中国の子供生活調査レポート【1】子育て実態 ~3人っ子政策等の影響は?~
今日、10月1日は、中国の建国記念日にあたる「国慶節」。1週間の大型連休がスタートして、中国全土で大賑わいをみせます。
その中国から、びっくりするようなニュースが日々飛び込んできます。例えば、ほんの数年前までは「一人っ子政策」があったのに3人まで子供を持つことが許されるようになったり、18歳未満はオンラインゲームを1週間で3時間までしかできなくなったり、一大産業に成長した学習塾が規制されるようになったり・・・。こうしたことの背景には一体何があるのでしょうか?
その謎を解くカギが、未来を担う子供たちや育児中のお母さんたち(以後:子育てママ)の生活の中にあるのでは!?そう睨んで、中国の子育てママを対象にして育児の実態を自主調査することにしました。
子育てママ世代の特徴や価値観
育児の実態についてお話しする前に、今回は、子育てママ世代の特徴や価値観について紹介しましょう。マクロミルでは、世界各地で実施している有識者調査のパートナーと協働し、中国の大学や研究機関の学識者の協力を得て、中国の生活者の価値観とライフスタイルに関する調査や研究を行っています(※末尾の付録参照)。その調査や研究から、中国の世代を下記の4つに区分しました。
この区分では、小学生以下のお子さんを持つ子育てママの多くは第3世代「中国版ミレニアル世代」。では、この世代の特徴や価値観はどういうものでしょうか?
この世代は、「一人っ子政策」(1979年~2015年)の影響抜きでは語れません。一人っ子政策が始まったのは、中国で中産階級や富裕層が増え始めた時期。たった一人の子供に対して両親とその両親(祖父母)の6人が愛情を注ぎ、食べ物も服もたっぷりと与えて、高学費の学校に通わせました。甘えん坊でわがまま、自分の思うままにふるまう子供、というニュアンスで「小皇帝・小皇后」とも呼ばれたりもして、他の世代と比べると自己中心的で自意識も高いといわれます。
加えて、その豊かになった社会の変化からの影響も受けています。計画経済の時代には横並びだった社会から市場原理の競争社会に変わり、親から注がれる愛情や教育面での投資と同時に大きな期待と強いプレッシャーも受けて育ってきたのです。
そんな競争社会で一人っ子として育ったこの世代は、実利的でありながら家族主義的な価値観を持つと言われます。では、子育てママ世代にとっての家族にはどんな特徴があるのでしょうか。
子育てママは、親に依存
中国では共働きが当たり前、子育てママのほとんどは出産後すぐに仕事に戻ります。それを可能にしているのは親の存在。マクロミルが2021年3月に行った調査によると、自分もしくは配偶者の親と同居している子育てママはなんと80%! 「サザエさん」の家のように3世代家族なのです。子育てママは共働きで経済的には自立している一方で、親に家事や日々の学校への送り迎えなど子育てを手伝ってもらっているのです。なんと、心強い助っ人なのでしょう。
過去実施した調査で、子育てママ世代の尊敬する人物として、親・祖父母が多く挙げられていましたが、その背景を知るとなるほど、納得感がありますね。
このように子育てママは親との強い絆がある一方で、親の助けなしには自分では全てをこなすことができないことに不甲斐なさも感じるようです。そのため、懸命に働いて子供を立派に育て上げたら、今度はちゃんと親の面倒もみなくては・・・・とも考えています。
子育てママの内面にはこんな葛藤もあって、複雑ですね。
女性の社会進出と仕事への向き合い方、価値観
日本では「女性の社会進出!」が未だスローガンのままですが、中国の子育てママ世代の社会進出はとても活発。高等教育を受けていて経済的に自立していたいという独立心が強く、男性側も「女性が結婚後も外で働くのは当たり前!」という考え方が常識です。その一方で、男女平等意識が強く個人主義的な価値観から、地域によって違いはありますが前の世代と比べて離婚率が高いのも特徴だったりします。
仕事に対する価値観は、前の世代が安定志向なのに対して子育てママ世代は挑戦志向。幅広い選択肢から理想の仕事を探しあて、その後も一つの職業にとどまらず給料やスキルを上げようと転職を繰り返す傾向があります。尊敬する人物として、成功するビジネスリーダーを自身の親・祖父母と同様に挙げる人が他の世代よりも多いのも上昇志向が強いからなのでしょう。
外国文化への関心と消費意識
子育てママ世代は、他世代と比べ外国文化への関心が高いことも特徴です。
中国は高度経済成長の90年代を経て2001年にWTOに加盟、その間外資系企業や外国ブランドが次々と中国市場に参入して一気に外国文化が広がりました。その時代とともに成長した子育てママ世代は、海外メディア、外国映画、エンタメコンテンツ、広告などから豊富な情報に触れてきました。
そのために、食べもの、化粧品、スポーツグッズなど日常の消費だけでなく、外国車や欧州高級ブランドなどの高額消費も、海外からの影響を強く受けています。マイホームを持っていることと同じようにステータスシンボルとしての価値を外国ブランドに感じています。
モノ消費だけでなく、教育、娯楽、旅行、健康のためのジム通いといった体験や自己啓発などのコト消費にもお金を使います。インターネット世代のため、オンラインショッピングを積極的に利用し、新しいプロモーションにも敏感。また、一人っ子として育ったためネットで人とつながっていたいという意識も強く、最新型のスマホを手にWeiboやWeChatなどのSNSで活発に交流します。
悩める子育てママの現実
「一人っ子」として成人し、母親であり同時に現役バリバリのキャリアウーマン。大学で学び、社会人としてキャリアを積み厳しい競争を勝ち抜いてきた子育てママたちは成功者と呼べるでしょう。そんな中国の子育てママは自分の子どもに何を望み、どのように育児に向き合っているのでしょうか?
次回は、子育てママの「悩み」の実態に迫ります。お楽しみに!
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