見出し画像

私の実家は狭い

私の実家は狭い
私が帰省すると2DKの家に4人で暮らすことになる

私の部屋はない
私が帰省すると母と姉と3人で寝る
部屋のエアコンは壊れているので、夏は居間のエアコンを付けて川の字で寝る

家のすべての音は、どこにいても聴こえる
静かなのは皆が寝静まった時間しかない
各々の電話や趣味の時間も筒抜けなので、我が家にパーソナルなスペースなどない

静かな場所でないと勉強ができない私にとって、実家で受験生をするのは苦痛だった
テレビの音や話し声が聞こえる度に、壁を拳で叩いた
勉強をしたくてもできないし、家族からの協力を得られていないように感じて、ストレスの多い期間だった

私がやりたくて勉強していたのだから、私の苛立ちに家族を巻き込むのはもしかしたら不条理なことだったのかもしれない
でも、あの時は家にいるのが辛くて、東京の大学を志望していたこともあり、この狭い家を出て一人の空間で暮らすんだ、という思いでシャーペンを握っていた

東京の大学に合格し、一人暮らしの部屋を手に入れた
静かで、勉強も読書も好きなだけできて、友達と大声で電話をできて、好きなものを見て叫ぶことができる空間を手に入れた
私とあの部屋は一体となり、幸せや悲しみを乗り越えた
かけがえのないものだ

帰省して数日経つと、音がたくさんあり、プライバシーはない空間にストレスを感じる
一人になりたい、という願いはどうしたって達成されない


それでも私の実家はここしかなくて、仕方がないので母と姉と3人で寝る

昨夜は3人で布団に横になり、遅くまで話した
学校のこと、恋愛のこと、将来のこと
母と姉は、私の話をいつもたくさん聞きたがる
私は2人が楽しそうに聞いてくれるのが嬉しくて、なるべく盛り上がるような話し方を考える

お昼過ぎに起きて、ごろごろした
冷房の効いた部屋で、レースのカーテンを閉めて、皆が好きなMVをテレビで観た
何度も巻き戻し、歓声をあげながら

お腹が空いた頃、ママは、卵とコーンがたっぷり入ったチャーハンを作ってくれた
私たちが子どもの頃からお昼ごはんに食べてきた味だ
味付けはシンプルらしいけれど、私は何度このレシピに挑戦しても、こんなに美味しいチャーハンは作れない

お昼ごはんを食べ終わると、3人でまた布団に横になる
スマホを触ったり、ぼうっとしているうちに眠くなる
夏の昼下がりの、完璧に丸い円の中での至上のお昼寝

夕方に起きると、ママが午後のバラエティーをみていた
私もぼんやりと観てみると、結構面白かった





私の実家は狭い
やっぱり狭い
私たちの関係は狭い

でも、これも悪くないのかもしれない
私たちは、どうしたって家族だから
その温もりも近くで感じることができるのは、この狭い家だからなのかもしれない
私は、これを求めて帰省しているのかもしれないなと、思った

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?