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ガラパゴス化した日本のBPRとDXに対する課題感と理念【三方良しの業務改善を実現するために】

本日はBPR・DX界隈で働いている私自身が感じているジレンマについてです。
私はBPR・DXコンサルタントとして活動していますが、先日この自身の抱えている課題感について言語化する機会があったので、ここに書いてみようと思います。

  • 自社・自部門の業務効率化に課題を感じている経営・部門長の方

  • 複雑な処理を必要とするのに給料は上がらないと感じている事務職の方

  • BPR・DX界隈で働くエンジニア、コンサルタント、営業の方

こんな方々向けに読んで欲しい!と思いながら書いてゆきます。

ガラパゴスDXがブルシットジョブを再生産する

私がコンサルタントとして一番課題に感じている事を一言で表したのがこちらです。

ガラパゴス化について

スマートフォン、特にiPhoneとAndroidが市場を席捲するまで、携帯電話業界において日本は世界とは異なる独自の進化を遂げていき「ガラパゴス携帯」等と呼ばれるようになっていきました。

これは世界標準じゃないから悪いということは決してなく、私自身中学~高校時代くらいにガラケー全盛期を体験していた身からすると、その多様性には大きな魅力がありました。

特徴的なデザインでガラケー全盛期を代表する【インフォバー】
(画像引用:wikipediaより)

世界では「ノキア」がスタンダードだった携帯電話。
日本はその世界市場から隔絶された状態でも激しい生存競争があり、NTTドコモが生み出したiモードを始めとした革新的技術や、上記インフォバーに代表されるような「デザイン」での差別化、ウィルコム社が「PHS」で対抗し、WindowsOS入りの電話型PCを発売するなど、今の携帯電話市場よりもワクワクするような楽しさ、面白さがあったように思います。

私は大学時代、これを授業に持ち込んで無双していました。
教室に1人だけネットに繋がった学生がいるチート技みたいな状態だったので。

しかし、現在における「DX」という金脈に群がるSaaSビジネスの隆盛のせいで、企業や官公庁の事務処理がガラパゴス化して行っているという点に私は危機感を覚えています。

世はまさに大DX時代

今の時代「DX」と名の付く商売は非常に儲かります。
私もその恩恵を受けているひとりです。
なぜなら官公庁・大企業がこぞってDX化に予算を投下しているからです。

富・名声・力。この世の全てを求めて多くの人が「DX」という名の海に漕ぎだしている
そう世はまさに…大DX時代!!

2018年に経済産業省が「DXレポート」にて「2025年の崖」というセンセーショナルなワードで企業に対し危機感を煽りました。
これ自体は決して悪い事ではありません。
しかし、悪戯に危機感が煽られた結果、きちんとした内容が伝わらず独り歩きしている現状があるように思います。

「多くの企業において既存システムが老朽化・ブラックボックス化することで環境変化や新たな事業に取り組むことへの障害となったり、保守・運用のコストが嵩む等で多大な経済損失に繋がる」

DXレポートの大筋の要約

これだけを見ると、全ての企業に当てはまるというよりも
「老朽化したシステムを使い続けている大企業」こそDXを急ぐ必要があれど、その手前のレベルにある「未だに紙とハンコ文化」だとか、「情報が電子化されていない」といったレベルの企業には当てはまるものではありません。

また、本レポートではDXに対して具体的な解決策が示されているわけでもありません。

結果として、独り歩きしたDXに対し、ネガティブな印象しかないという経営者の方も多くいらっしゃいます。いわゆる「DX疲れ」「コンサル疲れ」というものです。そもそも必要が無い、必要とするフェーズにいない会社も多いのに、やたらとDXを煽られているわけですから。

大企業や官公庁では具体的な案がない状態なのに、とりあえずで「DX対策費」のような予算が下りてきたり、情報システム部門がその役割を突然拡大されたり、ITリテラシーの低い従業員が突然、社内DX対策の立案や実行などを任され、担当になったが何をしていいかわからない等のお悩みも少なくとも4年間で150社以上は聞いてきました。

彼らが縋るように助けを求める先は、【DX】に金脈のニオイを嗅ぎつけたSIerやSaaS型のITサービスベンダー、そしてコンサルタントです。

2018年以降、特にコロナ禍に入ってからは特にですが、ITサービスは売れに売れました。しかし、そうなると玉石混合。新たな業界のスタンダードとなるような優秀なサービスも生まれましたが、残念ながらそこに「秩序」は無かった。企業同士の競争によって、日本の企業を支える間接管理に関わるシステムはガラパゴス化が加速していったと感じています。

大DX時代が招いた【ガラパゴスDX】

イメージしやすいように、全ての会社に存在すると思われる「請求書」周りの業務を例にとって現状を説明します。

請求書を発行したり、受け取ったりしない会社は世の中にほぼ存在しないかと思います。企業あるいは個人へ売上を建てている以上、請求は必ず発生する業務ですし、何かを発注したりサービスを利用しない会社もまた殆どいないかと思います。

「請求書」といえば、発行日時と支払期限、請求金額等を記して取引先に送るもの。紙で発行すれば印刷代もかかるし、印鑑を押して封筒に入れて郵送して…といったコストもかかれば、場所の制約もあるので、ペーパーレス化したい業務として挙げられる業務かと思います。

➤ここで「請求書 システム」と検索すると、このようなサイトが出ます。

20選とか49選だとかそれもうおすすめする気ないだろと思わんばかりの数が出てきます。請求1つとっても、これくらい多数のシステムがあるわけです。

しかし請求書運用のペーパーレス化をするぞ!と決定した会社は、こうした中から自社で運用するのに相応しいシステムを選定して導入せねばならないわけです。

導入自体は難しいことではありません。
こうしたITベンダーに任せればよいのですから。

かつ、これまでExcelシートに手入力をして作成していたり、印刷して押印して郵送といったやり方で請求を行っていたり、あるいはその反対に取引先から送られてくるフォーマットもバラバラの文書を受け取って会計システムに入力していたのと比較すれば、最近はシステム間連携も標準装備のソフトが多いでしょうから、飛躍的な工数削減が実現することでしょう。

しかし、請求書の管理をする側がハッピーになる一方で、請求書を送る側の部門は業務の標準化から反対に遠ざかっているケースも多数あります。

DXの結果生まれるブルシット・ジョブの押し付けあい

これまでは「請求処理」の業務フローが以下の1本だったのが
①請求書を作成する
②印刷する
③押印する
④封筒に入れる
⑤宛名を印刷して貼り付ける
⑥ポストへ投函する

取引先がクラウド型の請求システムを導入したことで
A社はBill oneへ請求書をアップロードする」
B社はTrade shiftにログインし、請求金額と内訳を入力する」
C社はB to Bプラットフォーム上で作業して請求書を作る」
D社はD社独自のシステム上に金額登録した上で請求書を郵送する」
・・・・・・・・・・・
※以下、無数に続く

このような形で、無数の少量多種の業務が生まれているのが実情です。
これは本来であれば、請求書を受け取る側の会社が行うべき作業を発注先の業務部門に押し付けているケースもあります。

実際問題、業務部門の従業員は各システムのパスワード管理や、取引先の使用している請求システムのマニュアルを読んで使いこなすことが求められ、従来通りに紙で送った請求書は「受け付けません」と言われることもしばしば。本来これに法的拘束力などはなく、契約書上に定められた検収要件を満たして納品が行われていれば「紙で送られてきたからNG」等という我儘を企業が通していい道理はありません。

しかしこれは理屈や法律などではなく、会社間のパワーバランスや営業部門が契約を取ってくるときの商談の運び方等によってまかり通っているのが実情です。

請求担当者のNO
発注責任者のNO
取引先経営のNO

「お客様は神様」というような日本の古い商習慣が残っている業界・企業も多く存在しますし、「請求関係の処理はお客様の要望に合わせる」という形で握ってしまうことも少なくないかと思います。

また、そもそもそんな時代の変化が起きていることを営業サイドが理解しておらず、契約締結時には全く関わりのないA社の経理部門とB社の業務部門の間でのみこうした会話が交わされるというケースも増えてきているものと思います。

「うちは〇〇というシステムで請求書を受領しているので、ログインIDを発行するから貴社の方でシステムに入って請求書を登録してください」

これだけ言えば請求書を受け取る側は多大な工数とコストを削減できますが、請求書を送る側はあらゆる取引先から同じことを言われるのです。

正論を話すのであれば、ここで絶対にNOと言えば済むこと。
個社対応はしない。今まで通り当社はこうやって請求書を送るから、システムへの登録やらはそっちでやってくれと言うのが正解です。

ただ現実にはそうは行かない会社が殆ど。
取引先から「それは困る」と言われたら飲まざるを得なかったり、場合によっては自社の営業部門長から総務や経理といった事務部門に対して

「顧客の要望なんだから請求くらい顧客システムでやってくれ」

と社内から言われてしまうこともあるかと思いますし、
あるいは会社のフロントではなく、取引先の経理部門の事務担当者から

「御社だけ紙で送ってこられても受け付けられませんので、他社様と同じようにシステムへ登録してください」

と頑として聞き入れられずに個社対応を余儀なくされているというケースも多いかと思います。

立場が弱い会社、立場が弱い部門にシワ寄せが行く

こうしてブルシット・ジョブが大量に生まれます。
事務部門の従業員は、安月給で評価もされないまま、数十種類の請求システムに対応することを強いられ、どんどん業務が複雑化する。

結果として起きている、一方だけが得をするDX

本来、人の手で行われている煩雑な業務を効率よく、生産性を高めることがBPR・DXの目的のハズです。

しかし、どこかの会社のBPR・DXは、取引先に業務を押し付けることによって成り立っている―――――

そんな悲しい現実が、今の日本では起こってしまっています。

また、そこで得をしているのは取引先に対して「一方的な標準化」を押し付けてBPR・DXを成功させた会社だけではありません。

私のようなBPR・DXコンサルタントや、SIer、ITベンダーが今度は

押し付けられて業務が煩雑化してしまった側の会社から相談を受けることになります。

マッチポンプを生み出してしまっているわけですね。

私の課題感と足掻き(三方良しのBPRを実現したい)

BPR・DXに対する私の仕事観

私は、自身の仕事に付随するこの課題に対して常にジレンマを感じています。

業務の効率化・生産性の向上を実現するのがミッションである、BPR・DXコンサルタントとして活動するにあたって

「日本のホワイトカラーの生産性は先進国の中で最低レベル」

という現状に見て見ぬふりはできない。

しかし、DXという金脈に群がって乱立したITツールを闇雲に導入して、自社・クライアントの生産性が上がった!と喜んでいるようではこの大きな課題の解決は難しい。

クライアントだって、まずは自社の業務の標準化や生産性向上が最優先事項ですし、罪があるわけではないので自分自身のことと、自分の仕事の事を考えるのであれば考えるだけ無駄かもしれない。

でも一方で、自分の仕事がどこか別の会社の生産性を下げる結果に繋がるような提案は、やはりできないなと思うのです。

私が取り組む足掻き

そんなわけで、私は今「個人でできること」と「組織的にできること」の両面から、この課題に立ち向かっていくことにチャレンジしたいと考えています。

個人でできる事については、このnoteもそうですが
業務改善についての自分の考えや知見を発信していくこと。
三方良しの結果に繋がるコンサルティングを粘り強く提供していくこと。

組織でできる事については、ちょっと軸を変えてみようと考えています。
それは今のフリーでの活動よりも、大きい所と組むなり、大きい所に入るなりして貢献していくことです。

標準化を進められる「ガバナンス」の力を最も持っているのは国家のハズ

例に挙げた請求まわりだって、未整備な部分があります。
日本の国の法律や制度から抜本的な改善をすべき点等も見えてきます。

細かい例を挙げるなら、請求金額における消費税の小数点以下

・切り上げるか
・切り捨てるか
・四捨五入するか

これらは実は法律で定められていません。
細かい事ですが、これが一律でないが故に請求システムもそれぞれに対応する必要があり、取引先ごとに「切り上げで登録しろ」等のルールが異なったりと、個社対応が増える要因にもなっています。

このような大きな課題に立ち向かっていくには、個人としてのキャリアや発信力もまだまだ積んでいく必要があると思っていますし、デジタル庁や大きなコンサルファーム等に属したりパートナーになったりして解決に取り組んでいく等の打ち手もあるかな?と考えています。

まとめ

私自身の想いは置いておいて、最初に挙げたようなターゲット読者の方にお伝えしたいのは

【一方良しの業務改善】

に巻き込まれて苦しんでいませんか?

または

自社(自身)が行う業務改善はそれで良いですか?

といったことをこの記事を読んで考えて欲しいと思った、という事ですね。

もし、共感を頂ける方がいたらぜひお声がけください。

コメントでも構いませんし、お仕事の依頼も歓迎です。
(SNSを通じてDMでも構いません)

『売り手によし、買い手によし、世間によし』
三方良しのBPR・DX

実現したい!とお思いの方がいらっしゃれば、
ぜひお話したいと考えています。
ただのBPR・DXよりも辛く苦しい道になりますが、精一杯お仕事させて頂きます。

ここまでお読み頂きありがとうございました。

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まじこじま〻現役フリー人事・バックオフィス系コンサルタント
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