娘は、昨年十二月で五歳になりました。この四月からは年長になり、もう小学校のことも考えるようになりました。坊守(妻)も共働きのため、普段家にいる私が、朝夕と保育園に送り迎えすることが常になっています。  しかし、特に朝の登園時間に間に合うように送り出す時が大変で、家の中がまさに戦場のようです。たとえば、出発の時間に合わせてやってほしいことが、なかなか出来ないで娘を叱ると、私のちょっとした言い方が嫌だったようで、もう何を言ってもしなくなってしまいます。そんなことが何度も

        • 2016/10 第100号「お念仏の声が伝えるもの」

           他県から移住されてこられた、あるご門徒とのお話です。典礼社からのご紹介を経て、今年二月に、九十七歳で亡くなられたお母様のお葬式をお勤めさせていただきました。初めてのご縁ということもありまして、故人のこともご遺族の方々の様子もあまりよくわからないまま、通夜、葬儀とお勤めを終えたような印象でした。  ただ一つ印象に残ったことが、故人のご主人がお経の最中に、口癖のように「なんまんだぶ」と何度もお念仏を称えていたことでした。続く節目節目のお勤めにもご自宅に伺わせていただくと、「なん

        2017/07 第103号「ありのままに、ひたむきに」

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          103本

        記事

          2016/07 第99号「いかなる昨日より 今日が尊い」

           プロ野球メジャーリーグのイチロー選手の、メジャー3000本安打が間近です。また偉業を成し遂げる一瞬です。  それにちなんで、先日、NHK-BS放送で「3000本へ!見せますイチロー全安打」という番組がありました。メジャーリーグ2030本までの全安打を、節目節目の記録やインタビューを含めて放送していました。「イチロー語録」とも言われるように、その番組でも、あらためて気付かされる名言ばかりでした。中でも、記録を重ねるごとに気になった言葉が、「この一瞬」とか「この瞬間」でした。こ

          2016/07 第99号「いかなる昨日より 今日が尊い」

          2016/04 第98号「信の一念・行の一念」

           我が家の娘は、四歳、保育園の年中さんになりました。物事の判断が少し分かるようになって、生粋な面も出てきました。先日も、食前のことばが無かったと逆に親が注意されてしまいました。しっかり子供に見られています。  そんな面もありながら子育てに励んでいると、一つ感じたことがありました。それは、子供はまだ未熟ゆえに、言葉と行動が伴わないことが多いということです。たとえば、玩具で夢中になって遊んでいて、私が「ご飯にします。手を洗ってきて下さい。」と言うと、「はーい!」と元気な返事が返っ

          2016/04 第98号「信の一念・行の一念」

          2016/01 第97号「「懐かしさ」にふれるということ」

           近年の、核家族、少子化といった社会問題は、当然のように仏事にも大きく影響を与えています。その中でも、葬送のあり方は、ここ数年の間に様変わりしています。「昔からこうするのが当たり前…」という俗習めいた言葉は、敬遠される時代になりました。  ところで、佐久市に万行寺の拠点を移し活動していますと、浄土真宗という宗旨にこだわってお寺を頼ってこられる方が多く見受けられます。取りあえず近くのお寺さんにお葬式は頼もうかといった方もおられますが、浄土真宗の教えは、離郷をしても、どこか「懐か

          2016/01 第97号「「懐かしさ」にふれるということ」

          2015/10 第96号「良い居場所をいただく「房舎施」」

           万行寺の活動拠点を佐久市に移して、この十二月で八年になりました。まだ本堂も無く、住居の一室を仮本堂にしているような状態ですが、狭いながらも門信徒方々と語らう場として少しずつ軌道にのってきたような状況です。  しかし、長野市で三百年余にわたって門信徒はじめ地域の方々にも愛されていた場所を離れ、何も所縁の無い佐久市という地にお寺の拠点を構えるということは、並大抵なことではありませんでした。まずは、地域の方々にお寺のこと、そして家族のことを知っていただくことから始まります。入口に

          2015/10 第96号「良い居場所をいただく「房舎施」」

          2015/07 第95号「明日ありと思う心の仇桜」

           お盆の時期は、お寺、お墓へと多くの方がお参りをされます。そこで、お寺では、境内のお掃除に追われる時期でもあります。特に、草刈りは欠かせないものです。お天気に左右されることなく、草だけは何をしなくても元気に生えてきます。刈った先からしばらくするとまた生えてきて、私も草刈りに追われています。  ところで、私は先月から、普段、空いた時間に、近くの臨済宗のお寺さんへ、主に草刈りのお手伝いに行かせて頂いています。裏に山もあるほど境内地が広いため、境内地整備の仕事をさせて頂くことになり

          2015/07 第95号「明日ありと思う心の仇桜」

          2015/04 第94号「この上ない『ご利益』」

           長野の善光寺で御開帳が始まりました。新幹線効果や天気にも恵まれて、最高の人出になりそうだという報道もされました。  この御開帳開幕に先立って、善光寺住職を務める、大勧進の小松玄澄貫主と大本願の鷹司誓玉上人が、それぞれ記者会見をしました。その内容が、三月三十一日付の信濃毎日新聞に掲載されていました。その中でも、鷹司上人のお言葉に共感するところがありました。  それは、御開帳に来て食べ歩きとかグルメに注目が集まりがちですが、せっかく間近に拝めるように、仏さま(前立本尊)のほうか

          2015/04 第94号「この上ない『ご利益』」

          2015/01 第93号「♪縦の糸はあなた 横の糸は私…」

           昨年の大晦日、恒例の紅白歌合戦。皆さんはご覧になりましたでしょうか。今回、私が注目したのは、NHK朝ドラ「マッサン」の主題歌を歌う中島みゆきさんでした。昔から、その歌い方と、特に独特な世界観をもった歌詞にはファンが多いようです。  その紅白歌合戦で、クリスハートさんが中島みゆきさんの「糸」という曲をカバーして歌ったことも話題になりました。元々は、中島みゆきさんが天理教の方の結婚式のために書き下ろした、二十年以上も前に作られた曲だそうです。今でも、結婚式には欠かせない曲になっ

          2015/01 第93号「♪縦の糸はあなた 横の糸は私…」

          2014/10 第92号「御恩「おかげさま」の生活」

           終わりの「お知らせ」欄にふれましたが、先日、SBCラジオ出演のための収録を行いました。ラジオですから、顔が出るわけでもなく、後で編集が出来るにもかかわらず、緊張して今は何を話したか覚えていないような状況です。アナウンサーからの問いかけに答えていくという流れでしたが、プロの編集の技に期待をして聴かせていただきます。  収録の最後のほうで、私から一言ということで、次のようなお話しをさせていただきました。  それは、「おかげさま」という言葉についてでした。社会経験も何もかも未熟な

          2014/10 第92号「御恩「おかげさま」の生活」

          2014/07 第91号「お葬式に子や孫を」

           開教のため、長野市から佐久市にお寺の拠点を移して六年半になりました。慣れない地に転居をしてみると、正直なところご近所の方とのお付き合いも大変です。特に、順番でお役などが回ってくると、初めての事ばかりで面倒で厄介なものだと愚痴もこぼしたくなります。  話しは変わって、佐久の観光名所にもなっている〝ぴんころ地蔵〟があります。健康で長生きして(ぴんぴん)、寝込まず楽に往生する(ころ)をヒントに命名されたそうです。家族に面倒や厄介をかけずに往きたいという願いが込められているのでしょ

          2014/07 第91号「お葬式に子や孫を」

          2014/04 第90号「仏事の食事〝お斎〟」

           佐久地域では、仏事の時の食事を〝灰寄〟と、独特な言い方が広まっていますが、全国的には〝お斎〟と言われています。この『斎』の謂われは諸説あるようですが、『斉』という字にならって「凸凹が無く等しくそろっている。そろえる。ととのえる。」と言った意味があり、故人を縁に集まったものが、等しく同じ食事を頂き、同じ身となり血となることであると聞いたことがあります。  話しは変わりますが、先月で終わったNHKの朝ドラは「ごちそうさん」と言います。毎日観るのは大変ですが、このドラマは最初から

          2014/04 第90号「仏事の食事〝お斎〟」

          2013/09_10 第89号「大切な方を亡くすということ」

           葬儀のお経の後、法話をさせていただきますが、「○○様は、阿弥陀如来に導かれ浄土へご往生されました」と、決まったお話になってしまいます。変わらないお話で、ある方には楽観的に捉えられているのではと心配してしまうこともあります。  それは、大切な方との別れによるご遺族の悲しみや苦しみを乗り越えられるようなことばが見当たらないこと、また、亡くなると同時に、通夜、葬儀といった儀礼的な席が待ち構え、そんなことを考えられる余裕が無いからでしょう。しかし、決まったお話でも大切な仏の教えをし

          2013/09_10 第89号「大切な方を亡くすということ」

          2013/08 第88号「随い順ずる心」

           この八月二十七日付の信濃毎日新聞に、「八十六歳シスター生き方を指南」と題し、渡辺和子・ノートルダム清心学園理事長の「置かれた場所で咲きなさい」という本の紹介記事がありました。内容は、自身のこれまでの人生で感銘を受けた言葉や詩などを紹介しながら、自分らしく前向きに生きるすべを平易に説いているのが特徴で、少し興味があるので買ってみようと思っています。  続けて、記事によると「暗い表情を出さずに生きる。自分に与えられた環境、ポジションを嘆かず、その場で〝咲く〟ことを説く」とあり、

          2013/08 第88号「随い順ずる心」