おいしいチョコレートは全部人から教えてもらった。

誰かのためのチョコレートを選ぶのは楽しい。

１月半ばから２月の頭にかけて、私は百貨店をハシゴして下調べを行う。好きな人にはおいしいチョコレートをあげたいというのが一番の動機なんだけれども、おいしいって確信するためには自分で味を見なければならない。でしょう？　試食させてくれるとこなんて極一部だし、去年なんか何種類チョコレート買ったかな、本来の目的を忘れるくらいに自分で食べた気がするもんな。去年は最終２つに絞って、最後までどっちをあげようか迷ったのち、箱の大きさでフランス育ちのチョコレートに軍配があがりました。もう一方は日本育ちの味で、箱にぴったり合う紙袋がなかった。味は日本育ちの方が好きだったのにな。贈り物の場合はパッケージも重要である。

今でこそ自分でチョコレートを探すけど、最初はなかなか手が出なかった。

チョコレートって高いもん。しかも安くてもそこそこおいしいし。人にあげる目的がなかったら、私はmelty kissとRummyだけで満足してたと思う。

おいしいチョコレートは全部人から教わった。おいしいんだって気づいたから自分でも開拓を始めた。実は値段とおいしさはあんまり関係ないのかもと思い始めている。私の「おいしい」は「食べやすさ」だって気づいたからだ。

最初に「食べやすいチョコレート」の存在を教えられたのは、大学生の頃だった。テレビでタレントさんが話していたと思う。メリーチョコレートの話。あれ誰だったのかなぁ……スポーツ選手だったかもしれないな。当時の私は百貨店に興味本位で探しにいって、そこで一番お手頃価格だった量り売りの板チョコ（もう売ってないみたい）を買いました。ドライフルーツとかミントとか弾けるキャンディみたいなのが入ったヤツで、一袋500円しなかったかも？　食べ過ぎても口内炎ができなくてびっくりしたのを覚えてる。

次に私の中でチョコレートの情報が更新されたのは、もう30代になってから。職場の同僚から、そこのマカロンが凄いんだって噂を聞いた。私はおいしいマカロンに出会ったことはなかったし、マカロンと言えば何となく甘くて丸いパステル色のお菓子、というイメージで、味の区別はほとんどついていなかった。そんな私がラ・メゾン・デュ・ショコラのマカロンを食べて、マカロンそのものを見直した。いや凄いの。値段もちょっとお高いけど、ここのは別物。マカロンの中にチョコレートが入ってて、そのチョコレートがこってりしててすっごいおいしい！　おいしいマカロン食べた覚えない人は、ぜひここのを食べてみてほしい、衝撃が走るよ！

マカロンの衝撃を経験して以来、私は百貨店の地下を頻繁にさすらうようになってしまった。とはいえ百貨店はお高い。そうそう手を出してはいられません。出してられるか！と思うんだけれども、たまに誘惑に負けちゃうんだよなぁ。

で、負けて成功した希有な出会いもある。

牟尼庵の焼きチョコレート。自分で食べる分だけちょっとずつ切り分ける、一見小さな焼き菓子みたいなチョコレート。焼いてある分うまみがぎゅうっと凝縮されてるというか……めちゃくちゃ贅沢な気分になるんです。あたたかいコーヒーや紅茶がとても合う。このお店が大阪の百貨店から撤退してしまったのが残念。クッキーも上品な味だったし、ホワイトチョコレートのチーズケーキがまた何とも言えないベージュ色の焼物みたいな色をしていて、緑色が濃い緑茶と合わせて配置すると素敵だった。

こうした出会いを経て、最近の私はチョコレートギフトには人の感情が出ると思うようになった。なんて言うか「テキトー」が難しい。雑に選ぶとテキトーだとバレてしまうのである。もらうチョコレートの質で、わぁ私テキトーに思われている、とがっかりすることもある。

もちろん逆に愛情を感じることもあるのである。

モンロワールのトリュフはやさしい。ヴィタメールはちょっとお上品。デメルは陽気でかわいい。そういうお菓子が私に似合うと思って贈られているのなら、すごく嬉しいし、それを遠慮せずにもらえるくらいの自分でいたいと思う。

チョコレートって不思議だな。おいしいだけなら多分数え切れないくらいあるんだよ。でも日本人は気持ちを伝えるお菓子にしちゃったから、そこに世界感や空気感？が上乗せされちゃった。人にプレゼントするならおいしいだけじゃなくて、もっと別の意味を付け足したくなる。みんな伝えたい気持ちが違うから、本当はチョコレートを選びたい人全員分の種類があっても良いのかも。

そして、今年、私が選ぶチョコレートはやっぱり「食べやすさ」重視。

ツマガリの津曲ショコラ。自分で食べるなら、本当は100ｇで袋売りされてる半生タイプのチョコレートが気軽で好きだけど、プレゼントするのなら多少格好つけたいのです。津曲ショコラは大きめの一粒チョコで、一口で食べてしまうのが勿体ない気がするんだけれども、味がやさしくて口溶けが良く、続けて何個も食べてしまう。口溶けが良いっていうのがポイントなんだろうな。すうっと溶けちゃうから、大きさが気にならない。

このチョコレートを贈ったらどんなふうに感じてくれるんだろう。

とりあえず雑に選んだんじゃないってわかってもらえたらそれだけで嬉しいな。おいしいを分かち合えたら更に嬉しい。

チョコレートの日の私は全力である。