見出し画像

統計に振られそうになっても、なぜ愛そうとしているのか思い出す

この記事はこんな方向けに書いています:
・数学が嫌い、または不得意だ
・勉強に対してコンプレックスがある
・数学を楽しんでいる人がどう楽しんでいるのか考えてみたい


私は学ぶことが好きだ。
学ぶことが好きで、教育大学院ではDeeper Learning(深い学び)について研究している。

こうやって書くと、こう言う人がいる。
「学ぶのが好きって、もともと勉強が得意だったんでしょ?」


日本は偏差値教育が行き過ぎていて、学ぶのが「好き」=「得意」でないといけないという思い込みが強いように思う。
私自身は小さい頃から図鑑や本が好きなこともあって、言語感覚は比較的強いし、自分の興味関心も大きい気がしている。
問題は数値感覚だ。


自分は数学は得意でない。
なぜ得意でないかも分かっていて、数字が頭の中に残らないのだ。
小学3年生までは日本にいたので九九は暗記していてすぐに出てくるが、その他の繰り上がり・繰り下がり計算ですら頭に残らないから、書かないと計算することができない。
お金の計算が絶望的なので、幹事や支払い係もあまり役に立てない。

得意ではないけど、「数学は嫌い」「なぜ数学を勉強しないといけないのか」と思ったことは一度もない。
むしろすべての教科において「これは比較的得意だな」「得意ではないな」というのは自分でも分かるのだけど、「この科目は好きだな」「嫌いだな」と主観を交えたことがない。
「帰国子女だから得意なんでしょ」と言われる英語でさえ、もちろん点数は取れたけど、人生で学ばないと自分の居場所がなかったから学んだだけで、特段好きでも嫌いでもない。


そんなわけで、得意でないにも関わらず、人生ずっと明るく前向きに数学にチャレンジしている。
高校生のときは数学I・II・A・Bをひいひい言いながらやり、大学生のときは必修の単位を落としつつも経済に取り組み、社会人になるときはもうまったく覚えていないけど頑張って簿記2級を取った。
全部やって思うのは、一向に得意にはならないけど一度も学ばないより他の人が何のことを話しているかの基礎は分かるし、無駄なことは一度もないということだ。
その前向きさを活かして、大学院では研究をするために統計にチャレンジしてみた。
不得意なりに得意な人の観察はよくしているので、数学が不得意な人間の統計奮闘記をお楽しみいただければと思う。


↑「何で数学を学ばないといけないんだろう?」と思ったことがある人は意外と多い。でも頭でお金の計算できた方がかっこいいし、絶対便利じゃん!


統計の授業の変わった進め方


今回ハーバード教育大学院では、「Introductory and Intermediate Statistics for Educational Research Applied Linear Regression」という統計の基礎の授業を受講することにした。
この統計の授業は分かりやすいことで有名で、ハーバードの他の学校からもわざわざ教育大学院に統計を受けに来る人も多いらしい。
すごく変わった進め方だったので、それを紹介したい。

  1. 統計をコードに実装するので、StataかRのどちらを使うのか自分で選ぶ(授業はどちらも対応)

  2. 火曜日に先生から講義と演習問題があるも、途中から任意参加

  3. 木曜日にティーチングフェローと生徒だけのセクションがあり、そこでグループを組んでリサーチプロジェクトを行う(こちらはずっと必須参加)

  4. リサーチプロジェクト以外にフルオンラインで毎週講義ビデオと演習が組まれていて、個人課題を提出する(これも必須)

  5. ZoomでのオフィスアワーやSlackを活用していつでもサポート体制あり

生徒から届いた写真を使いながら(!)ハーバードでの生活のTipsを教えてくれるJoe McIntyre先生。


この授業が分かりやすい所以は、特に5番目だと思う。
この授業の一番おったまげるところは、Joe McIntyre先生のサポート体制が確実にコールセンターよりすごいことだ。
Zoomでのオフィスアワーはほぼ毎日あるし、Slackは24時間体制じゃないかというくらいいつでも答えてくれる。
私はIT企業で働いたこともあるけれど、コーディングは誰か分かる人に聞けないと永遠にドツボにはまることが多いのだ。
Joe McIntyre先生の時間がどうなっているか分からないけど、いつでも聞けるというところがこの授業のすごいところだった。
(それだけでなくてマサチューセッツ州外から通勤していて、お子さんもいて、挙げ句の果てに生徒に毎回クッキーを焼いてきてくれるので、いったい先生が何人存在しているのか分からない…)


↑Rではこんなことができるようになります


自分が数学で毎回陥る罠


こんな感じのとても勉強になる授業なのだが、期末直前のサンクスギビング休暇あたりで、やっぱり統計がよく分からなくなってしまった。
毎回数学がよく分からなくなってしまう原因は「範囲をカバーすることに注力して、大目的を忘れてしまう」ことにある気がしている。



小さい理由をいくつか書き留めていくと:

  • Rのコードを習得することや課題を効率的に終わらせることに夢中になってしまった

  • 中学〜高校の数学は日本語で学んだので、英単語になるとあまりピンとこなかった(coefficientが係数だということを30回くらい辞書引いた)

  • リサーチプロジェクトでコーディングが得意な同級生がいたので、その子に頼りきりになってしまった

これらを総じて、今までの数学・経済・簿記からの経験からも思うのは、自分は「ある人がどういう経緯や文化からそう考えるのか」ということにはとても興味があるけど、「すでにロジックが決まっているもの」については自分のロジックを組み立てたいと思うほど興味がないということだ。
「すでにロジックが決まっているもの」については大枠が理解できれば満足で、細部については効率的に他の人の例を当てはめようとしてしまう。
その結果、とりこぼしたところがどんどん溜まり、期末発表や試験の前に「待てよ、よく考えたら全然理解できていないかも…」となるのがお決まりのパターン。


数学が得意な人を観察して思うこと


数学は自分の一番の興味分野ではないが、それでも日々必要なのは分かっているので、数学ができる人に憧れはすごくある。
人生で2人「この人は数学の神だ」と感激する人に会ったことがあり、そのうちの1人は自分の夫だ。
(小学生のときに足が速い子を好きになるみたいな憧れがある笑)
その人たちを見ていると、私にはないこんな特性があるように思う。

  • 数学という科目そのもののためにやっているのではなくて、日常の問題を何か解決したいからやっている
    →数学という授業を体験する前から、そもそも数学的な日常の問題にアンテナが立っている。夫はスポーツのデータブックを暗記して、選手を分析するのが好きだそう。(Deeper LearningのContactの部分になります)

  • 時間に捉われずに、数学のプロセス自体を楽しんでいる
    →どうしてこんなロジックなんだろう?と考えること自体が楽しそうで、答えを出すことは二の次。私はなるべく短時間で問題を完了したくなってしまい、答えを見てしまって結局解き方を体得しない。(Deeper LearningのConcentrationの部分になります)

  • 数学の大目的を理解している
    →自分の中で色々解こうとしたパターンが多いので、そのパターンを解くにあたってなぜ数学が存在しているのか、数学は何ができて何が限界なのかということを説明できる人が多い。(Deeper LearningのConceptの部分になります)


そう考えると、人にはそれぞれ個性として興味があることとないことがあって、数学が不得意だと思っている人は私みたいに「すでにロジックが決まっているもの」にあまり興味がないのかもしれない。
それでも数学の基礎知識はお金を始めとして物事をロジカルに考えるのに役に立つとは思うので、学んでいるときは数学を楽しんでいる人に教えてもらい、仕事などでどうしても必要なときは数学を楽しんで使ってくれる人にお願いするのが人生で一番いいのではないか。
数学を自分だけで完璧にする必要はないけど、数学が得意な相手と意思疎通ができるくらいには知っておくと、自分がやりたいことを成し遂げる力になると思う。


この授業でどれだけ統計が使えるようになったのはよく分からないが、今回も自分の不得意に向き合ったのでそのことに対しての自信はついた。
数学が不得意であっても、チャレンジしてもいい。
数学を好きになってもいい。
そもそも科目が「好き」「嫌い」とはなんなのか。
もっと数学ができるようになるといいな〜という気持ちは常にあるので、なるべく実践的な学びで体得するためにも、春学期は実際の研究で統計を活かす場面がほしいなと思っている。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
秋学期の授業の振り返りはここまでになります。
春学期も悔いがないように、好奇心が赴くまま授業を選びたいと思います!

この記事が参加している募集

数学がすき

すべての人が組織や社会の中で自分らしく生きられるようにワークショップのファシリテーションやライフコーチングを提供しています。主体性・探究・Deeper Learningなどの研究も行います。サポートしていただいたお金は活動費や研究費に使わせていただきます。