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今年一番泣いた動画は、実家の土の匂いがした。【2020超個人的忘備録】

 おニューなノーマルが目白押しだった2020年。その中でも私にとっての一番の新体験は、感染防止のために「東京から千葉の実家に帰れない」ということだった。これは、マザコンファザコンブラコン全てごちゃまぜのもはやファミコン(ファミリーコンプレックス)重傷者の私にとっては大事件。猫をもふりたい、甥っ子を愛でたい、お母さんのごはんが食べたい、そんなときは一目散に電車で帰省する。いいお歳にも関わらず、実家を心の拠り所としていた私にとって、田舎に帰れないというのは何よりもつらかった。

 でも、その大切な当たり前を奪われたからこそ、あらためてその存在の尊さを知れた一年だったと思う。おそらく世界中の離れて暮らす家族がそうだったように、我が家も初のオンラインでお互いを繋ぎ、一緒にお酒を飲んだりを繰り返した。緊急事態宣言中に誕生日を迎えた私のために、家族がオンラインでサプライズしてくれたり、デジタルに弱い両親が意外に使いこなせているのも面白い発見だった。画面の向こうから、パソコンに入ってこっちに来ようとする3歳の甥っ子も苦しいくらい可愛かった。母からオンラインで料理を教わるという、初めての体験もした(これは思ってた以上に面白かった!)

 それはそれで新鮮な楽しさもある日々で、すげーなデジタル、ヒューマンテック、なんて思ってもいたのだけれど、やっぱり実際に帰りたいわけで。一種のホームシック状態になっていたある日のこと。父からLINEで一つの動画が届いた。3分ほどのその動画は、穏やかに晴れた日の、実家の庭の野菜や花を、父が淡々と説明し続けるというものだった。私はその動画を見て、たぶん今年いちばん泣いた。寂しいとか、感動とか、そういう感情じゃない。ただひたすら、あったかいものが胸いっぱいになって、涙がとくとく溢れ続けた。その動画からは、実家の土と太陽の匂いがした。縦横、画角は揺れ揺れだけど、まるでその場所にいるみたいだった。

 今年いろいろな場面で感じたことだけれど、フィジカルじゃなくても、メンタルで「体感する」という感覚。デジタルである程度のことは「体験」できるのはもちろん知ってたけど、「体験」を超えて「体感」する感覚。匂いや温度すら脳内で生成できるような鮮やかなモノゴトは、身体的に離れていても、そこにあるように感じることができる。そんなことを確信した瞬間だった。

 そんなわけで、私と弟たちのために、たぶんお父さんが一生懸命撮ってくれたこの3分の映像。ドハマりした「愛の不時着」も抑えて、今年の私のベストです。お父さん、受賞、おめでとう。


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