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感じ悪い採用増えてませんか?

 就職活動も転職活動もなのですが、阿鼻叫喚の声が聞こえてくるようになりました。そして空中戦を広げる悟空。

 景気が良く買い手市場だった2019年までの採用シーンに対し、氷水をぶっかけられた様相の2020年。急速な就職氷河期化と共に、予想はしていましたが売り手市場式の面接が増えてきているということかなと捉えています。2019年までは「面接とは双方の相性を確かめるためのものです」などと温和に説いていた人たちも、ゴリゴリに志望動機とか就活の軸とかシビアに見始めていて何だかなと。

 しかし2020年になったからと言って、そしてコロナウィルスの影響が経営に軽微で継続した採用ができるからと言って「俺たち強い。さぁ応募し給え。」という姿勢ではうまく行かないと考えています。

 今回私がお話させて頂くスタンスは下記です。

・ITエンジニアに特化した紹介会社の技術顧問
・エンジニア採用セミナーでのスピーカー
・自社メディアエンジニア採用責任者
・かつては偏見に満ちた不人気事業でリクルーターで超苦戦

会社力

 新卒だといくつかランキングがありますが、新卒一括採用の名残で取り敢えず応募している企業もあるので内定承諾を考える際の人気とはまた別でしょう。中途に関してはジョブ型採用の香りがしてくるのでランキングはなく、「採用がうまく行っているらしい」という風評を察知する感じになります。元気のいいスタートアップやベンチャーなども統計には出ない採用をしますし。

 セミナーなどで私がよくお話させて頂くものに会社力があります。これはエンジニア界隈で囁かれる風評です。会社力を構成するものは下記のようなものがあります。

・エンジニア界隈での知名度
・待遇(給与)
・福利厚生
・リモートワークへの理解
・OSSへの理解・取り組み

 上場しているとか創業〇年だ、などは新卒の親ブロックくらいでしか問題にならないことに注意が必要です。「上場したから採用が楽になったでしょう?」という経営層のコメントにいくどとなく遭遇しましたが、すべて気のせいです。どちらかというと株に興味をもっている一部のエンジニアにとってはSOがない分、むしろ不利です。

 エンジニア界隈での知名度は最近では打ち手が多様化しており、(費用・時間ともに)コストがかかる手法も数多くあります。テックブログ、エンジニアをフューチャリングした取材、DevRelを意識したイベント支援・イベント開催・勉強会主催/共催などなど。

 最近ベンチャーでも注目されているものはOSSへの取り組みでしょう。会社によってはいくらかOSSのcommitに勤務時間を割いて良いとか、手当が出る会社なども聞こえてきます。経営のことを思うと売上に直結するわけではないので、この制度を活用することによる採用実績の評価と、不景気にどこまで維持するかが気になるところです。

 リモートワークは私がここ数ヶ月で対応している面接のうち、ほぼ全員に質問を頂きます。詳細は下記コンテンツに譲ります。

 こうした会社力の強弱により採用のしやすさが変わります。会社力を表現したものが下記図です。ア〜オ群は求職者のレベルです。赤い矢印は採用にあたって各会社力の企業群が頑張らないといけない(オモテナシ採用)範囲です。

 会社力S。これはGAFAです。放って置いても応募が来る状態であれば非常に優秀なア群に対してオモテナシ採用すれば済みます。

 会社力A。六本木・渋谷界隈の著名メディア企業やユニコーン企業と呼ばれる企業群もそれなりに自然流入があります。非常に優秀なア群に加え、即戦力たるテックリード・高需要レアスキル・複数言語経験者であるイ群の一部をオモテナシ採用することになります。

 会社力B、Cになってくると広範囲に渡ってオモテナシ採用を展開する必要があります。経験が浅いメンバー層であるウ群であってもオモテナシ採用をしなければなりません。

 エ群は新卒ではないビギナー層です。オ群は後述します。

 前職のマッチングサービスの黎明期の採用はまさに会社力Cの状態でした。2010年代前半はまだまだ「出会い系」の色が強くどうしても警戒されます。「志望理由など容易しなくて良いのでまずはお話でもいかがですか?」というところから始めるスタイルは現在ではカジュアル面談などと呼ばれています。面接も一次面接から志望理由は求めず、「練習だと思って来て下さい」と連呼しながら面接確約(書類審査せずに面接をお約束するもの)を連発していました。ものすごく打率の悪い方法でしたが、それくらいしないと採用できないのが会社力Cの世界です。お陰様で後期ではマッチングサービスの概念が浸透し、実際に使ったことのあるエンジニアもジョインして頂けるなど随分浮上しました。

ウィズコロナ時代の会社力

 これがコロナショックを経てどうなったかというと、IT界隈で言えば影響はあったものの下記発表によると依然として求人倍率は5.84倍と高い水準です。

 変動はまだ刻々と起きている状況であり数値は自社でも算出している途中ではありますが、会社力と採用ターゲットには変化がありそうです。それが採用要件の上昇であり、冒頭の面接官の態度の変化に繋がっているようです。図示すると下記のようなイメージです。

 まず全体的に基準が上昇し、予算的にも2019年から一転してシビアになったため、教育が必要な層は優先度が下がる傾向にあります。

 エ群は非常に苦しい状況です。コロナウィルスに伴うパンデミック宣言が3月12日。その後ほどなくして緊急事態宣言でしたが年度末というのが非常にまずかったです。年度の切り替わりを機に退職宣言をしたエ群の方々は一定数居られました。

 オ群はR&Dです。2019年の後半から景気が悪化し始め、研究開発職、中でもここ数年投資が続いていたAI・機械学習部隊を縮小する企業(メーカーも含め)がその大小を問わず出ています。AI・機械学習界隈は2019年までは人口減少と業務効率化の打開策として期待されていましたが、データ活用・蓄積の難易度もありうまく行っていないケースも多々見られました。更にここ数年の「エンジニアを1年経験してフリーランス」という風潮がネガティブに作用し、経験の浅いデータエンジニアがフリーランス界隈でも見られるという状況です。

企業側はどう捉えるべきか

 ウ群、エ群、オ群が採用像であれば買い手市場になったかも知れません。しかし経営層や現場が欲しがる優秀層(ア群、イ群)はまだ売り手市場に存在します。

 それ以上にウ〜オ群を適当にあしらい、SNSなどで悪評が出回ってしまうことをリスクとして考えるべきでしょう。時折Twitterの人事クラスタでも回ってきますが、「(21新卒で)この時期に内定が出ていないなんて」などと発言するのは論外で22新卒以降にまで影響しかねません。

 採用の難易度は何も変わっていないですし、(大多数の)我々はGAFAではないのです。丁寧に接していきましょう。

求職側はどう捉えるべきか

 ア群、イ群を目指してスキルアップするのは勿論ですが、今の状況を打開するためにも企業情報をしっかりと収集し実務経験をつけるという選択肢を検討するべきでしょう。

 これはエンジニアに限った話ではないですが一人で集める情報には限りがあります。聞いたことのない会社であってもマッチング度が高い場合もありますし、自力で到達した会社がミスマッチの場合もあります。情報が集まる人材紹介会社を頼るのは新卒・中途問わずオススメできます。複数の紹介会社から情報を集める方も多いです。私も一社目で実らず、二社目で決められました。

 最後になりましたが、どんなに苦労したとしても月額15万円(額面)のアルバイトになったとしても、目の前の仕事をしていれば道は開けるという小話を貼っておきます。随分とボコボコになりましたがまだ生きています。何か励みになれば幸いです。

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