前島賢の本棚晒し【復刻版】09:長谷敏司『戦略拠点32098 楽園』

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本記事は、電子書籍ストアeBookJapanに、連載「前島賢の本棚晒し」第4回として2014年10月31日に掲載されたものを、加筆修正の上再公開したものです。記述は基本的に連載当時のもので、現在とは異なる場合がありますが、ご了承ください。連載時に大変お世話になりました、そして、再公開を快諾頂きました株式会社イーブックイニシアティブジャパンの皆様に厚く御礼申し上げます。

 90年代から00年代前半にかけて日本SFが冬の時代と呼ばれ、国内のSF系新人賞も休止中だった時代、若き才能の受け皿として機能したのがライトノベルの新人賞であり、後にSF作家としても活躍する幾人もの書き手が、そこからデビューした。
『あなたのための物語』『BEATLESS』などで、現在では現代日本SF旗手として注目される長谷敏司もそのうちのひとり。
『戦略拠点32098 楽園』は、第6回スニーカー大賞金賞を受賞し、2001年に刊行された彼のデビュー作だ。

 人類が星間文明を築くまでに発展した遠未来、彼らは、人類連合軍と汎銀河同盟に分かれ果てしない戦いを続けていた。過酷な戦場に適応するため、両陣営の兵士達は人体のほとんどを機械化し、人としての拠り所を失っていった……。
 汎銀河同盟の兵士ヴァロワは、人類連合軍が必死で防衛する謎の惑星への降下作戦に参加、仲間を残らず失いながら、たったひとりで目標の地表に降り立つ。しかしそこで彼が見たのは、静謐な緑の星で、戦いを捨てた敵軍の上級指揮官・ガタルバが、一人の幼女・マリアと共に過ごす姿。「戦略拠点32098」の正体は、軍事基地でも何でもなく、連合軍の兵士の魂のよりどころ――巨大な墓場だった。

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