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ここまで違う!日本と世界のボイトレ事情。ボイトレの質を上げるために、今必要なこととは?【長塚全先生対談#04】

🎧こちらから音声で聴くこともできます🎧

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今回は、都内のスタジオでプロの歌手や声優のレッスンを行っているボイストレーナーの長塚全先生と、サックスプレイヤー、沢井原兒先生のスペシャル対談、最終回の様子をお送りします。


対談では、全4回に渡って、長塚先生がボイストレーナーとしてのお仕事を始められたきっかけや、実際に指導されている理論的なボイストレーニングについて、また、今の日本のボイトレ事情やそれに対する思いなどをたっぷりと語っていただいています。
ぜひ最後までお楽しみください。
(以下、敬称略)

【対談者プロフィール】

長塚 全(ナガツカ ゼン)

1バンドのボーカルとして活動、俳優としてロックミュージカル「ピンクスパイダー」(グローブ座)や「TIGER & BUNNY THE LIVE」(Zepp DiverCity)「THE SOUND OFTIGER & BUNNY」(東京国際フォーラム)等へ出演、その後都内ボイストレーニングスタジオで5年間トップトレーナーとして活動、2018年から渋谷に自身の理論的ボイストレーニングを追求するプライベートスタジオをオープン。
音声学&発声学を基盤とし感覚的ではない理論的なメソッドで声や歌の問題解決とレベルアップを行い、多くのプロ歌手や声優を指導中。
また「芸能音声教育」の質の向上に向け音声や言語、感情を扱う大学教授達と連携を取り音声の研究にも携わる。


沢井原兒(サワイ ゲンジ)

20代より多くのジャズバンドに参加。
アルバムのプロデュースは40枚を超える。
矢沢永吉/RCサクセション/鈴木雅之/加山雄三/今井美樹/米倉利紀/REBECCA/中村雅俊/上田正樹/シーナ&ロケッツ/吉川晃司/小林克也 他、Stage Support / Produceを行う。
インストラクターとしてはヤマハ、音楽学校メーザー・ハウスなどで40年以上。現在は株式会社MOP代表、IRMA役員。


\さらに詳しい情報はこちら📖/

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\前回の対談記事はこちら!/

知られざるボイストレーニングの世界を掘り下げ、日本語の言語構造についてや、またそれを踏まえた上で、日本の音楽教育の現状と課題を総合的に考えるディープな内容となりました🤔

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1.ノドを使えば使うほど大切な「ボイストレーニング」


沢井:海外のビッグアーティストは、有名になっても常にボイトレを受けているという話を聞くんですが、これはなぜなのかというのを説明していただけますか?



長塚:僕は日本だと和田アキ子さんがずっとボイトレを受けているというお話を聞いたことがあって、やっぱりボイトレを受けていないと不安というのがあると思うんですが、ボイトレは結局筋肉を使って行うので、ちゃんとトレーニングとメンテナンスをしないと筋肉は衰えていくし能力は落ちていってしまうんですよ。


なので、歌を歌う回数を重ねれば重ねるほど、売れれば売れるほどトレーニングとメンテナンスを怠ってはいけないという面では、スポーツとボイトレは共通しているなと思います。


日本のアーティストは、売れると、なかなか時間を取れなくなってくると思いますが、しっかりボイストレーニングはやっていただいた方が良いと思います。



沢井:なるほど。私も今まで日本のポップスのアーティストと結構たくさんお仕事をさせてもらってきたんですが、やっぱりノドを痛めるっていう人が時々いるわけですよ。
それは多分、今まで感覚的にできていたものが、加齢とともに筋肉が衰えてくることでできなくなってくるのではないか思うのですが、そのあたりはどうですか?



長塚:僕の生徒さんで60代の地歌(※)の家元の方がいて、その方も芸大出身でずっと感覚でやられてきて、今まで声が出ないことなんてなかったみたいなんですよ。
でもやっぱり最近なんとなく声が出にくくなってきたということで、最初は病気かと思って調べたそうなんですが全く健康で、その時に初めて「ボイストレーニングを受けてみようかな」と思った、という形で僕のレッスンに来られたんです。


そのレッスン時に僕が感じたことは、長年やっていると筋肉に癖がつくので、それでだんだん声が出なくなってきているのではないかということでした。
「年齢による」というよりかは、どちらかというと職業病のような部分があったので、その場合は、いつも使わないような筋肉の動かし方をしてメンテナンスをすることによって、声が出るようになりました。

あと考えられることとしては、声帯の縁も、年齢を重ねていくと細胞が劣化して少しボコボコになってきてしまうんですよね。
そうすると声がガラガラしてきてしまうのですが、トレーニングをして、声帯を肌と同じように常にプリッとした状態で保っていけば、声もツヤツヤしたまま出すことができます。


実際に、テレビで雪村いづみさんが、ものすごいツヤツヤした声で歌われていて、勝手に「ボイストレーニングを常日頃からやられているんだろうな」と思うことがありましたね。



沢井:歳をとっても全然声が変わらない人もいますけど、やっぱりそういう人はちゃんとトレーニングをされているんですね。



長塚:おそらくそうですね、歌を歌うことを重ねれば重ねるほど、ボイストレーニングをやっていらっしゃるんじゃないかと思います。


2.ここまで違う!日本と世界のボイトレ事情


沢井:私が聞いた海外アーティストの話で意外だったのは、ロックミュージシャンがボイトレを受けているという話です。
海外では「プロになっても声帯をしっかり維持していくために必ずきちんとボイトレをやる」という考え方があって、そこにはロックもポップスもジャズも音楽ジャンルは何も関係ないということでしたね。


むしろロックなんかはシャウトしたりするわけで、そういう意味でいうとボイトレはすごく大事だというような話を聞きました。
それで「日本のロックアーティストはボイトレを受けているのかな?」と疑問に思ったんですが、そのあたりはどうですか?



長塚:最近の売れているロックアーティストの方は結構受けていらっしゃいますが、受けない方もいるんです。
その理由としては、日本のボイストレーニングって「やる意味あるの?」っていう印象が強いからだと思うんですよね。



沢井:なるほど。



長塚:正直日本のボイストレーナーは、9割以上がアルバイトでできる仕事で、ちょっと歌えて鍵盤が叩ければ知識がなくてもやることができる、という現状があるんですよね。



沢井:本当はそうではないんですよね?



長塚:全くそうではないんですけど、でも現状日本の一般的な仕組みとしては先ほど申し上げた通り、「歌えて鍵盤叩ければできる」というような認識かなと思います。
だから「ボイトレに行ってみてもよく分からなかったし、あまり変わらなかったし、これなら自分でもできるじゃん」っていうような感じになってしまうんですよね。
僕も昔ボイトレを受けた時にそのように感じたので。


そうではなくてしっかりした仕組みで教えてくれる先生が増えれば、海外のようにボイストレーナーの地位というものも上がってくるのかなと思います。
現状、日本のボイストレーナーの地位はものすごく低いなと思っていて、僕も「あー、歌の発声やる人ね」みたいな風によく言われるのですが、海外はそういう印象とは違うと思うんですよ。



沢井:そうですね。本当にボイストレーナーというのはプロフェッショナルな職業で、海外ではやっぱりステータスが高いという風に聞きます。



長塚:そうですよね。


3.音楽の種類によって異なる発声法

沢井:あとお聞きしたいのですが、ロックやポップスやジャズと比べて、クラシックというジャンルはやっぱり発声などが違ってくるんですか?



長塚:全然違うんです。
クラシックは、解剖学的にというか、人間の発声上普通には出せるような技術ではないんですよね。
クラシックを歌うためにはものすごく体や発声周りの筋肉を鍛えて、声帯に鞭を打つような感じで息をバァン!と当てていくような技術が必要なんです。
だからマイクを使わずにあれだけの声量が出せるんですよね。
結構特殊ですね、クラシックの声楽は。



沢井:そうなんですね。



長塚:はい。結構ボイストレーナーの中でも、声楽ベースでポップスを教えている方は意外と多いんですが、かなり発声の仕方が違うんですよね。
その違いを理解した上で教えている方ももちろんいらっしゃるんですけど、声楽の発声法を持ち込んでしまっている方もいて、そうするとポップスを教えていてもいわゆる「声楽歌い」のようになってしまうんですよ。



沢井:声帯の使い方が違うということですね。



長塚:そうですね。
声楽に比べると、ポップスやロックの方がちょっと喉を閉めて歌ったりもしますし、そういう部分から考えても違うかなと思います。


もっと大元の掘り下げた部分から見れば、「人間の発声の仕組み」という部分では同じと言えますが、その使い方が違いますね。
「異なるスポーツをやる」という感じです。


あとは日本で言うと、長歌・地歌とポップスは当然歌い方が違いますね。
最近のポップスだと鼻から息をあまり出さずに、のどちんこをグッとあげて少し硬めの音を出していくんですが、地歌・長歌は鼻から息を出して少し柔らかい音を出す歌い方なんです。


長歌・地歌は、電気を使わない生の三味線とか琴と一緒に歌いますが、
それに比べて今のポップスは電気を通したエレキギターやキーボードなどと一緒に歌いますよね。
電気を通した音は少し硬くなるので、その音の中で通る声を出すには鼻腔を閉鎖した発声が必要、
ということは海外ではすでに言われていることなんですが、
日本ではあまり言われていないし、知られてないですよね。


沢井;なるほど。色々な違いがあるんですね。



長塚:そうなんですよ。


4.声や楽器を「響かせる」ということ

沢井:私はサックス奏者で、身体がそこまで大きくないんですが、サックスの音は大きいんですよ。

自分ではそんなつもりはないんですけど、身体を使って音を共鳴させる癖があるんです。
サックスはサックス本体が鳴ると同時に器官が共鳴するからこそ倍音がたくさん出るという風に言われていて、それを若い頃に芸大の先生に教わったことで癖になって身についているんです。


長塚さんの声を聞いていると響いているように感じるんですが、発声に関しても「共鳴」や「響かせる」という部分が関わってきたりするんですか?



長塚:そうですね。
発声する際も、サックスを吹く際も結局音が大きくなるというところに繋がるのは、効率よく息を出して振動を作るという部分かなと思います。
その効率の良い息を効率よく吐き続けることで、空気振動が大きくなる=音圧が大きくなるということになるので、おそらくその調整ができるというのは耳がものすごく良いんだと思うんですよね。


耳で聴いて「このくらいの音になるには、どのくらいの息をどのくらい出すか」ということを調整できているということなので。
あとは、繊細に自分の身体を感じる感覚も優れているんだと思います。
それらが合わさることで、大きい音を鳴らすことができるんじゃないかなと思います。


僕も高校生くらいの頃から、「良い声出したい」という意識があったんです。
アルバイトしながらも「いらっしゃいませ」っていうのを、うまく発声できていないと思ったら、「この音がだめだったから今度はここを変えてみようかな」と考えて、その音を発声して耳で聴きながら調整していくようなことを続けていたら、癖になっていったんですよね。



沢井:ということは、常に耳で聴くのと同時に自分の発声を身体で感じるという癖をつけておくのが良いということですか?



長塚:そうですね。
そのためには、例えば教え方として、よく「ノドを開く」という言い方をすると思うんですけど、喉を開くって実はわかりやすそうで実は曖昧な表現なんですよね。「耳鼻咽喉科」の「咽」と「喉」って両方とも「ノド」って読むじゃないですか。



沢井:はい。



長塚:最初の「咽」は口を開いた時に見えるのどちんこの部分のことで、「喉」の方はスコープを入れないと見えない喉仏の方のことなのですが、仕組みとしては両方とも開くことができるんですよね。


なのでひとつずつ、「咽頭の部分の開き方はこう」、「喉の方を開く時は仮声帯の位置をここにするんだけど、まずその状態がわからないからその説明から」というように丁寧にレッスンを進めていく必要があります。
直接見えなくてわからない部分を動かすので、その開いている場所と感覚から教えていかないと上手い発声にはならないかなと思います。



沢井:なるほど。サックスを教えるときも同じことを言うんですよ。
私は「ノドを開いて吹く」と教えるときにまずノドを締めた状態で吹いて、その後に喉を開いて吹いて音の違いを聴かせるんです。
ノドを開いた状態で吹くと音が全然違うんですよ。


長塚:やっぱりそうなんですね!面白いですね。



沢井:なぜノドを開いた状態だと音が全然違うのかと言うと、器官が共鳴しているからなんですよね。



長塚:そうですよね。



沢井:その感覚を感じてもらうために、レッスンでは、まず胸に手を当てた状態で声を出して響いているかどうかを確認してもらうんです。
そのあと、声が響いている状態になったらその感覚のままサックスを吹いてもらうとやっぱり音が良くなるんですよ。



長塚:サックスもそうなんですね!
喉仏の方のノドを開くと、ノドのところがパイプみたいになっているので物理的にそこが広くなって共鳴するんですよね。



沢井:はい。それで倍音が多くなればなるほど、音自体はふくよかになるんですよ。



長塚:そうですね。



沢井:その状態だと、例えばピッチが多少悪くても、あまり気にならなくなるんですよ。
逆に素人の人がサックスを吹いたときに音程が悪く聞こえるのは、倍音が少ないからそう聴こえるんですよね。



長塚:その「豊かな音」を出す時には、息を吐いていて、声は出していない状態だと思うんですが、息がノドを通って出てくる流れの中で、息に乗ってくる何かがサックスの音に影響しているということですよね?



沢井:そうですね。リード部分が振動して音が鳴っているわけですが、それだけではなく身体の中でも鳴っているという感覚ですね。
そして身体の中で響かせることによって倍音が増えるということです。



長塚:面白いですね!
リードのところで振動していて、その振動がまた口の中でも共鳴しあって増幅されているということなんですね。


沢井:そうなんですよ。



長塚:なるほど。
発声に関するものの中で、周波数帯というものがあって、フォルマントと呼ばれる周波数領域が人間だと大体5グループ出るんです。
そのフォルマント同士を近づけるという技をやるとお互いが同調しあって増幅しあうことによって、倍音がブワァーッと出るんです。
サックスでもそういうことをやるんだろうなということを今思って、研究したくなりました。



沢井:そうですね、そのあたりは割と共通しているなと思いました。


5.日本のボイストレーニングの質を向上させていくために


沢井:最後にお聞きしたいのですが、現状今までお話を伺ってきた中でも、やっぱり日本のボイトレは色々な部分で改善していく必要があると思うのですが、それを今後どういう風にしていくのが良いと考えていらっしゃいますか?



長塚:これはすごく難しい問題ですね。
まずはボイストレーナーひとりひとりの意識改革をしないといけないと思います。
感覚で発声をたくさんの生徒さんに教えている中で、「理論的なことは難しいから苦手だけど、結局うまくレッスンできているからそれで良い」と思われている方が多いのかなと感じます。


でも、感覚でできない人を上手くすることができてこそ、
僕は一流のボイストレーナーだと思っているんです。


プロの人は元々上手く発声できるので、感覚で教えていてもその意味を汲んでくれるんですよ。
その状態にある人を上手くできるのは当たり前で、全くできない人を上手くするというところが大事なので、そこに目を向けるようなボイストレーナーの意識改革が必要だと思います。


あとはしっかりとボイストレーニングの内容を整理して、勉強しやすい環境を整備することですね。
それときちんとボイストレーナーが横のつながりを作って、情報交換しあっていくということも大切かと思います。
イギリスとかアメリカだとボイストレーニング協会がちゃんとあって、しっかりスポーツ医学のようなものを学んでいないとボイストレーナーにはなれないんですけど、日本はそれがないんですよね。



沢井:それって資格が必要ということですか?



長塚:そうですね、その協会の資格のようなものがあるんですが、日本はそれがないので誰でもボイストレーナーになれてしまう現状があるんです。
その部分を整備していかないといけないと思います。



沢井:わかりました。
日本のボイストレーナーの質が良くなるように、これからも頑張っていただきたいなと思います。
今日は本当に長い間ありがとうございました。
勉強になりました。



長塚:こちらこそ、ありがとうございました。


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今回は、日本と世界におけるボイストレーニングの実態や、関わり方の違いについてお話しいただきました。
そして、現状を踏まえた上で日本のボイストレーニングの質を向上させるために必要なことについて、長塚先生のお考えを伺いました。

ボイストレーニングに関わらず、知りたい情報はインターネット等を通じてすぐに得ることができる時代ですが、情報が多い分、何を信じて実践していくかなどの判断は難しくなっていますね。

そのため自分で調べてやってみた結果、上手くいかずに諦めてしまうということもあるかもしれませんが、今回のお話を聞いて、そんな時はすぐに止めずに自分に合った方法や違ったやり方がないか、他の国ではどうなのかなど、視野を広げていき情報を取捨選択していく必要があるなと感じています。

また、今回の対談は、全体を通じて全く知らなかったボイトレの世界や現状、可能性を知るきっかけとなる、貴重なものとなりました。
長塚先生との対談は、惜しくも今回が一旦最終回となりますが、歌や発声にご興味のある方は前回以前の記事や、Twitter、Podcastもぜひチェックしてみてください。

次回も音楽にまつわる情報や音楽のプロ同士の対談をお届けしていきます!
お楽しみに😊

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