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ハーバード教育大学院の春学期の授業を決めました

この記事はこんな方向けに書いています:
・ハーバード教育大学院の授業がどんな感じなのか知りたい
・私がこの半年間教育大学院で何を勉強するのか知りたい
・アメリカではどんな教育トピックが上がっているのか知りたい

ハーバード教育大学院での1年間も折り返し地点を突破しました。
2回目で最後の授業選択を終えたので、秋学期同様、春学期も私が教育大学院でどんなことを学ぶ予定なのか紹介していきたいと思います。
↓秋学期の授業についてはこちらをどうぞ!


私オリジナルの春学期のスケジュールはこれだ!


春学期は大体1日に1つ授業を取ります。


秋学期のときに春学期の授業の予想もしていたのですが、改めて眺めると「だいぶ落ち着いたね!」という感じです。
春学期はほぼ1日に1つ授業を取るというペースにしたのですが、今から考えると秋学期はどうやって1日に3つの授業をこなして、課題もやって、遊びにも参加していたのか分かりません…無知のパワーというものです。
それぞれの授業について説明していきます。


学校をデザインします!


春学期の中で一番自分がワクワクしているのは、Linda Nathan先生の「Building a Democratic School: School Design Workshop」です。
Linda Nathan先生は秋学期からDeeper Learning Boston 2022のカンファレンスや、秋学期後半の「Schools in Action: Observing, Reflecting, and Acting in a Time of Crisis」でもお世話になっていて、ボストン近辺で4校の立ち上げに関わったことがあるパワフルな女性です。
秋学期後半の授業は去年開くのが初めてだっということで手探り感がありましたが、春学期のこちらは15年以上続く伝統的な授業で、過去に学校を設立した卒業生の話なども色々聞けそうです。
ハーバード教育大学院に来て何度も思いましたが、実際に学校を立ち上げた経験がある人が当たり前にいて、その経験を大学で教えてくれるなんて、本当にありがたい環境です。

もう一つワクワクしているポイントとしては、なぜか大学院で仲良くしている友達がたくさんこの授業を取っていることです。
秋学期後半から引き続き取っているのは4人だけなのですが、自分のルームメイトやDeeper Learningの授業が一緒だった友達がいて、初回の授業で半分以上は既に知り合いでした。
自分の友達は学校を立ち上げることに興味があるという共通点があったのか〜と新たな気付きになりつつ、お互いの学校についてフィードバックするのが楽しみです。


みんなでワイワイ輪になってフィードバック。


自分がこの授業の中で探究しようと思っているのは、特定の学年に向けた「学校」ではなく、Deeper Learningの異学年の概念を拡張して、中学生〜大人まで遊ぶように学び、自分の進路について話し合って実現していける第三の学びの場です。
「全体性」「学びの共有」「行動&共創」を3本柱として考えていて、そこにアウトドアの要素やプロジェクトベースドラーニングの実践を含めたいと考えています。
ここに来ると没頭していて、気づいたら時間が経っているような学びのディズニーランドのような場所を考えています。
詳しくはstand.fmでも話しているので、こちらも聴いていただいて、もし関係ある方がいたらお話しさせていただけると嬉しいです!



認知科学を深めます!


春学期に達成しようと思っていることの2つ目は、人がどう学習するのかという認知科学を深く理解して、他の教育関係者にも説明できるようになるということです。
金曜日にTina Grotzer教授の「Applying Cognitive Science to Learning and Teaching」という授業を取って、秋学期に探究したDeeper Learningの仕組みを掘り下げる個人プロジェクトをやろうと考えています。


Tina Grotzer教授の授業には、それぞれが学びやすいような工夫が散りばめられています。


ちなみに春学期は生徒が教授と相談して自由に学びを進めることができる「Independent Study」の一環として、Tina Grotzer教授にお願いしてハーバード教育大学院で有名なProject Zeroという研究所のNext Level Labプロジェクトに入れていただけることにもなりました。
私が取り組むのは「扁桃体ハイジャック(amygdala hijack)」で、扁桃体が過去に経験したネガティブな感情をとっさに思い起こして反応してしまう現象に対して、新しい学びを進めるときにどのように向き合うかというテーマです。
教育大学院で研究の経験を積むことを目標にしていたので、Tina Grotzer教授と一緒に進められるのが楽しみです。


アメリカ式のコーチングにも踏み込みます!


2021年からTHE COACHで学び始めたコーチングですが、せっかくコーチング本丸のアメリカに来たので、アメリカ式のコーチングも学んでみることにしました!
ハーバードにある「コーチング」という3つの授業のうち、ICFコンピテンシーなどを扱う「Essentials of Coaching for Leaders and Educators」という抽選制の授業に無事入れてもらうことができました。
THE COACH同様、課題として同級生とのトライポッドもあり、同級生のコーチングレベルの高さに感動しています。



Allison Pingree先生は教育大学院で初めてオフィスアワーをお願いした、とても優しい方です。


既に2回授業があったのですが、コーチングについて日本と違うなと感じる傾向をいくつかピックアップしてみると:

  • 元々目標達成のためのビジネスコーチングが盛んで市場規模も大きいが、最初は会社から仕事について相談するようにコーチングを受け始めた人も、セッションを続けるにつれてパーソナルな相談の方が多くなる(3%→76%)というビジネスレビューもある

  • 教育という文脈では、アメリカの教育制度は分権的で学校によって状況が異なるため、ある種ベンチャー企業のようで、校長先生の半分がコーチングを受けているという論文もあり、現場の先生が指導を改善するために受けることも日常的である

  • 授業に参加している大学院の生徒の層でいうと、アメリカ人以外には中国人やシンガポール人などアジアからの学生が多く、自己実現ということは最低限の欲求が満たされている前提で探究できるテーマなのではないか

ロバート・キーガンが提唱したImmunity to Changeを取り扱う週もあるようで、今からとても楽しみです。


アンケートを作れるようになるぞ!


時間と単位数の関係で、最後に選んだのは「Designing Surveys and Questionnaires: Principles and Methods」という授業です。
こちらは秋学期の統計でお世話になった、スーパーマンであるJoe McIntyre先生が教えてくれます。
ただし、秋学期の統計とは違って反転授業ではなく、月曜日に対面で講義があるので、秋学期の形式に慣れていた私にとっては驚きでした。

私は最終的に何かをつくり上げる授業が好きなようで、この授業でも春学期の前半を使って自分が必要なアンケートをつくり上げます。
この授業で面白いと思うのは、アンケートの手法や集計方法についてだけ学ぶのではなく、アンケートの母集団を考える上で必要なことや回答率を上げるためにできることを、先生も解説してくれながらもみんなでも一緒に考えることです。
自分の過去の経験から「このアンケートは回答しようと思った」「このアンケートはこういう理由で一部の人からしか回答を得られないのではないか」ということを客観的に考えるのがとても役に立ちそうです。


秋学期との違い


そういうわけで春学期は前半はコーチングとアンケートを極めつつ、後半は学校デザインと認知科学のプロジェクトに全力投球する形になりそうです。
春学期の授業を選んでみて、学びや反省が色々あったので、今後大学院に通われる可能性がある方に向けて最後に書いてみたいと思います。


インターンにチャレンジしたい場合は前もって準備する


ハーバード教育大学院のプログラムはほとんど1年間のため、1年目と2年目の間の夏にインターンを経験する機会がなく、すぐに就活の時期が訪れます。
私は研究に興味があり、元々は秋学期から研究室でインターンをやってみたいなと思っていたのですが、求人募集が公開されるようなポジションは競争率がとても激しく、私は敢えなく落ちまくりました…。

研究のインターンが募集される機会は学期始めが一番多いので、私は作戦変更をして春学期始めからのインターンを狙い、11月のサンクスギビング前後に、興味がある研究者にメールを送りまくりました。
ほとんどの人が会ってはくれましたが全員が空きポジションを持っているわけでなく、今回運良くTina Grotzer教授が探していたポジションに就くことができました。
アメリカでの就活はインターン経験やそれによるネットワークが大切とも言われているので、気になる業界がある方は早めの準備をお勧めします。


他の学校の授業を受けたい場合も戦略的に行動する


ハーバードでは自分の学校以外の学校や、MITなどにクロスレジスター(cross-register)することが可能です。
ただ、どこも自分たちの学校の生徒が最優先で、授業選択の期限が各学校によって違うので、思ったよりクロスレジスターするのは大変なんだなということを春学期は思い知りました。
(秋学期はパブリック・ナレーティブをケネディスクールで受けていましたが、あの授業は半分ケネディスクール、半分教育大学院が優先なので取りやすかったようです)

私も教育大学院の授業についてはとても満足しているのですが、機会があったらビジネススクールやケネディスクールの授業ももう少し受けて、違う学生とも話してみたかったな〜と思わなくもないです。
クロスレジスターを成功させるためには次のようなことが大切そうです。

  • 早めに教授にメールして、手続きや空き情報やシラバスについて確認する(人気の授業だと他の学校からは誰も入れない場合もあります)

  • 秋学期の前の週にあるコースプレビューに参加して、自分が興味ある授業のイメージを高めておく

  • 同じ授業に興味がある友達をつかまえて、情報交換する


春学期は思ったより疲れている


秋学期と春学期で一番違うと感じたことは、「思ったより疲れている」ということです。
慣れない土地での秋学期を勢いで突破してきたということもありますが、一番の理由はボストンの寒さと暗さだと思います。
今年は比較的暖冬ですがそれでも-22℃を記録しましたし、お日様は容赦無く8時台に昇り、4時台に落ちます。
冬眠願望を触発されるので、とにかく眠いです。

その上に教育大学院のような1年間のプログラムだと就活も入ってくるので、突発的な予定にも対応できるように余裕をもってスケジュールを組む方がいいのかなぁと思ったりします。
Deeper Learningのときのようなグループプロジェクトなどは、時間の融通も効いて元気がある秋学期に終わらせておくのがお勧めです。
私もFear of Missing Out(FOMO)がありますが、春学期はマイペースに、特に学校デザインの授業に注力したいなと思っています。
そして3月にはDeeper Learning San Diegoカンファレンスで念願のHigh Tech Highにも行けそうなので、そちらも楽しみたいと思います。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!
再掲になりますが、Deeper Learningという21世紀型教育をもとにした、学校デザイン・認知科学・コーチングについてお話ししたいという方はぜひお声かけいただければと思います。
教育関係者やコーチング関係者だけでなく、中学・高校・大学生本人や保護者の方、学校建築に詳しい方ともお話しできると嬉しいです。


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