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記事一覧
スタートライン 8(小説)
僕の店では、ハンディキャップダイビングをしています。体に障がいのある方へもダイビング講習をしている。ハンディのある、なしに関わらず、出来るならこの遊びをみんなにやって欲しいとずっと思ってきました。こんなに楽しくて癒される遊びって他にはない。ダイビングを僕は広めたいが、このハンディキャップダイビングも広めたいと考えている。しかし、なかなか広まらないのが現実だ。いくつか原因があるからなのだが、それら
もっとみるスタートライン 9(小説)
その男の第一印象は良かった。しかし、第一印象程あてにならないという良い例になった。
挨拶を交わした後、さっそくカリキュラムに入った。ハンディキャップダイビングを実施する為にはその団体に所属し、専門的な知識と技術を身につけなければならない。既にダイビングインストラクターであっても例外ではない。その団体のインストラクターとして認定される為に、講習会への参加は義務付けされている。
分厚いファイル
スタートライン 10(小説)
そういえば、学校の授業中はほぼ上の空であった気がする。漫画ちびまる子ちゃんの作者もそうであったらしいが、まるっきり同じだった。その決められた時間、教師の話を全て聞いた記憶がない。
ずっと話を聞くというのが久しぶりだった。しかし、やはり「ここではないどこか」へいくのに変わりがなかった。
これは、そういえばもう1つ理由があった。何かというと、話す人よりも速く文字を読んで退屈してしまうからだ。い
スタートライン 11(小説)
報道記者に密着取材を受けるのは初めてであった。海で開催されるダイビング講習に、共同通信社の記者が二名同行していた。僕や他の人たち、そして講習生役になってくれた人にもインタビューをした。寝る所もその記者と同じ、食事も同じという事もあり、こういう機会なんて滅多にないからこそ、抱えていた疑問をぶつけてみた。
共同通信社の記者は様々な現場に出向き、記事を作る。そしてその記事を全国の新聞社が採用し、ネ
スタートライン 12(小説)
その車椅子の人は高木さんという男性だ。年齢は自分より上だと事前に聞いていたが、後でわかったが同い年だと判明した。
彼は元々は車椅子を使う生活ではなく、成人してからの事故により手足が不自由になったと、本人が教えてくれた。そう話す彼の口調はなめらかだった。そこに悲壮感はない。僕と何も変わらない青年だ。自分が同じ事故にあったら、僕は彼みたいに話せるのだろうか?と考えながら聞いた。
生まれ持って
スタートライン 13(小説)
二人がかりで一人を潜降させていく。耳が痛くないか?をハンドシグナルとアイコンタクトで聞きながら、ゆっくりと降りていく。急ぐ必要はない。ハンディのない人より、ハンディがある人の方が耳抜きが困難な時があると学んでいたのが、事実だと潜りながら感じた。こちらが相手の鼻をおさえ、耳抜きを手助けする。途中、ダイビングコンピューターで時間を確認する。体温調整が困難なケースは通常のダイビングより潜水時間を抑える
もっとみるスタートライン 14(小説)
ダイビングを終え、服に着替えると僕達は食事をとった。メニューは釜シラス丼。大盛にしてもらったが、おいしくて一気に全てを胃に納めた。その席には記者も同席し、食事をすますと、高木さんへのインタビューを実施し始めた。記者が様々な質問を投げ掛けるが、高木さんは一つ一つの項目に対して丁寧に答えていった。
質問の中には「今回のダイビング、いつものダイビングインストラクターとのコンビではなかったり、講習大変