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海月里ほとり
2022年7月23日 19:14
昔、猫を飼っていたことがある。僕が生まれるより前からうちにいる、黒い猫だった。姉のように僕の面倒を見てくれていて、アルバムをめくると写真の中で赤ん坊の僕をいつも傍らで見守っている。 とても賢い猫で、僕が危ないところに行きそうになれば体を張って止め、僕が降りられないところに登って泣いていれば、親のもとに助けを求めて駆けて来たそうだ。さすがにその時のことは覚えていないけれど。 ただ、いつも暖かく
地を這う羽虫
2022年6月27日 19:15
幼い頃から母親との関係に苦労してきた。母は気分屋で、機嫌の善し悪しで態度が大きく変わるからだ。機嫌のいい時は無限に俺を甘やかす一方、虫の居所が悪いと俺を無視したり攻撃する。機嫌は常時変化した。普通の母親らしく振舞ったと思えば、一転して子供の人格を破壊するほどの暴言を吐く。それが俺の母親だった。その極端な例として、5歳の時、「死ね」と言われたことがある。きっかけは些細なもので、床に落ちた食べ物を