マガジンのカバー画像

テレビの仕事

40
本業(副業はしてないけど)のテレビ制作に関する記事です。
運営しているクリエイター

#仕事

新入社員とキンコンカン健ちゃん

新入社員とキンコンカン健ちゃん

4月。まだスーツを着慣れていない若者たちが街にあふれています。先輩と行動せず、研修中の同世代と出社もランチも共にしている時期です。

先日、新入社員の研修を人事から頼まれたので、制作というものについて少し話す機会がありました。そして都合のあったメンバーとそのまま晩御飯へ。

テレビ業界が上り調子とは言えないなかでこの会社を選んだ新入社員たちは、自分たちの時よりずいぶんしっかりしてるように見えました

もっとみる
ドラえもんたちに囲まれて(『高校先生クイズ選手権』放送後記)

ドラえもんたちに囲まれて(『高校先生クイズ選手権』放送後記)

ディレクターというのは、潰しがきかない仕事だと思います。手に職がないのです。

もし今の会社を辞めて全然違う業界に転職活動をしたとして「ロケ台本が書けます」「前説できます」と言っても、誰が「それはいいね!」と言ってくれるでしょうか。

ただただ「この番組が進む方向はこっちです!」と旗を振るの役、それがディレクターだと思っています。もちろん今の時代、それにとらわれない人もいますが。

さて、先日『全

もっとみる
『推しといつまでも』最終回を終えて

『推しといつまでも』最終回を終えて

「テレビ番組は、誰かが傷つかないと作れないと思ってます」

かつて後輩に言われた一言です。そんなわけない。ずっとそれを証明したいと思っていました。

4月から始まった番組『推しといつまでも』の放送が終わりました。3月のパイロット版を含めると放送回数は20回。

一緒にやっていたスタッフが「なんか、全20回の特番みたいでしたね…」と漏らしたのに妙に納得してしまいました。

今回は色々あったこの半年間

もっとみる
「ご飯行きましょうよ」が嬉しくて

「ご飯行きましょうよ」が嬉しくて

少しずつですが、友だちや同僚とご飯に行けるような世の中になってきました。自分から誘うときもあれば、誘ってもらうこともあります。

「ご飯行きましょうよ」

よく聞く言葉ですが、かつての僕には無縁の言葉でした。30歳過ぎまで、職場の同僚と食事に行くことはほとんどありませんでした。大きな理由のひとつが、僕がとんだ勘違い野郎だったからです。

20代後半から”総合演出”という肩書きを任せてもらえた僕は、

もっとみる
特番が全然レギュラーにならない男(追記あり)

特番が全然レギュラーにならない男(追記あり)

先日、ある特番の収録をしました。収録は笑いあり感動ありで大変盛り上がり、観に来ていた上司にも「おもしろかった!」と声をかけられました。

大満足の収録だったのですが、収録後にここ数年一緒に番組を作っているスタッフに

「山内さんと作った特番、いつも手応えめっちゃあるし、評判もいいのに全然レギュラーにならないですよね…」

と言われました。その時は「いや、今度こそ!」「そうですね!」と話していたので

もっとみる
特番放送前夜。(放送翌日の追記あり)

特番放送前夜。(放送翌日の追記あり)

今回は酒も飲めない僕が、特番放送前夜に素面で弱音を書き綴るだけのnoteです。気分じゃない方は楽しい記事を探すか、トップに固定している夢精の記事をお楽しみください。

明日(9月26日)夜『里帰り代行します!』という特番が放送されます。5月に第1弾が放送されて、その第2弾です。前回は日曜午後に1時間の放送で、TBSとMBSの2局ネット(流れるのは関東と関西だけ)でしたが、今回はMBS/TBS系全国

もっとみる
「山内くん、ラブホやねんけど」

「山内くん、ラブホやねんけど」

皆さん、知らないことを「知らない」と言えますか。言えた方がいいと思うけど、知らないからOKというわけでもありません。でもOKな時もあります。その境目は曖昧…今回はそんな話です。

数年前、僕が総合演出を担当していた番組で、ある旅ロケをすることになりました。出演するタレントは男女1名ずつ、ディレクターのAさんは僕より年上の人です。僕は構成だけ詰めて、ロケ当日は会社で仕事をしていました。

すると、朝

もっとみる
嫌いなものは、ちゃんとディスる(こじんまりと)

嫌いなものは、ちゃんとディスる(こじんまりと)

「どうやってアイデア出しや企画の立案をしていますか?」というお題をいただきました。正直、それに答えるのは気恥ずかしさがあります。僕は別に世間に名を馳せるトップクリエイターではなく、B'zとお笑いとジンジャーエールとハムスターが好きな、ただのいちテレビマンだからです。

とはいえ、日常の業務としてアイデア出しや企画の立案はあるわけで、あくまで「こんなやつもいるんだ」という程度に読んでいただけたらと思

もっとみる
きっと一生忘れない、元旦から号泣した番組

きっと一生忘れない、元旦から号泣した番組

昔からテレビっ子でした。中高生のころは、年末年始になるとSMAPが表紙の『ザ・テレビジョン』と大量のVHSを買ってきて、観たい番組にマーカーで印をつけて録画しまくる生活をしていました。

彼女でもいればもう少し生活が違ったかもしれませんが、そんな気配すらなかった高校生の僕は、クリスマスイブに男友達数人と我が家に集まって朝まで『みんなのゴルフ』に興じたあと、午前中から駅前のカラオケボックスに行き、昼

もっとみる
「お疲れ様でした」が言えなかった。

「お疲れ様でした」が言えなかった。

バラエティ番組の制作現場には、始業のベルも終業のベルも基本ない。色んな人が「おはようございますー」とフラッと現れて、「お疲れ様でしたー」とフラッと去っていく。

20代のころ、会社から帰るタイミングがめちゃくちゃ難しかった。仕事量が多いので基本的に毎日深夜まで働いていたのだが、たまに早く仕事が終わっても、他のスタッフがまだ仕事をしている手前、先に「お疲れ様でした」と会社を出ることができなかった。

もっとみる
『情熱大陸』和牛編の個人的な話③

『情熱大陸』和牛編の個人的な話③

3月に放送され、9月にDVD化する『情熱大陸』和牛編。DVDをご予約いただいた方、ありがとうございます。普段テレビは無料で放送するものなので、自分が制作したものにお金を払ってもらうということが、いかに特別なことかを実感する日々です。書き出すと長くなるのでこの辺にしますが「買ってよかった」と思ってもらえるように作業中です。予約がまだの方、盛りだくさんになっているので是非よろしくお願いします。

今回

もっとみる
出世。

出世。

近所に『出世の階段』なるものがあることを知り、先日登ってきた。急角度の石段は威圧感があり、何かしらの関門のようにそびえ立っていた。意を決して登り始めると、階段の中腹で太ももが張り始め、登り切る頃にはすっかり息が切れていた。

階段の上には愛宕(あたご)神社があり、そこでラムネを買って飲みながらしばらく休憩した。出世って一体なんだろうと、改めて思った。

テレビの仕事の出世ルートといえば、一般的には

もっとみる
『情熱大陸』和牛編の個人的な話②

『情熱大陸』和牛編の個人的な話②

3月に放送され、9月にDVD化する『情熱大陸』和牛編は2か月半の密着取材を行った。そんなつもりはなかったが、結果的にこの密着から特番が2つ生まれた。

1つ目は5月に放送した『里帰り代行します!』。なかなか故郷に帰れない芸能人に代わり、地元の家族や親友が行きつけの店をリポートする…という番組。これは密着取材の中で川西くんの親友が営むドーナツ屋さんや、水田くんが働いていた洋食店を訪ねたことがヒントに

もっとみる
『情熱大陸』和牛編の個人的な話①

『情熱大陸』和牛編の個人的な話①

『情熱大陸』で和牛に密着し、3月に放送された。9月にはDVD化されることも決まった。本当にありがたい。大きな反響を生んだ2か月半の密着の間には、個人的にも様々なことが起こった。本編には関係ないが、せっかくなのでいくつかの出来事を書いていこうと思う。

水田くんが元々働いていた洋食店に取材に行った時のこと。取材が終わって片づけをしていると、ご主人が「昔MBSさんには『魔法のレストラン』で取材してもら

もっとみる