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イープン、ディー(日本は良い)

タイ旅!
#5, ロイヤルラタナコシン④

【前回までのあらすじ】セブンイレブンが心の故郷になった旅人、まえだゆうき。

ロイヤルラタナコシンホテルでの数日は順調に過ぎて行った。
朝はカメラ片手に撮影に出かけ、日中は映像編集と絵本制作。

夜は夜で、散歩がてら屋台飯を食べにいく。
素晴らしき旅の日々。

このまま日々は永遠に穏やかに流れていくかに思いかけたある日、
親友のナベちゃん
からLINEでメッセージが入った。


「やー、ゆうき。タイはどうかな。ところで、こっちで住むアパートはもう決まった?」

 

ナベちゃんは、バンコクでフリーの翻訳家をやっている昔からの友人で、今回のタイ旅!を手伝ってくれる協力者の内の一人でもある。

(今後、他にも数名の協力者の方に、今回のタイ旅!を手伝ってもらう予定である)


アパート、そうそうアパートである。


いくら快適とはいえ、いつまでもこの高級ホテルに泊まり続けるわけにはいかない。 
予約が切れるあと2日間の内に、新しい住居を探さねば。


かといって、見知らぬ国でアパートを探すなんて、契約の手続き等、
ミッションレベルはかなり高そうだ。 


色々と理由をつけてアパート探しを渋っていると、ナベちゃん、次々と安アパートのリンク先を探して送って来てくれるではないか。

「とりあえず、このへんのHPにメール送ってみたら?」との事。
持つべきものは友である。

それから、その日の午後は、調べてもらったアパートの値段をじっくり見比べ、日本語対応可。と書いてあるアパートに恐る恐るメッセージを送った。

メッセージのやり取り


そうして、二度三度管理人とやり取りをした後、改めてアパートの見学に行く事にした。



朝九時。

ホテルの横にある大通りには、客待ちのタクシーの運ちゃんたちが、プラスチック椅子に腰掛けながらタバコをふかしたり、屋台のガパオ飯を食べたりしている。


運ちゃんたちの一群に近づくと、見慣れた顔のおっちゃんが手を上げる。


昨日、お寺に行く時に乗ったタクシーのドライバー、プラビットである。
プラビットは40代ぐらいのヒョロヒョロの小柄のおっちゃんで、頭には白髪がちらほらと混じっている。

私(客)の顔を見るとにんまりと笑って、路肩に停めているタクシーの後部座席をガチャリと開けた。


タクシーは大通りをぐんぐん進んでいく。
タイのバンコクの街並みは、いたる所に作りかけの建物が並び、重機のショベルカーが土埃を上げながらせわしなく動いている。


剥き出しの鉄骨のビル。
鉄板で仕切られた工事現場。
蛍光シールの付いた、オレンジ色のベストを身につけた作業員のにーちゃんたち。 


現場で働く肉体労働者のほとんどは、隣の国からやって来たラオス、ミャンマー、カンボジアの人が多いのだそうだ。
日に焼けた肌に汗が滲んでいる。


渋滞でノロノロと進む車の間を縫うように通り過ぎていくバイクたち。
信号が赤になると、道の脇から花売りのおばちゃんや、窓拭きの子どもたちがやって来て、窓越しに小銭をせがんでくる。


プラビットが口を開く。
「イープン、ディー(日本は良い)
 イープン、ディー(日本は良い)
 トヨタ、ホンダ、ニッサン…、
 マツダ、スズキ…」


日本。というか日本車びいきのプラビットに言われて周りの車を見渡す。


フォーチュナー、シティ、マーチ、
CXー30、ディーマックス…。


7割、いや8割を超えるだろうか。
道ゆく車のほとんどは見慣れた日本車のロゴを付けて走っている。


別に自分が作った車なわけでも無いけれども。タイの道路を悠々と走る日本車に、ちょっぴり誇らしくなりつつ。

こうやって異国の地で日本車が沢山走ってくれているお陰で、今まで自分は、ぬくぬくとした暮らしを日本でしていたのかと思うと、なんだか不思議な気持ちにもなった。



それから更に30分後。

タクシーは大通りから小道へと入り、ゆっくりと速度を落としながらマンションを探して走った。


道の両脇には小さな商店が並んでいる。定食屋、床屋、服屋、雑貨屋。
やがて店並が切れ、雑木林と工事現場が続く静かな一角に、目的のマンションはあった。


マンションというよりは、工事中のビルを思わせる、殺風景な外観。
「グランドマンション」と書かれた看板の前で、おっちゃんが気持ちよさそうにタバコをふかしている。


マンションの一階部分は吹き抜けのピロティーになっていて、入居者の車や、工事で使う作業用具が無造作に置かれたままになっている。


薄暗い駐車場を抜け事務所のドアをノックすると、人の良さそうな、家政婦とおぼしきタイ人のおばちゃんが出てきて、鍵の束をもって部屋を案内してくれた。


今にも止まりそうなボロボロのエレベーターを上がり、6階で降りる。
廊下に並ぶ部屋は、どの部屋もドアが開け放しになっていて、タイ語のテレビ番組が大音量で流れている。


昼寝の最中だろうか。
ベランダから吹き込む風で、洗濯物が風鈴のように揺れている。
 

はてさて、一体どんな部屋を案内されるのかとドキドキしながらドアを開けると、案内された部屋は、想像したよりも広く、清潔で、明るかった。


シャワールームはぬるいながらもお湯が出て、部屋には机やクローゼット、キングサイズのベッドがでーんと置かれている。
洗濯機は無いが、ベランダには手洗い用のシンクが置かれている。


間取りでいえば10畳ぐらいの1Kだろうか。  
値段を聞くと1か月4500バーツ(1万7千100円)
迷わずに即決した。


一階に降りると、マンションの管理人の女性から片言の英語で電話がかかってきた。


入居は明日からでも可能な事。
2か月分8000バーツのデポジットを最初に預けてほしい。との事。


私は、ホテルの予約が切れる日曜日に引っ越す事を管理人に伝え、電話を切った。


以上、タイでのマンションの契約の全てである。


思いのほかあっさりした手続きに拍子抜けしつつも、ひとまずは住処が決まった事に胸を撫で下ろし。何か新しい事が始まりそうな予感に期待を膨らませる。


タイにやって来てから6日目、旅の滑り出しはなかなか上々である。



→ラプラーオ編へ続く。


【タイ旅!】#6,ラプラーオ①はこちら!

【タイ旅!】#4,ロイヤルラタナコシンはこちら!



絵本作家まえだゆうきがタイで絵本を出版するまでの、100%リアルなドキュメンタリー紀行文。

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