見出し画像

中国の子供生活調査レポート【5】食事事情 ~食文化と最新の食生活~

2022年、今年の中国の春節は2月1日。遠く離れた家族もこの時ばかりは集まって食卓を囲み、新年を祝います。悠久の歴史の中で受け継がれてきた中国の食文化、その未来を担う子供たちの「食」まわりについて上海で育児中のお母さんたち(子育てママ)にアンケートで聞いてみました。

調査方法:インターネット調査 
調査地域:上海
回答者数:幼稚園児/小学生の子供を持つ母親1,200名
調査時期:2021年3月 

広い国土、多様な中国の食文化

先ずは食文化について押さえておきましょう。「フランス料理」「トルコ料理」「中国料理」が世界三大料理と言われ、もともとの宮廷料理だったものが発展して変化しながら世界中に広がりました。特に、4,000年の歴史を誇る「中国料理」は、日本でも中華料理としてすっかり土着化しています。
本場中国では国土が広いので地域・風土によって多種多様。下記の4大料理が特に有名ですね。

中国4大料理【北京、四川、広東、上海】

「北京料理」は北方系。
北京ダック、水餃子、ジャージャー麵、・・・塩辛くて味強め。

「四川料理」は西方系。
麻婆豆腐、回鍋肉、担々麺・・・・しびれる激辛、スパイシー。

「広東料理」は南方系。
海鮮、飲茶、ワンタン麺・・・素材の旨味を活かした清淡系。

「上海料理」
は東方系。
八宝菜、小籠包、生煎饅頭、上海蟹・・・甘味ちょっと強め。

どれも美味しくて、思い浮かべるだけでお腹が空いてきそうです(笑)。

外食・出前ではなく「自宅の手作り料理」が基本

ではここからが本論です。先ずは、子供たちはどこで食事をしているのでしょうか。ファーストフード店が街にあふれ、また昨今はフードデリバリーが普及している中国ですが、外食や出前の回数を聞いてみると意外にも低く、ともに一週間で平均1回程度でした。コロナ禍での影響は考えられるとはいえ意外に少ないとは思いませんか?国家衛生健康委員会「国民の栄養と慢性疾患状況報告(2020年)」によると、中国の子どもの実に19%が過体重か肥満で、高血圧や糖尿病や癌の発病も2015年と比較して増加しています。外食や出前はついつい脂質や塩分を多く取りすぎがち。ひと手間かけてでも自宅で料理したものを食べさせることで、健康や栄養バランスに配慮しているようです。

直近1週間の外食と出前の回数(子供の学齢別)

では、誰が料理を作っているのか?複数回答で聞いてみたところ、自分自身(子育てママ)が最も多く約7割。ということは、子育てママの3割は料理をせず、その代わりを自分の親か旦那さんの親がしていることが分かります。旦那さんの約4割が料理をしていますよ、実にご立派!

自宅で料理を作る人(子供の学齢別)

子供に積極的に食べさせているものは?

調査によると、「牛肉」、「野菜」、「果物」を積極的に食べさせています。飲み物については「牛乳」、「ヨーグルト」、「豆乳」を積極的に飲ませていて、特に育ち盛りの小学校高学年では顕著でした。続いて上位の果物・野菜ジュースについては、容器入りのものよりも “搾りたて”の商品を好んで飲ませている傾向がうかがえました。

子供へ積極的に摂取させている食べ物・飲み物(子供の学齢別)


豚肉よりも牛肉を食べさせたい

食べ物について詳しく見て行きましょう。まずは「牛肉」です。中国人が最も食べる肉は豚肉で、1人当たりの肉類の消費量の49%と約半分を占めています。続く鶏肉の31%と合わせると約8割、最も高価な牛肉はわずか13%に過ぎません。それなのに、今回の調査では牛肉をより積極的に子供に食べさせていることが分かりました。大事なわが子には高くてもいい肉を食べさせてあげたいという親心なのでしょう。

2021年 中国一人当たり摂取肉類構成比(出自:Statista)

野菜の好き嫌い

子育ての悩みの1つは「子どもの偏食」。野菜はどうしても好き嫌いがありますね。子供に食べさせたい野菜のトップ5は「青梗菜」「ほうれんそう」「白菜」「紫芋」「小松菜」でしたが、1位の 「青梗菜」は同時に子供が嫌いな野菜の1位でした。一方で、同じ葉物野菜でも「ほうれんそう」、「小松菜」は親が食べさせたく、かつ子供も好きだと分かります。ということは、「青梗菜」が嫌いな子には「ほうれんそう」や「小松菜」を食べさせればよいのかもしれません。また、ブロッコリーは好きと嫌いの両方の上位に挙がっていて、好き嫌いが分かれるのも興味深いです。嫌いな野菜も無理なく美味しく摂れるような、ひと工夫ある野菜ジュースのポテンシャルがありそうです。

親が食べさせたい野菜、子供が好きな・嫌いな野菜 トップ30
※表は親のランキング順。子供のランキングは色で識別。

子供の大好物、一番人気の果物は・・・?

中国の子供も果物が大好き。人気のフルーツは何でしょう? Top5に挙がったのは、「オレンジ」、「バナナ」、「みかん」、「いちご」・・・と、ここまでは日本の子供が好きなモノとかぶりますが、人気No.1はダントツで「スイカ」。
スイカはもともとアフリカ原産。夏の果物のイメージがありますが、中国大陸の南から北まで各地で生産されているので年中食べられます。また陰陽五行の伝統や漢方では、スイカは体を潤してほてりを抑えるとされていて体にもよさそう。国連食糧農業機構(FAO)のスイカ生産量統計によると、中国の世界シェアはなんと67%!

世界中のスイカの2/3を食べる「スイカ大国・中国」の地位は、子供たちが支えるので将来も安泰ですね。

子供が好きな食べ物 トップ20(学齢別)

別途、子供に食べさせる「おやつ」についても聞いてみると、「ナッツ類」と「チョコレート」が同率で一位、「ビスケット」、「飴」、「スナック菓子」と続きました。ナッツ類はミックスナッツやくるみやサンザシなどですが、子育てママ自身が昔から天然素材のものを食べて来たことやオーガニック食品を好むことが背景にあるからでしょう。

以上、子育てママの視点を通じて子供の食について見てきましたが、彼女たち自身も急速に豊かになっていった時代に「一人っ子」として大切に育てられた世代。よりよい暮らしを実現するために、情報には敏感でよりよいものを求めます。

大切なわが子の健全な成長のためには「食」が基本。未来を生き抜く子供の日々の食事にも手を抜かず気を配る愛情が感じられますね。

さて、次回はいよいよこの連載の最終回。子供の「健康」についてお話しします。お楽しみに!

この記事を書いた人

岸原文顕の連載


・・・【付録】皆様の調査や研究のご参考情報としてご活用ください・・・

2022年2月、アジア諸国では新年スタート!景況感が改善、消費意向に注目!
アジアの生活者意識や消費マインドを週次で聴取し即時性高く公開!中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、台湾のデータを提供しています。
Macromill Weekly Index Asia

以下のような課題をお持ちの方に、サービスのご案内
・ 海外調査をしたいが、仮説構築をブラッシュアップしたい。
・ 海外調査の結果の読み解きに、基礎となる情報が欲しい。
・ 調査の対象者・地域はどこに絞るか、悩んでいる。
マクロミル グローバルリサーチ 詳しくはこちら

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!