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【クラファン挑戦】地方にもアーティストの居場所を作りたい

ご覧いただきありがとうございます!鹿児島県で地域おこし協力隊をしている伊藤愛(まなみ)です。

今回、人生で初めてクラウドファンディングに挑戦すると決め、プロジェクトに対する想いを綴るため久しぶりにnoteを更新しています。どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。

自己紹介

元々フリーランスのフルート奏者として活動する中で「音楽家が地方で生きていくには」に興味を持ち、「まず自分がやってみよう!」という勢いで大隅半島にある錦江町(きんこうちょう)に移住しました。

都会では溢れ、地方では足りない。

そんな音楽の需要と供給のバランスが崩れていることを知らずに、東京でフリーランスのフルート奏者として活動していました。

出身は大阪。通っていた音楽の学校はフランスのパリと、今まで都会にしか住んだことがなかった私。今住む錦江町にも、縁もゆかりもありませんでしたが、やりたい事をチャレンジするならこの町が良い!と思うキッカケがあり、移住してきました。

町内の小学校で、初めてフルートを見た子供達と。

実際に地域で始まった新たな活動。それは想像以上に充実していました。楽しいよ!みんなこっちおいでよ!と言いたくなってしまうくらい。

町に私以外の音楽家はいませんが、いないのなら外から呼んで来てしまえば良いのでは?と発想を転換し、そこから今の地方に興味を持つ他のアーティストのためにも何かしたい!という思いに繋がっています。

まず私が移住した当時、最初に躓いた「練習場所どうするか」問題。そこがクリアになれば、他の人にとっても移住のハードルが下がるのでは?と考え、場づくりに興味を持ち始めます。そして色々と調べるうちに、アーティスト・イン・レジデンスというものがある事を知りました。

...これ、私がやりたいことと一緒かも!

頭で考えていても何も始まらないな、とまずはアーティスト・イン・レジデンスをやってみることに。

これが今回、私が作りたいと言っているアーティストの居場所です。



アーティスト・イン・レジデンス

皆さんはアーティスト・イン・レジデンスを知っていますか?

アーティスト・イン・レジデンスとは、アーティストが一定期間ある土地に滞在し、常時とは異なる文化環境で作品制作やリサーチ活動を行うこと。またはアーティストの滞在制作を支援する事業のこと。

美術手帖ウェブサイト「アーティスト・イン・レジデンス」より

17世紀のヨーロッパに始まり、今では日本を含む世界各国に色んな形で存在します。彫刻専門のものや国籍を限定したのもの、超短期滞在なものなど...

どのレジデンスでも共通しているのが、普段関わりのない土地で活動するということ。アーティストと地域との繋がり方を模索していたので、「これが錦江町で出来ないかな?」と思いました。

アーティスト・イン・レジデンスの仕組み

アーティストは、住む場所とは別に活動場所を必要とします。全てのジャンルがそうではありませんが、大きな造形を制作する人、高さのある絵を描く人、動き回る人。別に用意するとなると、それだけお金もかかります

レジデンスとは、言わば住居+制作場所を安価で提供すること。そして受け入れ先にはアートで還元されたり、アーティストを通してその土地の良さを発見したり...お互いにとってWin-Winな関係を築くことができる仕組みでもあります。

正直、錦江町でわざわざやらなくても、既に魅力あるレジデンスが沢山あります。それでも、わざわざやりたいんです。

それは他でもない、地域に入って実際に活動する私だからやる意味があるとも思っています。

町内のサロンに演奏しに伺った時の写真。涙を流してくれた方がいて嬉しかったなぁ。

錦江町に移住して約3年。「音楽家が地方で生きていくには」を考え、色々実験してきました。

町の子供達に目の前でフルートを聴いてもらったり、お年寄りの集まる場に演奏しに行ったり、「眠るためのコンサート」など親しみやすいコンセプトのコンサートを企画したり。裏方としても、漫画ワークショップや指揮ワークショップの企画、レジデンスに参加したアーティストのイベントサポートなどを行ってきました。

特に、移住して間もない頃に伺った幼稚園で、初めて聴くフルートの音に目を輝かせる子供達のリアルな反応に触れた時、とても嬉しかった事を覚えています。「綺麗だね〜素敵だね〜」と一生懸命感想を伝えてくれて、心が温かくなりました。

実際にやってみたからこそ感じた「だったら良いな」や「気付き」が、いちアーティストとして同じ目線で共有出来る。これは、アーティスト自身が運営するレジデンスの一番の強みだと感じています。

そして、アーティスト・イン・レジデンスがやりたい!と言い続け実行する中で、じわじわと錦江町に広がりつつある理解の輪アーティストを受け入れることが出来る田舎町って、実際そう多くはないと思います。

町内の図書館で行ったイベント。

私が他のアーティストのために出来ることは、そんな場の提供だと考えています。ただただ安心してアートと向き合ってもらえる場。アーティストとしてこの土地に受け入れられていると安心できる場。

そんな、実際に感じたあったらいいなを着実に・地道に作りたい。そしてその思いを共有した人たちと育んでいきたい。

” 場 " づくりではありますが、それは運営側の意図や思いだけではなく、来てくれる人たちとの出会いと対話によって思わぬ形に発展・発酵していくもの。試運転をしてみたこの1年で気づいたことの1つであり、今後も大切にしたい思いです。

キッカケ

”地方移住”。アーティストに限らず興味がある人が増えている今、いざ田舎に行こう!地域に拠点を置きたい!と思っても、”いち移住者として”だけではなく、”いちアーティストとして"その地域に受け入れてもらえるのか。そこに大きなハードルがあると感じています。

実際、移住当初の私がそうでした。

行ったところで、音楽なんて必要とされてないかもしれない。
私に出来ることなんてあるのかな。

約3年前、色んな心配をしながら、見知らぬ土地に移住しました。

町内の幼稚園で演奏した時の写真。

そもそも移住したキッカケは、フリーランスの音楽家として東京で活動していた時に知った「地方と都会の差」でした。

高校卒業後、フランスで音楽を学び、帰国してからはフリーランスとして活動。同時に、東京芸術劇場が行なっていた若手音楽家のための「芸劇オーケストラ・アカデミー」に参加していたため、活動拠点は東京がメイン。差があることを考えたことがないばかりか、憧れの音楽の仕事がスタートして浮かれていました。

そんな中での世界的な感染症拡大。
音楽業界はもろに影響を受け、依頼されていた数ヶ月先の公演まで全て白紙に。

音楽家としてスタートしたばかり。
経験が浅いまま仕事を失い、日本での音楽の繋がりができる前に途方に暮れました。

「このまま待ってるだけで良いのかな?」
「そもそも音楽で何がしたかったんだっけ?」

何も分からなくなりました。

芸劇アカデミーのゼミ風景

そんな時、参加していたオーケストラ・アカデミーのゼミで、地方の話題が出たんです。そこで初めて知る、音楽が都会に一極集中しているリアルな現状。生の文化芸術に触れる機会の格差。

「地方では音楽家は生きていけない。」

そんな風に言われることがあります。それで苦い思いをしている人も知っていました。ですが私自身は都会にしか住んだことがなく、当時の活動拠点も東京。「知っている」だけで自分ごとではありませんでした。

地域にどうやって音楽を届けるか。
ホールで待っているだけじゃなく、音楽家自身が出向いていく必要があるんじゃないのか。

今まで知った気になっていたことが如何に狭い世界のことだったか、目が覚めた気分でした。

今まで考えたこともなかったけれど、簡単じゃないのは分かっているけれど、もし地方でも音楽家が出来ることが増えたら?生きていけるようになったら?
ワクワクしたと同時に、初めて「地域での活動」が視野に入りました。

ただただ音楽がしたかった学生時代から、「音楽で何をするか」が問われる職業としての音楽家。
その答えが見つからないまま活動していた私が、純粋にやってみたいと思えるものを見つけたように感じました。

芸劇で演奏した時の写真

そこから「地域おこし協力隊」という制度を知り、色んな地域のオンライン説明会や面談に参加しましたが、「芸術」と一言聞くと決まって渋い顔をされました。当たり前です。芸術は差し迫った地域の課題ではありません。

そんな中、錦江町だけが「面白いですね!」と言ってくれたんです。
もちろん、錦江町も芸術分野での募集はしていません。

下見で初めて錦江町を訪れたとき、初対面の私に当時の担当課長がこう言ってくれました。
「協力隊の3年間で、どんどん挑戦してどんどん失敗したら良い。尻拭いは俺たちがするんだから。」

町にいきなり来た見ず知らずの若者に、そんな風に言ってくれる大人がいることに驚いたと同時に、地域で挑戦するならこの町が良い。そう強く思い、数ヶ月後にはあっという間に移住していました。

協力隊1年目の写真

実際に約3年活動してきた今の感想は、率直にとても楽しいです!

「地域おこし協力隊」という立場で、自分がやりたかった事にどんどんチャレンジさせてもらえる環境。「こんな事がしたい」と相談すると、「いいね!やってみたら?」と応援してくれる役場の人たち。3年前の私が想像もできなかったワクワクする毎日を送れていて、本当に楽しいです。

最初はもちろん「音楽家…?」と不思議に思われることもありましたが、色んな場所で演奏させてもらったり、芸術家の現状や想いをお話ししたり。そうするうちに、「音楽家が町に来た」から「たまたま町に住んでいるお姉ちゃんの職業が音楽家」になり、今までよりも「音楽家」という職業を身近に感じてくれている実感があります。

そんな ”いま実際に地域で活動している私” だから、そんな ”受け入れてくれた錦江町” だからこそ、やりたかった ”アーティストの居場所作り” が出来るかもしれないとさらに強く思いました。

試運転

レジデンスをやりたい!」という思いだけで、1年前に試運転を始めました。最初は拠点もないため、アトリエとして廃校の一室を、居住場所として町内にあるシェアハウスの一室を快く貸していただきスタートしました。

役場や町民の方のサポートもあり、現在までに7人の、立場やジャンルの異なるアーティストさんに利用していただきました。画家や造形作家、ダンサーなど...そのまま移住してくれたアーティストさんも!

錦江町の自然と近い活動環境は、制作系の人にとっても、アートと向き合いたい人にとっても良い環境だと言ってもらえます。
私も実際に移住して感じた魅力だったので、来てくれたアーティストの方にも同じように感じてもらえているということが自信に繋がりました。

何だか順調そうにも見られますが、もちろん上手くいったことばかりではありません。たかが1年、されど1年。色んなことを経験しました。

私個人の思いで勝手に始めたレジデンス。だから「私が1人で頑張らないと」と力み、いっぱいいっぱいになりました。
それぞれの立場からの思いや期待に翻弄されて初めて、自分の芯の脆さに気付きました。
運営メンバーとしてサポートしてくれる仲間が次第に増え、思いを共有した人が一緒に考えてくれる心強さを知りました。

運営として実際に色んな人を受け入れる中で、沢山の気付きがあったんです。

黒板アーティストとして活動された兼平さん

あるアーティストさんが、こう言ってくれたことがあります。
「まなみちゃんがレジデンスをしてくれたから、私は錦江町を知れたし関わりを持つことが出来たよ。ありがとう。」

その時、ハッとしました。
私がしていることは、単なるアーティストの活動サポートじゃないんだ。

別れの時が来ても、「また遊びに来るね!」と笑顔で言ってくれた時、あぁ、やって良かったなと心から思うんです。

アートだけど、アートだけじゃない。「人を招く」という行為の奥深さを実際に体験できていることが、自分にとって財産だと感じています。

探り探りの試運転。ですが同時に、「私と同じように、この環境を求めているアーティストがいる」需要があることが分かったのは、とても大きな収穫でした。

レジデンスに滞在されていたダンサーの藤城さん(中央)

協力隊が終わってもレジデンスを続けたい

まだまだ始まったばかり。試運転してみたからこそ気づいたことを活かして、もっと良い居場所を作りたいという思いが湧いてきました。

思いたった時にすぐ活動できるよう、住居と制作場所が近いところが良いな。
でもリラックスもしてもらいたいから、住む場所と建物は分けたいな。
音を出しても何しても、ご近所迷惑を気にしないで良い立地がいいな。

折角来てくれるんだから、もっと充実したレジデンス滞在にして欲しい!
思いは膨らむばかりです。

協力隊最後の年。
これからも続けるのなら、運営する団体を自分で作ろう!と思い、現在、一般社団法人の設立準備をしています。

法人の名前は「あわい」。

あわい」には、「間」「合う」という言葉から、2つのものが重なるところ・交わった空間という意味があります。
身近なもので言うと、あわいはお家の「縁側」。外でも中でもない、けれどそこには風が通り抜け、空間と、そこに関わる人たちを優しく繋ぎます。

地方とアートを繋ぎたい」という移住当初からの思いと、それらが持つ境界線をやわらかく溶かしたいという新たな思い。これから設立する法人にピッタリだなと気に入っています。

隣町で演奏した時の写真

そして、借り物ではないレジデンス拠点を作りたい!と思いました。
家が隣接してなくて、建物が2つ以上あって、改修可能な物件。ですが、そんな条件にピッタリ合う場所なんてすぐには見つかりません。

「何か情報があれば教えてください!」行く先々で言い続け、数ヶ月が経った頃。いつも応援してくれている方から、「ピッタリな古民家、見つかったよ!」と声をかけていただきました。

古民家

改修予定の古民家は、錦江町の奥にある花瀬(はなぜ)と呼ばれる場所にあります。山と川に囲まれた自然豊かな土地は、避暑地としての来訪も多く、私も大好きな場所です。たまに寝転がって昼寝をするくらい好きです。

花瀬川で寝転ぶ筆者

古民家に出会ったのは今年の4月。隣近所が近すぎず、音出しも可能な大きな倉庫付きの一軒家があるよ!と教えていただき、「見たいです!」と即答。すぐに見に行きました。

改修予定の古民家

目の前には棚田が広がる、見晴らしの良い一軒家。敷地内には2階建ての大きな倉庫があり、隣の家は空き家。「これなら音楽系の人が来ても音が出せるし、倉庫はアトリエに出来る!」とすぐ夢膨らみました。

アトリエになる予定の倉庫の写真

家の中にはほとんど荷物がなく片付いていましたが、倉庫は今もこの状態。第一歩はみんなで片付けからだね!と仲間と作戦会議中です。

そして大家さんご夫妻にも初めてお会いできました。レジデンスとして今行っている活動や、これからやりたいこと。もし貸していただけるのなら家を改修したいことも説明しました。

すると「この地域にも活気が戻ってくるかもねぇ」楽しみにしてるね!とニッコリ笑い、レジデンスの拠点として使うことを喜んでくれました。大切な思いが詰まったお家を使わせていただけるだけでなく、活動を応援し、温かく見守って頂き心から感謝しています。

2階に繋がる場所を発見!そこには立派なスペースがありました

そしてこのお家には、レジデンスの拠点として名前をつけることに。

私たちの「あわい」という新しい名前はつけたいね。
大家さんが大切にされてきたお家だから、その思いは引き継ぎたいね。

アーティストと地域が深くゆるく繋がる、そんな「あわい」にこの「池水さんのお家」がなりますようにと思いを込め、「あわい池水邸」と名付けることにしました。

これからこの池水邸にどんな人達が来て、どんな場所になっていくのか。今からとてもワクワクしています。

プロジェクト内容

作りたいのは、「ここに居て良いんだ」と思える場所。いち移住者としてだけではなく、アーティストとして受け入れられ、安心して活動出来る場所です。

居住スペースとなる主屋は、プライベートは守りながらも滞在するアーティスト同士の交流が自然と生まれる場に。

倉庫は、ジャンルを狭めず受け入れたいという思いから、どんなジャンルのアート活動でも出来るようなアトリエに改装する予定です。

そしてオープンスペースでは、アーティストの作品展示やワークショップの開催、町民さんとの交流など、自由な使い方をしてもらえるような場所になる予定です。

完成予想の全体図

安心してご自身のアートと向き合ってもらえる場所。そんなレジデンスを改装・運営していくには、大きな資金が必要です。そのために、クラウドファンディングに挑戦することを決めました。

今回クラファンを通して頂く支援金は、下記の項目で使用させていただきます。

①改修費 150万円
・キッチンや個室を含む内装に関わる工事費と材料費
・エアコン等家具家電の購入設置費
・ゴミの処分費

②リターン 20万円
・イベント用食材等の購入費

上記に事務手数料等を含め、目標金額を200万円に設定しています。

そしてこのプロジェクトを通して頂いた応援のお気持ちも、これからの活動の活力とさせていただきます。

最後に

筆者

”都会>地方”ではなくて、地方だからこそ出来ることが沢山あります。良さが沢山あります。アーティストが地域に入り込むためのワンクッションになるような場所にするため、仲間たちと頑張ります!

好きな場所でアーティストも生きていける。そんな未来への小さな一歩になりますように。

最後まで読んで頂いた皆さま、本当にありがとうございます。この記事を読んで興味を持ってくださった方がおられましたら、とても嬉しいです。
本プロジェクトは、クラウドファンディングサイト「readyfor」にてご支援を承っています。どうかご支援のほど、よろしくお願いします!


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