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2016/07 第99号「いかなる昨日より 今日が尊い」

 プロ野球メジャーリーグのイチロー選手の、メジャー3000本安打が間近です。また偉業を成し遂げる一瞬です。
 それにちなんで、先日、NHK-BS放送で「3000本へ!見せますイチロー全安打」という番組がありました。メジャーリーグ2030本までの全安打を、節目節目の記録やインタビューを含めて放送していました。「イチロー語録」とも言われるように、その番組でも、あらためて気付かされる名言ばかりでした。中でも、記録を重ねるごとに気になった言葉が、「この一瞬」とか「この瞬間」でした。これは、記録においても、川の流れのように絶えずここで終わることなく、この一瞬、この瞬間で移り変わっていくのでしょう。
 日米通算4000本安打達成の会見では、「結局、4000という数字が特別なものをつくるのではなくて、記録が特別な瞬間を作るのではなくて、自分以外の人たちが特別な瞬間を作ってくれるものだというふうに強く思いました」と言っています。
 日米通算2000本安打では、「この日のことは引退してから楽しむべきこと。現役である限りは、過去に起きたことを懐かしんではいけないということをモットーにやっています」と言っています。
 さて、お題の法語は、真宗教団連合発行の法語カレンダー、二〇〇五年の表紙のことばです。原始仏典に、過去・現在・未来のあり方を示された「賢善一夜の偈」という一節があります。
 過去を追わざれ
 未来を願わざれ
 過去はすでに去り
 未来はいまだ来らず
 ただ現在の法を
 その場その場で観察し
 動揺することなく
 よく知って修習せよ

私たちは、どうしても現実から逃げて、今の自分を顧みることなく、「昔は良かった」と懐かしがることがよくあります。過去にとらわれたり、未来を夢見たりして、今を生きることをおろそかにするほど愚かな生き方はないということです。昨日があって今日、今日があって明日という、一緒の流れの中にある今日ではなく、昨日と明日を共に担う今日といった見方なのでしょう。
 イチロー選手の「この一瞬」「この瞬間」という表現からも、今の我が身をよく見て、怠ることなく努めなくてはと教えられます。

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