わたしかわいいんで

わたしは大学の哲学の授業が好きだ。主にどうやって生きていくかっていう話を延々としている授業で、それについては今までわたしも考えてきたことなのでとても面白く授業を受けていたんだけど、授業の中で容姿の話が出てきた。話によると先生は家でテレビを見ているとき「この女優かわいいなあ」と言うと、奥様が「これ整形前の写真」と言ってその女優の整形前の写真を見せてくるという。先生自身も奥様に「なんかそれ嫌だからやめてよ」と言ったらしいが、結局その話は「でもまあ整形はしない方がいいと思いますよ」で終わった。

好きだった授業で、好きな先生だった。でもその瞬間に信じていたものが崩れたように思えた。もちろん好きなものや人に自分の気に入らない部分がないわけではないのは分かっているし、勝手に信じたのはわたしだし、歳も違うんだから物の捉え方にギャップがあっても仕方がないことだけれど、わたしは腑に落ちなかった。わたしの価値観とは違ったから、それだけは先生に言ってほしくなかったんだなあと気が付いた。

人の見た目、わたしの見た目、あなたには関係ない。欲しいものをお金を払って手に入れて悪いことがあるだろうか?そもそも人は変わっていくものだ。そのことを理解せず昔の写真を引っ張り出してきて「こんなに変わってるじゃないか!!詐欺だ!!」と言われたところで「だから?」としか言えない。考え方や生き方が変わるのと一緒に、見た目を変えて誰に不都合があるのだろうか。それが自然に変わったものじゃないから詐欺だなんていうのは無粋だし、何より当然のことに異議申し立てる人はあなたの方が自然の投げれに逆行しているのでは?と懐疑的になる。あなただって服装や髪形を変えるじゃない。

元あった状態をそのまま保つべきといったある種の自然至上主義みたいなものにはほとほと呆れる。反吐が出る。ここで必ず「親からもらった大事な体論」を展開するやつがいるが、わたしたちは親のためだけに生きているわけではない。自分自身の幸福を追求する権利がある。というか個人の自由なんだからあなたはあなたの親からもらった大事な体を勝手に大事にすればいい。押し付けてくれるな。こちとら親切の押し売りはお断り。

これは嫌味ではなく、先生夫婦は同じ価値観をもって生きているんだなと思った。それならばそれで幸せなことなのではないだろうか。人の数だけ価値観があるというそれだけだ。お互いに押し付けず、「あなたはそう思うのね、わたしは違うけど」と思いながら生きていこうよ。今回はあくまでわたしの価値観の話ですからあしからず。


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