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ハーバード教育大学院の秋学期の授業を決めました

この記事はこんな方向けに書いています:
・ハーバード教育大学院の授業がどんな感じなのか知りたい
・私がこの半年間教育大学院で何を勉強するのか知りたい
・アメリカではどんな教育トピックが上がっているのか知りたい


9月に入り、秋学期が始まりました!
秋学期に取る授業が確定したので、この半年間私が教育大学院でどういうことを学ぶ予定なのかをお伝えできればと思って今回のnoteを書きます。
留学を考えている方はもちろん、そうでない方もぜひプチ留学気分を味わってもらえればと思います。


秋学期授業を選ぶまでの流れ


私は7月末からボストンに来ていますが、6〜8月は修士課程の生徒は全員参加必須の4つの授業を受けていました。
(4つの必須授業がどうだったかはスタエフからどうぞ)

8月末に必須授業が終わって、8月最終週がオリエンテーション。
事前に各コースの説明動画が配布され、加えて8月30-31日で25分ずつのコース説明に参加して、流れや雰囲気を確認します。
人数制限があって抽選があるコースや先生からの許可が必要なコースもあるので、それぞれの専攻の卒業要件にも気を配りながら12月までの時間割を決めていきます。

ハーバードで提供されている授業は誰でもコースカタログから見ることができますが、教育大学院の秋学期の授業だけでも131種類あります。
私も13個の授業のコース説明に参加したのですが、面白い授業ばかりで「1年間じゃ全然足りない!」状態でした。
色々な授業を天秤にかけて、抽選や許可をくぐり抜け、9月7日にやっと確定したのです…長かった…

追記:9月7日に確定したと思ったのですが、2週間授業を受けてみてDeeper Learningに一本化しようと決めて、9月19日に変更しました!
自分の考えがすごい勢いで変わっていくことにびっくりですが、新しい時間割の方が余裕があるので、一つ一つ丁寧に頑張りたいと思います。


私オリジナルの秋学期スケジュールはこれだ!


選びに選び抜いた、私オリジナルの秋学期のスケジュールはこちら!


火曜と木曜が重めです。



秋学期は6つの授業を取るのですが、大学院入学前に取ろうと思っていた授業は正直2つだけです。(うち1つは専攻の必須授業)
どんな考えでそれぞれの授業を選ぶことにしたのか説明していきます。


Deeper Learning(21世紀型教育)をやります!


私の秋学期のメインテーマは、「Deeper Learning」です。
AIを使った「Deep Learning」は日本でもよく聞くと思うのですが、「Deeper Learning」は「21世紀型教育」のことで、プロジェクトベースド・ラーニング(PBL)や国際バカロレア(IB)など典型的な講義や試験の形式でない教育を指します。
私は大学院の願書でも偏差値重視でなく、生徒が自分で発言して手を動かす教育をやりたいと書いたので、Deeper Learningや関連した授業を4つ受けることにしました。


秋学期に一番取りたかったのは、自分の専攻所属でもあるJal Mehta教授の「Deeper Learning for All: Designing a 21st-Century School System」です。
Jal Mehta教授はDeeper Learningを実施している学校を回って、サンディエゴにあるPBLで有名なHigh Tech Highという公立高校のSarah Fine先生と一緒に、研究成果について発表しています。

最初の授業から「なぜ21世紀型教育は導入されないのか?」についてディスカッション
アメリカは生徒の成績によって公立学校につく予算が変わることを初めて知った


↑Jal Mehta教授とSarah Fine先生の共著です


ボストンに来て色々なものに興味を持ったので、本当に授業を取るか悩んだりもしたのですが、コース説明に参加して「やっぱり自分の興味はこれだ!」と確信しました。
実際に授業を受けてみて、教育の歴史や制度について考えたり、アメリカだけではなく色々な国をベースにして考えたりするので、本当に楽しい。
この授業ではアカデミックな観点からDeeper Learningについて考えることができそうです。


Deeper Learningについてもう1つ取る授業は、Linda Nathan先生の「Schools in Action: Observing, Reflecting, and Acting in a Time of Crisis」です。
Linda Nathan先生はBoston Arts Academyなど4校を立ち上げたことがある実践者の先生で、春学期の「Building a Democratic School: School Design Workshop」がすごくいいよ!と卒業生にオススメしてもらいました。
秋学期の授業は後半の6週間のみで、今年度が初めての試みのようですが、Jal Mehta教授の授業と併せて取るのが楽しみです。


そしてボストンでは9月末に早速Deeper Learning Boston 2022というイベントがあります!
Jal Mehta教授がスピーカーの1人で、Linda Nathan先生がHale Educationという教育機関と一緒に企画・運営を行っているので、私も学生スタッフをやることにしました。
Deeper Learningについてアメリカでの色々な実践例を見て、将来的には日本で21世紀型教育をやっている学校と一緒に研究したいと思っています。
(ご協力いただける方はご連絡ください!)


Deeper Learningをする上で、生徒も先生も自分の全体性(whole self)を学校で発揮できる心理的安全性が重要だと思っているので、他に「Establishing Loving Spaces for Learning Preventing Bullying and Discrimination in US Schools」といういじめについての授業を取ります。
2週間受けたのですが、授業の中自体に食べ物が用意されていたり、全員が発言できるように配慮されていたりと、心理的安全性が担保される仕組みが埋め込まれています。
心理的安全性を体感しながらいじめを科学できるなんて日本の大学院ではなかなかない授業だと思うので、こちらもデータを使って考えられるようになりたいです。

毎回美味しいフルーツやパンを用意してくれます…私も自分の授業を持ったらやりたい。


最後に、私のLearning Design, Innovation, and Technology専攻の学生は全員が参加必須の「LDIT Program Core Experience」を取ります。
この授業では色々な学習デザインやEdTechに触れる予定なので、今学期取れなかった授業の内容も含めて視野を広げたいと思います。


どうやって伝えるか:データとストーリー


Deeper Learningに関連する授業以外は、「自分が調べて考えたことをどのように他者に伝えよう?」という基準で選びました。
残すは2枠だったのですが、博士課程やリサーチを視野に入れている私がまず取ることにしたのは、「Introductory and Intermediate Statistics for Educational Research」という統計の授業です。

この授業はおそらくハーバード教育大学院の名物授業の一つ!
なぜならばこの授業は統計入門編で、リサーチだけでなく教育政策やEdTechなど教育効果を測定できるようになりたい生徒が200人近くも履修するからです。
そして先生のJoeがとにかく面白い!
統計ソフトの使い方についてジョーク付きの動画をたくさん上げてくれるわ、夜中1時までSlackやZoomで質問に答えてくれるわ、毎回こだわりあるTシャツを着てるわ、生徒にクッキーを焼いてくるわ…
Joeが教えてくれるからというだけで統計が好きになりそうです。

夜23時までZoomで質問に答えてくれて、クッキーも作って、スーパーマンです。


そして秋学期に取れる最大コマ数まで枠は残り1つ…
せっかくアメリカに来たのでリーダーシップを育めるような授業も取ってみたいな〜と思っていたところで迷い込んだのが、公共政策のケネディスクールとの合同の、Marshall Ganz教授の「Public Narrative」です。

大人数教室ですが、教授と学生のやりとりがとても面白い授業です。


このパブリック・ナラティブは「自分の物語を心から語ることで、人々の感情を動かし、今行動するようにリーダーシップを発揮する」スピーチ。
Marshall Ganz教授は元々活動家で、この手法でオバマ大統領を選挙参謀として当選に導いた方です。

パブリック・ナラティブは「story of self(私の物語)」「story of us(私たちの物語)」「story of now(今やるべきことの物語)」から構成されるのですが、授業を受けていて自分は「story of self」はなんとなく語れるけど、「story of us」や「story of now」は検討もつかないと強く痛感。
この授業を通して自分が教育大学院で学んだことをどう社会に還元するか考えたいと思い、飛び込んでみることにしました。
教育大学院の友達だけでなく、政治や公共政策に関わっているクラスメイトもたくさんいるので、授業の続きが楽しみです。


春学期の予告


大学院の時間割はその人の人生を表していて面白いなと思ったので、今回は私の秋学期の分を公開することにしました。
他にもたくさん受けたい授業があって、とても秋学期だけでは収められなかったので、関心がある春学期の授業も書き出してみます。

春学期は朝型人間になりそうです。


専攻の卒業要件の科目をもう1つ取ること、統計を続けること、Deeper Learningの学校をつくるワークショップ以外に、国を超えた学びのデザインやコーチングについての授業も取りたいなと思っています。
でも生徒が高校〜大学〜社会においてどのように進路選択をするのかの授業にも興味があって、入りきらない…!
自分にとって取りたい授業がたくさんある教育大学院に進学できて、本当に恵まれていると感じます。


他の生徒がどんな科目を選んでいるのかも聞いてみた


そんな感じで私オリジナルのスケジュールを見てきましたが、教育大学院だけでなく、ハーバードの他の大学院やMITの授業も含めると選択肢がもっとあります!
自分の専攻はEdTechに興味がある人が多いので、こんな授業の取り方をしている生徒が多いです:

・学ぶ場(学校・オンラインラーニング・社会人教育など)をデザインする授業を教育大学院やMITで取る
・ファイナンスやマーケティングについての授業を教育大学院やビジネススクールで取る
・学校づくりやリーダーシップについての授業を教育大学院やビジネススクールで取る

学校をつくりたい人向けの授業がたくさんあるというのも、アメリカの大学院のダイナミックな環境を表しているなと思います。
面白いなと思った方はぜひコースカタログを見てみてください!

Deeper Learningやアイデンティティ教育で一緒に共同研究やイベントを行いたい方も、ぜひお問い合わせいただけると嬉しいです。
それでは秋学期、がんばります!

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多様性を考える

すべての人が組織や社会の中で自分らしく生きられるようにワークショップのファシリテーションやライフコーチングを提供しています。主体性・探究・Deeper Learningなどの研究も行います。サポートしていただいたお金は活動費や研究費に使わせていただきます。