『月曜の朝に』

きのうの晩

安い白ワインを

がぶ飲みしたせいか

頭痛が酷いので

きょうは会社を休む

有給はたっぷり残ってるし

どうせ必要とされてないから

気兼ねすることもない

始業５分前に

電話すればいいだろう

もういちど布団に潜りこむ

縁もゆかりもない

僻地のワンルームマンション

妻には逃げられた

子供を連れて

逃げられた

それも自業自得で

つまりは本社勤務時代に

加入していた映画サークルの

同僚の女性と

イイ仲になってしまって

それがバレたというわけ

けっきょくその女性のほうとも

大揉めに揉めて

本社からこの地へ

飛んでくる羽目に

組合を通じて抵抗しようと試みたが

所詮は自分で撒いた種

無駄に過ぎなかった

以前は寝る暇もなく

仕事にいそしんでいたけど

いまは脳内を

閑古鳥の鳴き声に支配されて

父はしんだ

たまに帰って看病していたが

いよいよ力尽きた

いまは早逝した母と

肩を並べて眠っている

不甲斐ない息子ですまない

以前は狂ったように

仕事に家庭にそれから趣味に

あらゆることに奔走していた

そういえば資格の勉強も

いまこの住まいにあるのは

電子レンジとやかん

それから座卓

テレビなんて観る気にならないし

インターネットも雑味しか感じない

最低限の衣服しかもたず

会社と部屋を行き来するだけ

そしていよいよきょうは

その行動すら拒んでしまった

天気予報がどうだか知らないが

窓の外は燦々と太陽が照っている

頭痛が晴れたら

何をしようか

予定はとくに

なにもないけど

（あとがき）

本作は、昨年書いたこちらの続編ということでお楽しみいただければ味わいが少しだけ深くなると思います。よろしくお願いします。