『内容にインテリジェンスそのものが欠けている』
やっと日記帳を手にすることができた
しかし綴られているのは
ほんの60時間
否
悪い癖だ
2日と半日分だけ
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A月1日
疲れが残っていたから昼近くまで眠っていた
食欲もさほど沸かなかったから
コーヒーを啜るだけにしておいた
暫く閉めっきりだった部屋のいくつかを全開にする
風が心地良い
友人へ電話をかける
急に何の用だと問われ答えに詰まった
A月2日
読みかけていた小説を開く
前半のあらすじがすっかり頭から飛んでいて
読む気が失せる
料理は嫌いではないけど得意でもない
デリバリーを頼む
かといってこれもあまり旨くない
近所を散歩する
あいもかわらない風景
もう少し刺激があってもいいだろう
A月3日
早めに起床し
スーツケースに荷造りをする
呼びつけておいた車に乗り込む
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結果
私のこの日記は
「スパイのオフ日記コンテスト」で
今年の銀賞を受賞した
副賞には
「今よりちょっとだけ危険なミッション一日体験」チケット
やったね
うれしい
<審査員長による寸評>
よくも悪くも平凡な日常が描かれている。普段の私たちの職務のような刺激的な日々とは無縁な様子が心地良い。一方で、スパイたるプライドゆえか必然か、長期間、自宅を留守にしていること、リラックスをしたかと思えばすぐにまた旅立つことを示唆している点も評価できる。惜しむらくは内容にインテリジェンスそのものが欠けている点である。今後に期待したい。
たしかに金賞のやつは
もうちょっと読み応えがあって
面白かった
来年またがんばろう