『何年かかるんだろう』

惑星Ｘに到着するまで

地球時間であと数ヶ月

僕はそれまでに

このミッションのバディ兼

恋人である

ティーガンにプロポーズをしないと

狭いロケットのなかで

まいにち顔をあわせる

生活を共にして

地球時間で何年も経った

ティーガンのほうから

期待している風もあり

もちろん僕だって

彼女と結婚したいさ

一刻も早く切り出せばいいんだ

僕が勇気を振り絞って

でもひとつだけ

それができない事情があって

僕は地球に

婚約者を残してきた

必ず生きて帰る

そしたら結婚しようって

当時の僕はそう言い放ったわけ

婚約者はずっと待ってるって

僕の目をまっすぐ見つめて

どうしたものかな

決めた

やっぱりこのまま

惑星Ｘに着いたら

ティーガンと結ばれよう

地球の婚約者

あの子のことは忘れるんだ

だって長い年月が過ぎた

きっと彼女も

僕のことなんて

だから今の恋人

ティーガンへしっかりと…

そうこうしているうちに

惑星Ｘに到着

地球によく似た

緑と水の豊かな星

住み心地がよさそうだ

僕はこの星で

ティーガンと新たな生活を

結婚してほしい

僕はそう伝える

涙を流して喜ぶティーガン

僕たちは晴れて

夫婦になった

そして地球にいる婚約者は

元婚約者に

「本当にごめん、帰れそうにないよ」

僕は元婚約者へ

そうメッセージを打った

このメッセージが地球へ届くのに

何年かかるんだろう