『「それはお前がホンモノを』

「それはお前がホンモノを知らないからだよ」

はじまった

友人お得意の演説

それはホンモノを知らないからだよってやつ

まぁ元はといえば

俺の発言が火をつけてしまったんだけど

「だってなぁ…旨いじゃん母ちゃんの手作り」

お前ん家はいいよな

ウチはちがうんだよなぁ

そもそも料理すらまともに出てこないから

「そのために帰省するって言っても過言じゃない」

年末年始の帰省は

カネもかかるし

疲れるし

そもそも実家って

帰っても案外退屈なんだよと

俺が口走ったわけ

友人曰くどうやら俺は

ホンモノの帰省を

味わったことがないらしい

そうですかそうですか

なんだかすいませんね

ウチの場合はさ

いついつ帰るぞって

あらかじめ伝えても

駅まで迎えがあるどころか

誰も家にいないことだってあるわけ

でもそれは悪いことじゃなくて

むしろ誇らしい

両親とも休める仕事じゃないんだよ

愛はあるぞ

感じてる

ただただ

実家にいても

退屈だってだけ

それが言いたかっただけ

ホンモノの帰省って

なあ

よくわからないよ