見出し画像

さぁ、どこへ行こう (旅程を組む・その1)


そうなのよ。そこが問題。一体全体、どこへ行きたい?

きっかけなんて何でもいいと思う。行きたい場所なんてたくさんあっていい。その土地に立っている自分を思い描いてみようよ。お金のことはまず脇に置いて、まずはヒラメキ、そしてトキメキありきだ。

私なんか最初の動機は「砂漠を歩いてみたい」というボンヤリとした欲求だけだった。なので意味もなく砂漠を求めてアフリカや中東、中国、インドなんかを訪ねてみたり。ホント、楽しかったですよ。まぁ、趣味性が強いですかね。マガジンの冒頭で宣言したとおり、やはり「好きに理由はない」のだ。

しかし想像してみてほしい。砂と太陽、星と風しかないところ。大きな砂丘。砂に残る風のかたち。過酷さと美しさが共存する場所。ときに完全に音のない世界。たまに風が吹けば音がするのだが、それは自分の耳に当たる風の音。さもなければ遠くとおくの小さなちいさな虫の羽音。おおぅ。ぞくぞくするね(しばし、おつきあいください)。

サハラ砂漠では、なんだか陽気なベドウィンの人たちとなぜか突然踊って歌った記憶と(みんなシラフ。宗教上禁酒の国だから)、ガイドのマホメットと満点の星の下でワインを飲んだ思い出(あるところにあるのだ、酒が。ええ、砂漠なら人通りもないからね)。タール砂漠では砂嵐にあいました。ネゲヴ砂漠では、ものすごくでかい満月の夜にラクダで移動していたら(暑いので移動は夜)、岩や砂にあたる月影がすごくクリアに浮き出てきて、まるで月面を歩いているみたいな気持ちになったこと。
砂漠と言いましても、砂ばかりの砂漠、岩ばかりの砂漠、砂利ばかりの砂漠と、いろいろありまして……(とまぁ、止まらないのでここまでにしますが)。

なので話を戻すと「あの人エッセイで、ギリシャについて書いてあったなぁ。いいところっぽかった」と、それだけの「ぽかった」きっかけで、たいしてイメージも知識も持たずにアテネへと飛んだこともある。街中にイキナリどかんとそびえるパルテノン神殿に目を見張り、霞の中にぽっかり浮かぶエーゲ海の島々に立ち寄ったりして、行って初めて驚いた。こんな美しいところが地球上にあるなんて! 

または写真集があまりに色鮮やかなので、ボルネオのジャングルを目指したことも。や、わかっていたけれども、バリバリのジャングルでしたね。ええ。わかっていたとも。まぁ大変だね、あそこは(と言いつつ、おかわりで2度行く)。
王蟲の子どものようなダンゴムシ(嘘。言ってもゴルフボールぐらい)。猿の群れをはじめとして、野生のゾウやオラウータン、マメジカなんていうウサギサイズの小さな鹿みたいな生き物がいて驚愕した。あとは歩いているだけで、人間の熱や振動を察知してタイガーリーチというヒルが飛びかかってきたりね……(雨期のみ)。

ほかにも「ダージリン! あの紅茶の!」というキーワードだけでインドの山岳鉄道(トイ・トレインという名のオモチャみたいな蒸気機関車)に乗って彼の地に行ってみたり。「モンゴルの草原でゴロゴロ転がってみたい!」だとか(羊やヤギのフン︎だらけで、とても寝転べませんでした)、「ピーピー島ってかわいい名前!」ってだけでも十分な動機だった。


あまり難しく考えることはない。それこそ自分の直感や好きという気持ちで踏み出せばいいのではないか。
サッカーやテニスなど、好きなスポーツを観戦しにスタジアムを目指してもいい。地元チームのスポーツ酒場を満喫するのも乙だ。勝利に熱狂している街を見るのも楽しい(サッカーのバルセロナが優勝した日なんかは、みんな車を神輿のように担いで喜んでいた……)。
アートが好きなら、好きな画家の作品が常設されている美術館を訪れるだけでは飽き足らず、その画家本人が歩んできた景色を自分の目で追ってみてはどうか。生家や生まれ育った町、どうしてあんな色が出せるようになったのか、どうしてあんな発想が湧くようになったのか。空の色や空気の質感、家々に飾られた陶器やタイルの色、咲いている花々の彩りから何かわかるものがあるかもしれない。
あるいは、リスペクトする革命家の足跡なんかを辿ってもいいし、意味もなく、シルクロードをさすらってしまってもいい。スイスデザインを求めて街の標識を写真に収め歩いてもいいし、おしゃれな北欧雑貨を探し歩く旅でもいい。幻の蝶、ブータンシボリアゲハを探しにいってもいいんじゃないだろうか。

皆がいいって言うんだもの、一度は観てみたい、ニューヨーク、パリ、ロンドン……。ベタだなんて言うなかれ。万里の長城にピラミッド。エッフェル塔に自由の女神、ピサの斜塔。みんなが凄いというものは、やっぱり凄いのだ。いや、言うほどたいしたことないかもしれない(……そんなものも、あるこたぁあるね)。
でも見てみたいじゃないの、この目で。そして「すごっ!」とか、「ショボッ!」とか言ってみたいじゃないの。やはり抑えておきたい名所って、たくさんあるよね。


さて、いくつか思い浮かんだだろうか。ここからは現実的な話。
ある程度、候補が出てきたら「旅の行きどき」、つまりベストシーズンについて触れておこう。行きたい国が決まったからっといって、いつでも突撃OKというわけではない。

たとえば君が生粋の外国人だったとしよう。もし日本を訪れる理由が、どこまでも続く満開の「サクラ」のアーチをルックアップしつつ、花びらのシャワーをはらはらと受けてウォーキング……なんて自分をイメージしていたとする。しかしだ。寒さの染みる2月に来日してしまった場合。「ガッデム! この灰色のゴツゴツとした木がサクラですかい!? ピンクの空はどこへ!?」と○切ジェイソンのように叫んでしまうであろう。
またあるときは下調べせず、いきなり梅雨の日本に来てしまった。なんとクレイジーな湿度であろうか。毎日まいにち、レイン、レイン、レイン! この雨のせいで、いろいろ計画を変更せざるを得ない事態に陥ったとしたらどうだろう。
あるいは、うっかりお盆の時期やGWに来てしまったあかつきには、行楽地は長蛇の列。乗車率200パーセントの新幹線で移動して、ホテルはどこも満室。せ、狭すぎる、きつすぎる、国民が多すぎると、日本の印象もずいぶん違ってくるかもしれない。
真冬で外の移動が厳しかったり、真夏日続きでフラフラになったり……というのも、事前に覚悟していて来るのと来ないとでは、装備も心構えも天と地の差があるものだ。


サクラのように自分の見たいものが明確な場合は、そのベストシーズンを調べておこう。オーロラのシーズン、流氷のシーズン。ザトウクジラが見られるシーズン。エーデルワイスが咲くシーズン。リーグ戦開幕シーズンなど、いろいろ。

しかしシーズンがあまりにベストすぎるのも善かれ悪しかれ、人がどっと押し寄せることは覚悟しておくべき。
またハイシーズンという、その国のバカンスシーズンともなれば、宿泊費やエアチケットなど、軒並み高くなりがちだというデメリットもある。
日本だって夏休み、春休みからエアチケット代は急上昇して、ゴールデンウィーク、お盆、お正月とピークを迎える。それと同じ。

日本のGWやお盆のように、そこの国民行事やイベントも調べよう。
年末年始や1月1日なら多少の不便の覚悟はあるものの、不意をついてのうっかりアジアの「旧正月」で、レストランやお店がほとんどやっていないなんていうショックを受けた日には、お祝い気分どころかちょっぴり呪いたくなる気持ちに。正月よりも旧正月のほうを手厚く扱う地域も、日本と違ってまだたくさんあるのだ。
イスラム圏ではラマダーン(断食月)でレストランはぼはぼ閉まって、こちらも食堂ジプシーになってしまったとか。
フェスティバルや祭り、恒例イベントで、交通麻痺だとかホテルはどこも満室だとかということも。そんなお祭りに参加する時には、出発前に心得て予約や交通の手配は完璧にしておくべきだろう。


気候だってかなり大事。一体全体、行こうとしている時期はどんな季節なのか。どの程度の気温なのか。雨は、あるいは雪は降るのか。特にアジアの南方などは雨期と乾期が存在する地域があるように、常夏の国だと思ってなめてかかるとガラッと状況が変わる。

雨季だとせっかくのお目当ての海を前にしても、海水は常に濁りっぱなしだったり、台風シーズンのピークにはまってしまってはそもそも右も左も進めない。日本ほど排水設備が整ってない地域も多々あり、移動中の膝下は常に泥水……だとかは衛生的にも危険だ。あるいは自然が多い場合だと、ヒルが飛びついてくるなんて恐怖体験もある(ええ、先ほどのジャングルしかりです)。日本の梅雨とは比較にならないほど大雨が降るところもあるし、雨季といいながらも毎日夕方にザッと降って終わり、なんて地域もある。それは何度も言うが、場所によって本当に状況はまちまちなのだ。
唯一、付け加えるとすると。雨季のメリットは観光客が少ないこと。それを好んであえてそんな時期を狙って行く人はいいのだけれど、旅慣れていない、初めての海外旅行の人にはまずオススメしない。

雨季に限らず、天候と気温というのは同じ国の中でも地形によってぜんぜん違うこともあるので、都市別に確認しておくことをお勧めする。
日本だって、冬の北海道と冬の沖縄では、そりゃ違うでしょ。かたやバリバリのダウンたっぷりの防寒着にスノーブーツで、かたや沖縄では晴れの日には半袖にビーサンだ。あるいは本州でも、雪の多い日本海側と乾燥している太平洋側では、地図的には近そうに見えても山脈を挟むので、全然様相が違う。こんなこと他の国でもザラにあるのだ。気候が違えば、服装や装備が違う。つまり荷物の量がまったく異なるということにもなる。

すべては情報収集だ。
この時期はどんな天気か、祭りはあるのか。時期によりどんな値段設定なのかをきちんとネットでチェックしておこう。


(次は治安と安全確認について!)


ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️