記事一覧
前島賢の本棚晒し【復刻版】10:森橋ビンゴ『この恋と、その未来。1 一年目 春』
たとえば「男の娘」や「男装女子」といった萌え要素として表現されることはあっても、ライトノベルではなかなか、性的マイノリティの存在が正面から描かれることは少ない。
そうしたなかにあって、数少ない例外が、
森橋ビンゴ『この恋と、その未来。1 ―一年目 春―』(ファミ通文庫)
だ。
『東雲侑子は短編小説をあいしている』に始まる三部作で、高校生同士の恋愛を、十代の少年の「性」の部分にまで踏み
前島賢の本棚晒し【復刻版】09:長谷敏司『戦略拠点32098 楽園』
90年代から00年代前半にかけて日本SFが冬の時代と呼ばれ、国内のSF系新人賞も休止中だった時代、若き才能の受け皿として機能したのがライトノベルの新人賞であり、後にSF作家としても活躍する幾人もの書き手が、そこからデビューした。
『あなたのための物語』『BEATLESS』などで、現在では現代日本SF旗手として注目される長谷敏司もそのうちのひとり。
『戦略拠点32098 楽園』は、第6回スニーカー
前島賢の本棚晒し【復刻版】08:砂義出雲『天網炎上カグツチ』
寄生虫がヒロイン……美少女化もここまで来たか……。
と、砂義出雲のデビュー作『寄生彼女サナ』に出会った時の「世も末」感は今でも憶えている。いざ読んでみると、寄生虫美少女を通じ、異なる人格が共に生きるとはどういうことか、という普遍的なテーマを描いていて、さらに驚いたことも。
『天網炎上カグツチ』はそんな著者の新たなシリーズだ。
https://ebookjapan.yahoo.co.jp/b
【お知らせ】定期購読マガジン『前島賢の本棚晒し【復刻版】』を停止いたします。
お知らせです。
単品記事と並行して販売させて頂いておりました、定期購読マガジン『前島賢の本棚晒し【復刻版】』ですが、こちらの仕様と自分の想定の齟齬が発覚しまして、この度6/27をもって公開停止とさせて頂きます。
もともと、同定期購読マガジンは、過去の更新記事を一気読みしていただくプランとして想定していました。
しかし実際には、noteの「定期購読マガジン」の仕様では、購読が可能になるのは登録月
前島賢の本棚晒し【復刻版】07:滝川羊『神々の砂漠 風の白猿神』
毎月、膨大な数の新刊が刊行されるライトノベルだが、裏を返せばその分だけ既刊が書店から消えていくわけで、そう考えると売り切れも在庫切れも品切れ重版未定もない電子書籍というのはありがたい。eBookJapanのラインナップを眺めていると、新刊書店どころか古本屋でさえ見かけなくなった、我が青春のライトノベルたちが最新刊と一緒に普通に並んでいて、思わず目頭が熱くなった。うぉう『友井町バスターズ』! きゃ
もっとみる前島賢の本棚晒し【復刻版】06:「艦隊これくしょん―艦これ―」ノベライズ(築地俊彦『陽炎、抜錨します!』/内田弘樹『鶴翼の絆』/鷹見一幸『一航戦、出ます!』)
今週から、eBookJapanで始めさせて頂くことになった「ラノベ漂流20年~前島賢の本棚晒し」。小学生の時に、『ロードス島戦記』と『ゴクドーくん漫遊記』と『スレイヤーズ!』の洗礼を受けて以来、青春はもちろん人生までをもライトノベルに捧げつつある、ライター前島賢(32)が、古今の名作を独断と偏見でチョイスしていくチラシの裏……もとい、書評コラムである。
の、だが。
初回から申し訳ないが、実
前島賢の本棚晒し【復刻版】04:上遠野浩平『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』
勝手に『ブギーポップ』特集も後半戦突入。
今回は4作目『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』だ。
上遠野浩平によれば、当初は『ブギーポップ』シリーズの完結編となる可能性も想定して書かれていたという本作(次の第五作『夜明けのブギーポップ』が、ブギーポップの誕生秘話を描くエピソード0にあたる話なので、ひとまず今回の勝手に特集を初期5作6冊で句切りとしたのは、この理由による)。
前作『ブギ
前島賢の本棚晒し【復刻版】03:上遠野浩平『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 「パンドラ」』
とある女性が禁断の箱を開いたせいで、そこに詰められていたあらゆる災厄が世界にばらまかれた。だが箱の底にはたったひとつ「希望」だけが残されていた……という有名な神話、パンドラの箱。
シリーズ第三作『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 「パンドラ」』は第一作目からここまで皆勤の「博士」こと末真和子が語る、この神話の異説から始まる。
末真によれば、あらゆる災いが詰まった箱に「希望」などというものが入
前島賢の本棚晒し【復刻版】02:上遠野浩平『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーターPART.1』『PART.2』
『ブギーポップ』勝手に電子化記念特集(注:掲載当時)。
2回目となる今回は『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター』を取り上げたい。
(1回目『ブギーポップは笑わない』はこちらから)
本作は『ブギーポップは笑わない』に続いて、『PART.1』『PART.2』の前後編2冊が98年8月に刊行された。ちなみに、ここから9作目の『ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎生』までは短ければ2ヶ月、
前島賢の本棚晒し【復刻版】01:上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』
上遠野浩平の「ブギーポップ」シリーズが、ついに電子書籍化された(※掲載時)。
1997年に第4回電撃ゲーム小説大賞(現・電撃大賞)を受賞して刊行された本作は、しばしば「ライトノベルを変えた作品」とも評価される。
本作の登場から程なくして、ライトノベルの人気ジャンルは『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ!』に代表される異世界ファンタジーから、現代ものへと移行していったのにくわえて、本シリーズの大
ボンクラ青春SFとしての『虐殺器官』 ~以後とか以前とか最初に言い出したのは誰なのかしら?~(前島賢)
※このノートは全文無料で読むことが出来ます。
※このnoteは、もともと『S-Fマガジン』2015年10月号(「伊藤計劃特集」号)に掲載されたものです(公開に当たり加筆修正を行っています)。2017年2月3日の劇場用長編アニメーション映画『虐殺機関』公開を記念し(と原作のとある要素がちゃんと映像化されていることを祈って)、全文を無料公開します。皆様の読解と鑑賞の一助となれば幸いです。
※今回の