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『「ささささ、さーせん」』



俺より10歳近く年下の上司が

左遷を命じてきた


上司君

あなたが新人のとき

だいぶ俺はお世話しましたよね

でもそうじゃないんですよね

はいはいわかってますよ


お役に立てず

申し訳ありませんでした


命じられた瞬間こそ

辞めてやる!

って

喉元まで来たけど

まだ娘の学費と

家のローンがキツイもんでね

なんとかぐっとこらえて

住み慣れない土地へ

ひとり引っ越す覚悟を決めましたよ


本社での最終日

同僚たちも見守るなか

その上司君が俺に向かって


何を緊張したのか

「ささささ、さーせん」

と言ってきた


煽られたと受け取った俺はつい

頭に血がのぼり

平手打ちを食らわせてしまった


その後のことは覚えていない


皮肉にもいったん左遷はとりやめになり

もっときつい処罰が

この春

俺を待っているようだ


妻は泣き

娘は口をきいてくれない

平謝りだ


ごごごご、ごーめん




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