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私がAppleのデザイナーとして学んだこと【海外記事メモ】

今日はこの記事を読んでみたいと思います。

誰もが知っている、身近な企業であるAppleですが、その内情についてはあまり情報がないように思います。

今回は実際にAppleでデザイナーとして働いている女性の記事を読んでみて、世界一の企業であるAppleの中を覗いていけたらと思います。

ちょっといつもの3倍近くある長い記事でしたが、よければお付き合いください。
本日もよろしくお願いいたします。

Appleのプロダクトデザイナーとして学んだこと

2021年、私は夢の職場に着任しました。ミニマムで革命的で創造的なAppleで働けるのです。
そこは変人に役割が与えられ、奇抜なアイディアが称賛される場所でした。
プロダクトデザイナーとして、Appleで働いた経験は人生を大きく変えることになりました。この経験は例えどこへ行こうと代えがたいものになるでしょう。

私がAppleで働いた1年の間で学んだ10個のトピックについてお話したいと思います。

この記事の要約

Appleはユニークな企業であり、私はプロダクトデザインこそがこのビジネスモデルを成功へ導く鍵であると信じています。Appleでは例え長い時間を費やそうと、イノベーションと失敗、リスク、そしてデザインの完成度を高める試みが許容されています。

・MVPを取るな、偉大なプロダクトを作れ

・ストーリーテリングがプロダクトデザイナーとして開発を行う中での最も重要スキルだ

・トップダウンの文化は我々が思うほど悪くない

良いデザインは我々をもっと先へ導いてくれる

そして素晴らしいコミュニケーションはさらに遠くへ連れて行ってくれる。人々に影響を与え、前進しよう!

プロジェクトはそれを信じる人が集まったときにスタートします。
ちょっとした会話から綿密な打ち合わせ、プレゼンテーション・・・など。
私達が話し、自分たち自身の考えを詳細に伝えることは、コンセンサスを得て、人々を鼓舞し、物事を前に進めるための基本となります。

私の最も大きな学びはスピーチの中に情熱を込めるということでした。
それはプレゼンテーション中だけでなく、会議の際の発言などにもいえます。
心の底から仕事に熱狂し、その興奮を周りの人たちへ伝えていくのです。

ジョブズは彼の考えを理解させ、記憶に刻み込むことに対して驚くべき才能がありました。それは彼が情熱を持って話をしていたからです。
人々はあなたが話していた内容は忘れてしまっているかもしれません。
しかし、人々はあなたのプレゼンテーションに対して抱いた感情、信頼や興味、退屈さ、毛嫌いなどは忘れることがないでしょう。

私たちは外の顧客に対して製品を売るだけではなく、私たちのアイディアをチームやステークホルダーなど内部の関係者に向けて売り込みます。
ビジネスの成功の鍵はコミュニケーションなのです。


ストーリーテリングこそが重要スキル

私が最も驚いたことのひとつが、細かい仕事まで常にシェアされ、デザイナーがそれらをKeynoteにまとめているということです。
これは大きなプレゼンテーションはもちろん、ちょっとした見た目の違いくらいの進捗まで共有されています。
Appleでは、デザイナーはただ自身の実績を示すのではなく、そのかわりに人々を感動させるためのストーリーテリングの力を利用します。

私が学んだプレゼンのコツをいくつかシェアしましょう。

・プロセスを説明するかわりにストーリーを語りなさい。

・1スライドの中には1アイディアのみにフォーカスしなさい。ごちゃついたスライドで見ている人を混乱させてはいけない。
文章の段落を作るより、スライドごとに1つの強い言葉を使いなさい。

・プレゼンターはスピーチのためのメモを使いなさい。背景にはあなたが話していることについてのイメージやモックアップの写真を使いなさい(テキストを表示させず、写真を見せなさい)

・プレゼンテーションのリハーサルをしなさい。たとえ少数のデザイナーへ向けた小さなプレゼンであったとしても、1時間かそれ以下でもミーティングの前に自分を見つめ直し、自分が言いたいポイントがストレートに相手に届くにはどうすれば良いのかを考えなさい。

・楽しみましょう!プレゼンテーション中に人々がワクワクできるようにすることで、あなたは信頼を獲得し、物事を前進させることができます。


ビッグアイディアは使いやすさの調整よりも重要である~長期目標vs短期目標のバランスについてのアート

私が気づいたことは、開発チームが多くの時間を小さな勝利や改善に費やしていないということでした。
その代わり、チームは長期的なインパクトと次の大きな目標を立てることに集中していました。
このことは毎年WWDCでAppleがリリースする新たな未来像が人々の心を熱狂させることが示している通りですが、一方で小さなユーザービリティの課題などは常に付きまとっています。

それは企業文化へ反映されていきます。Appleはイノベーティブなブランドとして知られており、世間では自然とAppleは革新的な製品や経験を生み出すものとみなされています。

私が学んだことは、もしイノベーティブな人材になりたいのであれば、小さな勝利に固執するのではなく大きな目標へ集中することです。たとえそれが膨大な時間を要するものだとしても。


直感を信じよう!あなたはエキスパートだ!~決断にユーザーテストなんていらない

現実世界において、我々がデザインをしているときはいつでもユーザーテストにおけるユーザビリティやアクセシビリティの課題が噴出しています。

Appleでは、ただそれに対処したりusertesting.comを使って新しいデザインをテストすることはできません。世の中で人々が何に熱狂し、それに対してAppleはどんなことができるのかを想像しなくてはなりません。
あなたは妥協することなく、ユーザーが秘密裏にしている願望を引き出す新しい方法を探す必要があります。

ひとつの方法として、特定の従業員に対してユーザーテストを行うやりかたがあります。その他には専門家にレビューを求める方法もあります。

専門家レビューはたいていデザインディレクターやプロダクト責任者など、高度な知識を持つ人に対してデザインのアンケートを行うものです。
そのためのコストは高く、あなたはそれぞれのデザインの背後にある意図を説明しなければなりません。
この方法はバイアスのかかった決断に結びつくと感じるかもしれませんが、私が取り組んだ限りこれは多くのユーザーテストよりも価値あるものとなっています。

得られる詳細な課題の量は信じられないほどになり、優秀な人々がプロダクトが簡単で使いやすくなるようにユーザーエクスペリエンスを気にかけていることを理解することができるでしょう。


戦略的な思想家よりも高度なアウトプットを出す人材になろう

人々はAppleは多くのデザイナーにとって夢の職場であるといい、私もおおよそそう思っています。しかしもしAppleのデザイナーとして働くなら、手を動かすクラフトの時間に最も多くの時間を充てなくてはなりません。

製品がどのような振る舞いをするのか(インタラクションデザイン)、どう見えるのか(ビジュアルデザイン)、人々に対してどのようなエコシステムを作っていくのか(システムデザイン)などなど。

そして手を動かし行動することに時間を集中させることで、驚くべきほどの有能なプロダクトチームができあがり、それによってプロダクト思考や戦略のほうへ注力することができます。

正直私はプロダクトにおける重要な決断に参加できていませんでした。私はインタラクションとシステムデザインの部門のトップでしたが、製品の戦略を一貫して考える議論のテーブルにつくことはできませんでした。


”One more thing”解決する課題の「その先」を考えよう

スティーブによって始められたOne more thing活動について、もしかしたらご存知かもしれません。この活動はApple社内でも同様でした。これは必須のものではないけれども、私は多くの場面で遭遇しました。

これは言わば"ボーナス"文化です。私が述べた通り、全てはプレゼンテーションであり、すべてのプレゼンテーションはキーノートの上に存在しています。
ボーナスとはプレゼンテーションの最後に表示されるセクションで、プロジェクトに関連するその他の可能性や目標の拡大、新たな勝利条件などへの探究を重ねるものです。

まとめると、これはチームの思考を拡大させ、これまで考えられなかった他の機会を考慮するチャンスになります。
私がこの文化で好きなのは、デザイナーがプレッシャーもなく厳しいジャッジもない安全な環境で、自由に創造的なアイディアを共有できるようにしている点です。

シンプルさの追求は困難だ。本当に困難だ。でもあなたがそれを手にするとき、それは美しいものになるだろう。


優秀さを誇示するようなMVPになるのではなく、偉大な製品を作り上げよう

あなたがApple製品を購入したとき、それがまだテストフェイズであるということを考えることはないでしょう。
あなたは製品が最高の品質とパフォーマンスを見せてくれることを期待しています。このハードウェア開発の文化はまた、Appleのソフトウェアやサービス開発の文化にも反映されています。

忘れられない出来事として、私がApple TVのミーティングに製品開発チームとして参加しているとき、誰かがWEBやモバイルのプラットフォームを活用してリリースすることはできるが、我々はまだTVの顧客体験を作りきれていない、と発言したことがありました。
PMは「もし我々があらゆるプラットフォームの中で最高の顧客体験を提供できないのなら、我々は製品をリリースすべきではない。もし我々が最高の顧客体験を提供できるのが来年であるならば、来年まで待つべきだ」と言いました。

私は鳥肌が立ちました。私のキャリアの中でもPM自身が顧客体験を優先してリリースを遅らせようとするようなことを発言を聞いたことなど一度もなかったからです。

私はこのストーリーこそがAppleの優秀なカルチャーに関しての多くを語っていると思います。
多くの人々は、「すでに競争が行われている市場においてですらなぜAppleは製品のリリースを長期間遅らせるのか!」と非難したりします。
しかし私はこのことこそが、人々に驚くべき体験を提供できると確信したときのみ製品をリリースするのだ、というAppleの文化を象徴しているのだと心から思っています。
そして私はこのソフトウェア開発のカルチャーこそがAppleをユニークなビジネスモデルを持った会社としての地位を確立させているのだと思います。


"NO"ということを学ぼう

これは私のキャリアの中の学びの中でも最も大きなものの一つです。
NOということを学ぶことは、どんなことに優先度をつけるかを学ぶことです。
我々の脳に取り込める情報量には限界があり、1週間でいっぱいになります。これはあなたにとって重要なプロジェクトや会議、その他の活動にエネルギーを注ぐ際に重要となります。

巨大テック企業は常にエキサイティングなプロジェクトやチャンスがそこら中に存在し、それらへ参加することはすぐにできてしまいます。
しかし最も重要なことは、自分自身で約束したものを最高のクオリティで提供することです。あなたが出来うる範囲を超えて多くに関わってはいけません。

集中とは、集中しなければならないことに対して”YES”と言うことだと人々は考えます。しかし、それはまったくの間違いです。
集中とは、存在する何百もの良いアイディアに対して"NO"ということです。物事は慎重に選択しなければなりません。 ーSteve Jobs


トップダウンの文化は思うほど悪くない

最後になりますが重要なことをお話します。Appleの最も特徴的な個性の一つがトップダウン組織であるという点です。これはプレゼンの度にディレクター、マネージャー、それよりもっと上の役職、とどんどん承認を得なければいけない文化があるということを意味しています。

いつも私はディレクターやデザインリーダーに、自分の提案を批評されていたのですがが彼らは正しかったです。それもあって、Appleでは個人の行き過ぎたエゴが認められません。
私は彼らが可能な限りで最高のユーザーエクスペリエンスを心から待望しているのだと理解しました。そのため例え誰かがあなたの提案に反対したとしても、彼らには彼らなりの言い分が恐らくあるのだと考えます。
健全な議論の環境がここにはあります。

そういうわけで、私は重要な決断を早急に行うという点でAppleのトップダウン文化を愛しています。ボトムアップの環境では10人以上の意見を一致させようとして何週間、時には何ヶ月という時間を費やすことになるでしょう。それは非常に疲れることです。

繰り返しますが、私の経験上一人のリーダーに決断の権利が委ねられているのは時間の節約になり、それは私達がプロジェクトのマネジメントをするのではなくデザイン制作へ集中して時間を投下できるようになることを意味します。


感想:答えはデザイナー自身の中にある、という文化

本文がめちゃくちゃ長かったので感想は手短にまとめます。
ところどころ筆者のポジショントークっぽい印象がなくもなかったですが、色々と参考にできるポイントがあった記事だなぁと思いました。

特に自分は「直感を信じろ!」の章の記載が印象的でした。多くのユーザーテストよりもApple社員に内在するクリエイティブを信じるという姿勢は、以前読書メモを書いたマツダの前田育男さんの著書にも通じる考え方で個人的にもうなる内容でした。

これまでも色々AI系の記事を読んできて思ったことですが、やはり市場調査的で全体最適なデザインというものはテクノロジーによって一瞬でできてしまう時代になりつつあります。

大事なのは自分と向き合い、顔の見えない多数ではなく半径5mくらいの人と密なコミュニケーションをとりながらものづくりをしていくという姿勢がこれからもより求められるんだろうなぁと考えさせられた記事でした。

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@やました
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