エンジニア採用が経営課題の今、何をウリにして戦略立てる必要があるのか
人材紹介事業で採用セミナーをしていると、採用方法についてのご相談を頂くことが多くあります。特に生産部門たるエンジニア採用は優秀な人材を採用して他社優位性をつけるという観点から経営課題として捉えている企業さんも少なくは有りません。近年ではDXの需要もあり、これまでITエンジニアを抱えて居られなかった会社さんからもお声がけ頂くようになりました。
一方、あまり市場感が分かっていない経営層やメンバーだとうまく採用できないのか理解してくれません。しばらく前に部下から「この会社の採用力は落ちたんですか?」と市場を無視して言われたときには思わず中高一本拳が出そうになりましたがグッと堪えました。
採用を左右する要素の一つが以前お話した会社力であり、エンジニア界隈の風評の変動やSNSによって形成されます。
採用戦略を練る上でまず最初に考えるべきは、徒に紹介チャンネルを開くのではなく何をウリにして行くかという戦略を決めることにあります。会社が変化するものである以上、このウリは定期的に見直していく必要があります。
共通して重要なことは嘘をつかないことです。面接官だけでなく、求人票担当者、スカウト送信者から人事担当者まで意識すべき事柄です。
今回私がお話させて頂くスタンスは下記です。
早速代表的なアプローチとその注意事項を見ていきましょう。
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自社のミッション・ビジョン
自社の指針への共感です。ミッション・ビジョンは事業を進める上での羅針盤です。事業の推進に迷いが生じた際、立ち返って判断基準にすることもできるこれらへの共感は最低限のことでしょう。
ここでの注意点は2点です。
前者は割とよくあるお話です。新卒採用で見られますがビジョナリーな求職者の方の場合、選考中の企業と合わせてその理由を聞いた際に「ミッション・ビジョン」が挙がることが多々あります。しかしその傾向が似ているとそれ以上そのポイントを押すのは難しいです。
後者は何も言えないです。
社会貢献性
自らのスキルや時間を社会のために使いたいという人に対し、如何に自社の事業が社会貢献に役立っているかをプレゼンする方法です。
一見綺麗な推しポイントなのですが、事業と本当にリンクしていなければ入社後の失望に繋がります。
殆どの事業が何かしらの社会貢献性をはらんだものだと思いますが、意外と語れない企業さんや採用担当者は多いですし、「それは社会貢献とは一般的には言わない」という内容もあったりします。面接官トレーニングなどで確認すべき項目でしょう。入社後の不一致を解消するためにもチームに浸透させておきたいポイントです。
また、手放しで喜べないのが過度な責任感を持った人の入社です。特に成長中の企業に多いですが、どこかしら制度上の綻びやツッコミどころはあるものです。彼らの責任感が健全に事業に向いてくれているうちは良いですが、ともすれば自社の制度や労務上の問題点をあげつらう人材にもなりえます。社会貢献性を謳い、共感してくれた人が入ったからと言って油断できないポイントです。
既存事業
事業に興味を持ち、共感してくれた上で入社してくれるというのは非常に健全です。選考の過程でサービスを触ってくれたり、その上で意見を言ってくれたりして愛着を持ってくれればPOにも受けが良いでしょう。
ただここで注意しなければならないのは下記のようなポイントになります。
会社そのものではなく事業でフックすると、事業との関係性と共に離脱する可能性が高いので注意が必要です。
新規事業
「新規事業をするんだが来ませんか?」というお話です。今回お話する中でも非常に注意が必要なものに分類されます。
まず挙げられるのは新規事業に配属する確約です。特に注釈なしに「新規事業をお願いするよ」からの既存事業の配属はまずうまく行きません。
会社の状況が変わることも想定しなければなりません。入社までに当該新規事業の方針、概要、あるいは開始そのものが変わりなく実行されるでしょうか。
加えて既存社員とのバランスにも注意が必要です。新規事業が花形に位置していた場合、既存社員が妬む可能性があります。新規事業が花形でない場合も困りますけども。なお、下記の書籍はPOのお話が中心ですがこのあたりについても言及されていますのでご一読をオススメします。
福利厚生
色々変わり種の福利厚生ってありますね。
福利厚生の難しいところは労働者の多様化が進んだ現在では全員に響くものはほぼ無いというところです。都心部でご近所手当は家族持ちには厳しいですし、子供の居ない家庭には子ども手当は関係ありません。打ち出し方によっては「家族持ちには理解があるが、独り者には厳しい会社」などのようにマイナスの側面も加味する必要があるでしょう。
また、福利厚生は経営を圧迫しがちです。一度始めた福利厚生を取り下げるのもまた社内のエンゲージメントに関わりますし、下手にその意思決定が外に漏れると風評や株価にも影響します。実にさじ加減の難しい項目です。
綺麗なオフィス
WEBページ映えするのですが、最近では綺麗なオフィスも多く差別化が難しいところです。
リモートワークの有無
ここのところ話題です。本noteでも何度か取り上げていますが面接でも9割型質問されます。持たないことを売りにするとは何とも哲学的です。
リモートワークに対する理解や方針については納得できるように解説できるようにしておくべきでしょう。
給与
最も即効性がある方法です。しかし下記のような注意点もあります。
フルリモートワークの普及により一波乱がありそうなのもこの給与です。Facebookは物価別に住む所によって給与水準を変えるそうです。社内で引っ越しムーブメントでも起きたのでしょうか。この動きが広がってくればこの年収合戦にも地理情報が加わって更に混沌としそうです。
ジョブタイトル
CXOなどのポジションで話をしてみるとDevOpsだった/いつまでもCXOになれず気がついたら別の人が就任した、という話は今でも稀に聞く話です。本人のキャリア的には怪談ですね。同様にCXO候補などで迎え入れた際に何を達成すればCXO候補からCXOに昇格するのかということはしっかりと握らねばなりません。
一緒に働く人
著名人を責任者に招き入れ、優秀な人を引き寄せるという手法は1999年株式会社オン・ザ・エッジの小飼弾氏の頃からあります。
そこまで尖らなくても面接官や内定承諾までに至る過程で誰に合わせるかというのは重要です。特に上長との相性は良いに越したことはないでしょう。若手には「教えてもらえそうな雰囲気」は重要です。
この人と一緒に働かせたいという動機づけはチームとして大切な要素ですし、現社員がその役割を担うことができれば即効性もありますし、コストも掛かりません。ただしその人が居なくなると一緒に居なくなるリスクもあります。入社後、そのリスクを踏まえたマネージメントが重要になります。
人をフィーチャリングする方法に自社イベントやテックブログなどの方法も挙げられます。詳しくは(気が向けば)別の回に譲りますがなかなかにコストが掛かる方法ですし、同士も必要です。
結局どうすれば良いか
かける費用にも依りますが、自社でできることから少しずつ始めるということに尽きます。自社や事業への共感に向けての設計をし、社内でリクルーターができるエンジニアを増やし、順次それだけではアプローチできない層に向けての飛び道具を用意する。そこに至るまでは受け入れるだけの土壌(制度や文化)も必要です。たまにラッキーパンチもありますが、そこでラッキーパンチを再現しようとするとドツボにハマります。
この組織づくりのあたりは現在の私の研究テーマになりつつあります。ご相談頂ければ何か気の効いたことが言えるやも知れません。
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